ジーザス・メサ
<中国のAIベンチャーの登場で、つい一週間前にはトランプの2度目の大統領就任式に出て栄華を誇っていたテック業界の大物たちが負け組になる?>
ドナルド・トランプ米大統領の就任式からわずか一週間。米議会議事堂で行われた就任式に得意げに列席していた米テック業界のビリオネア(資産10億ドル超を保有する最富裕層)たちの懐を激震が襲った。
1月27日、中国の小規模な人工知能(AI)新興企業DeepSeek(ディープシーク)の恐るべき競争力が明らかとなり、NVIDIA(エヌビディア)やブロードコム、マイクロソフトをはじめとする米テック関連銘柄の時価総額額が一気に数十億ドルも吹き飛んだのだ。
【AIに聞いた、「DeepSeekはどんな会社?」】
DeepSeek は、中国の AI スタートアップで、2023 年に杭州で設立されました 。同社は、グローバルな AI 開発を目指しており、自然言語処理 (NLP) や画像認識の分野で優れた成果を上げています ChatGPT や Gemini などの有名なモデルに匹敵する性能と使いやすさを持ちながら、利用コストが格安であることから注目されています
27日、米テック関連銘柄は軒並み急落した。ディープシークが、生成AI開発の最前線にいる米企業に追いついただけでなく、米企業と比べて圧倒的な低コストで開発を実現したことに対する懸念が広まったためだ。
米生成AIスタートアップ「アンソロピック」のダリオ・アモデイCEOは2024年、あるポッドキャスト番組の中で、一部のAIモデルについては訓練に最大10億ドルのコストがかかる可能性があることを明かした。
生成AI分野で世界をリードするアメリカの「オープンAI」は大規模言語モデル(LLM)「GPT-4」の開発に約1億ドルを費やしたとされが、ディープシークがLLM開発にかけた費用は600万ドル未満だと報じられた。27日には、米アプリストアでオープンAI のChatGPTを抜いてダウンロード数1位に躍り出た。
AI革命に伴う半導体需要の急増は、エヌビディアやブロードコム、マーベルなどのチップメーカーに強力な追い風となってきた。ディープシークは、この流れを覆したのだ。
今回の株価急落で(少なくとも帳簿上)最大の損失を被ったのは、エヌビディアのジェンスン・フアンCEO、マイクロソフトのサトヤ・ナデラCEOとアルファベットのスンダー・ピチャイCEOだ。
ピチャイは1月20日に行われたトランプの大統領就任式に、テスラおよびXのCEOであるイーロン・マスク、アマゾンのジェフ・ベゾス、メタのマーク・ザッカーバーグらと共に出席していた。同じく就任式に出席していたオープンAIのサム・アルトマンにとっても大打撃だった。
エヌビディアの株価は27日のニューヨーク株式市場の取引終了時点で前週末比17%下落した。時価総額で約6000億ドルの大損というのは、米上場企業が一日に失った金額として史上最大で、スウェーデンのGDPに匹敵する。CEOのフアンの保有株の評価額は推定207億ドル減少した。
AI向け半導体大手ブロードコムの株価も17%以上下落。一方で「安全資産」の債券価格は上昇した。
マイクロソフト株とアルファベット株はそれぞれ2.5%以上下落、ハイテク関連銘柄が多いナスダック総合指数は3.1%安で取引を終えた。専門家は、もしもオープンAIが上場企業だったら、さらに大幅な下落を記録していた可能性があるとみている。
マスクが率いるEVメーカーのテスラは、運転支援機能サービス「フルセルフドライビング(FSD)」とロボタクシー構想を通じてAIに関与しており、株価は2.3%下落した。
マスクは同社の株式の13%を保有しており、27日の株価下落で彼が被った損失額は推定で約12億2000万ドルにのぼる。ちなみに、マスクがツイッター買収に費やした金額は440億ドルだった。
主要なAI関連企業の中で株価が上昇した数少ない企業の一つがメタで、前週末比1.91%上昇した。フェイスブックの親会社であるメタは、ディープシーク同様にAIをオープンソースで提供している。
しかし同社は24日、2025年にAI関連で600億~650億ドルの巨額投資を行う計画を発表したばかりで。コスト面でディープシークに対抗できるかが不安視されている。
アップルとアマゾンも底堅かった。複数のアナリストは、アップルが単体のAIシステム構築よりも自社製品への統合に集中している点が業績を押し上げていると指摘した。この傾向は、アップルの最新製品の発売以降、特に顕著だという。
アマゾンも、株価が約0.25%とわずかながら上昇した。
ディープシークの技術的ブレイクスルーは、AI分野における中国の脅威を一気に高めた。ディープシークが成功すれば、安全保障上の懸念からアメリカ製AI半導体は中国には売らないといくらアメリカが息巻いても意味がなくなってしまう。
米戦略国際問題研究所(CSIS)ワドワニAIセンターのディレクター、グレゴリー・アレンはAP通信にこう語った。「現在、中国が外交政策で最も重視しているのは、アメリカによる輸出制限がいかに無意味でいかに非生産的かを示すことだ」
ベンチャーキャピタリストのマーク・アンドリーセンは26日、ソーシャルメディア「X」への投稿で、「ディープシークR1は、AIにおけるスプートニク的瞬間だ」と記した。スプートニクは1957年、ソ連が打ち上げに成功した世界初の人工衛星だ。完全に出し抜かれたアメリカは大きな衝撃を受け、人類初の月着陸を目ざすアポロ計画はそこから始まる。
アンドリーセンは、テクノロジー政策に関してトランプ大統領に助言している人物だ。アンドリーセンは、AI産業に過剰な規制をかけると、アメリカのイノベーションが阻害され、中国に有利な立場を与えることになると警告した。
次の会計年度においてAI開発に940億ドルを費やす予定のマイクロソフトは、「ディープシーク・ショック」を経てもなお、強気の姿勢を崩していない。同社のサティア・ナデラCEOは、ディープシークの台頭は業界全体にメリットをもたらす可能性があると示唆した。
ナデラはリンクトインに、「またしてもジェボンズのパラドックスが発動した!」と書き込みんだ。これは、技術の進歩により資源利用の効率性が向上すると、かえって資源の需要が増すという理論だ。「AIの効率性が増し、アクセスしやすくなると、採用が爆発的に増加し、AIは必要不可欠な日用品に変貌するだろう」
マイクロソフト、メタ、アマゾン、そしてアルファベットは2025年の1年間に、総額で最大3000億ドルをAIプロジェクトに投下する計画だ。トランプ大統領は21日、オープンAI、オラクル、ソフトバンクによる新たな合弁事業「スターゲート」を発表し、AIインフラに最大5000億ドルの巨額投資を行うとした。
29日のマイクロソフトとメタを皮切りに、今後2週間は、アメリカでも最大手のテック企業が続々と第4四半期の決算を発表する。各社は従来のバリュエーション(企業価値)や投資計画についてだけでなく、ディープシークのような伏兵と競争する能力についても新たに説明を迫られることになる。
(翻訳:ガリレオ他)
<中国のAIベンチャーの登場で、つい一週間前にはトランプの2度目の大統領就任式に出て栄華を誇っていたテック業界の大物たちが負け組になる?>
ドナルド・トランプ米大統領の就任式からわずか一週間。米議会議事堂で行われた就任式に得意げに列席していた米テック業界のビリオネア(資産10億ドル超を保有する最富裕層)たちの懐を激震が襲った。
1月27日、中国の小規模な人工知能(AI)新興企業DeepSeek(ディープシーク)の恐るべき競争力が明らかとなり、NVIDIA(エヌビディア)やブロードコム、マイクロソフトをはじめとする米テック関連銘柄の時価総額額が一気に数十億ドルも吹き飛んだのだ。
【AIに聞いた、「DeepSeekはどんな会社?」】
DeepSeek は、中国の AI スタートアップで、2023 年に杭州で設立されました 。同社は、グローバルな AI 開発を目指しており、自然言語処理 (NLP) や画像認識の分野で優れた成果を上げています ChatGPT や Gemini などの有名なモデルに匹敵する性能と使いやすさを持ちながら、利用コストが格安であることから注目されています
27日、米テック関連銘柄は軒並み急落した。ディープシークが、生成AI開発の最前線にいる米企業に追いついただけでなく、米企業と比べて圧倒的な低コストで開発を実現したことに対する懸念が広まったためだ。
米生成AIスタートアップ「アンソロピック」のダリオ・アモデイCEOは2024年、あるポッドキャスト番組の中で、一部のAIモデルについては訓練に最大10億ドルのコストがかかる可能性があることを明かした。
生成AI分野で世界をリードするアメリカの「オープンAI」は大規模言語モデル(LLM)「GPT-4」の開発に約1億ドルを費やしたとされが、ディープシークがLLM開発にかけた費用は600万ドル未満だと報じられた。27日には、米アプリストアでオープンAI のChatGPTを抜いてダウンロード数1位に躍り出た。
AI革命に伴う半導体需要の急増は、エヌビディアやブロードコム、マーベルなどのチップメーカーに強力な追い風となってきた。ディープシークは、この流れを覆したのだ。
今回の株価急落で(少なくとも帳簿上)最大の損失を被ったのは、エヌビディアのジェンスン・フアンCEO、マイクロソフトのサトヤ・ナデラCEOとアルファベットのスンダー・ピチャイCEOだ。
ピチャイは1月20日に行われたトランプの大統領就任式に、テスラおよびXのCEOであるイーロン・マスク、アマゾンのジェフ・ベゾス、メタのマーク・ザッカーバーグらと共に出席していた。同じく就任式に出席していたオープンAIのサム・アルトマンにとっても大打撃だった。
エヌビディアの株価は27日のニューヨーク株式市場の取引終了時点で前週末比17%下落した。時価総額で約6000億ドルの大損というのは、米上場企業が一日に失った金額として史上最大で、スウェーデンのGDPに匹敵する。CEOのフアンの保有株の評価額は推定207億ドル減少した。
AI向け半導体大手ブロードコムの株価も17%以上下落。一方で「安全資産」の債券価格は上昇した。
マイクロソフト株とアルファベット株はそれぞれ2.5%以上下落、ハイテク関連銘柄が多いナスダック総合指数は3.1%安で取引を終えた。専門家は、もしもオープンAIが上場企業だったら、さらに大幅な下落を記録していた可能性があるとみている。
マスクが率いるEVメーカーのテスラは、運転支援機能サービス「フルセルフドライビング(FSD)」とロボタクシー構想を通じてAIに関与しており、株価は2.3%下落した。
マスクは同社の株式の13%を保有しており、27日の株価下落で彼が被った損失額は推定で約12億2000万ドルにのぼる。ちなみに、マスクがツイッター買収に費やした金額は440億ドルだった。
主要なAI関連企業の中で株価が上昇した数少ない企業の一つがメタで、前週末比1.91%上昇した。フェイスブックの親会社であるメタは、ディープシーク同様にAIをオープンソースで提供している。
しかし同社は24日、2025年にAI関連で600億~650億ドルの巨額投資を行う計画を発表したばかりで。コスト面でディープシークに対抗できるかが不安視されている。
アップルとアマゾンも底堅かった。複数のアナリストは、アップルが単体のAIシステム構築よりも自社製品への統合に集中している点が業績を押し上げていると指摘した。この傾向は、アップルの最新製品の発売以降、特に顕著だという。
アマゾンも、株価が約0.25%とわずかながら上昇した。
ディープシークの技術的ブレイクスルーは、AI分野における中国の脅威を一気に高めた。ディープシークが成功すれば、安全保障上の懸念からアメリカ製AI半導体は中国には売らないといくらアメリカが息巻いても意味がなくなってしまう。
米戦略国際問題研究所(CSIS)ワドワニAIセンターのディレクター、グレゴリー・アレンはAP通信にこう語った。「現在、中国が外交政策で最も重視しているのは、アメリカによる輸出制限がいかに無意味でいかに非生産的かを示すことだ」
ベンチャーキャピタリストのマーク・アンドリーセンは26日、ソーシャルメディア「X」への投稿で、「ディープシークR1は、AIにおけるスプートニク的瞬間だ」と記した。スプートニクは1957年、ソ連が打ち上げに成功した世界初の人工衛星だ。完全に出し抜かれたアメリカは大きな衝撃を受け、人類初の月着陸を目ざすアポロ計画はそこから始まる。
アンドリーセンは、テクノロジー政策に関してトランプ大統領に助言している人物だ。アンドリーセンは、AI産業に過剰な規制をかけると、アメリカのイノベーションが阻害され、中国に有利な立場を与えることになると警告した。
次の会計年度においてAI開発に940億ドルを費やす予定のマイクロソフトは、「ディープシーク・ショック」を経てもなお、強気の姿勢を崩していない。同社のサティア・ナデラCEOは、ディープシークの台頭は業界全体にメリットをもたらす可能性があると示唆した。
ナデラはリンクトインに、「またしてもジェボンズのパラドックスが発動した!」と書き込みんだ。これは、技術の進歩により資源利用の効率性が向上すると、かえって資源の需要が増すという理論だ。「AIの効率性が増し、アクセスしやすくなると、採用が爆発的に増加し、AIは必要不可欠な日用品に変貌するだろう」
マイクロソフト、メタ、アマゾン、そしてアルファベットは2025年の1年間に、総額で最大3000億ドルをAIプロジェクトに投下する計画だ。トランプ大統領は21日、オープンAI、オラクル、ソフトバンクによる新たな合弁事業「スターゲート」を発表し、AIインフラに最大5000億ドルの巨額投資を行うとした。
29日のマイクロソフトとメタを皮切りに、今後2週間は、アメリカでも最大手のテック企業が続々と第4四半期の決算を発表する。各社は従来のバリュエーション(企業価値)や投資計画についてだけでなく、ディープシークのような伏兵と競争する能力についても新たに説明を迫られることになる。
(翻訳:ガリレオ他)