ハティ・ウィルモス
<マイクロプラスチックが原因で脳に血流が到達せずに、脳の健康を損なう仕組みが明らかに>
マイクロプラスチックとは、プラスチック製品が劣化する際にプラスチックの塊から剥がれ落ちる微小なプラスチック粒子を指す。
そのマイクロプラスチックが血流を通して脳を阻害し、脳の機能や行動に影響を与える可能性があることが、最新研究で明らかになった。
環境生物学者の研究チームが、脳血管の写真撮影をとおして行動を観察しながら、若いオスのマウスの脳におけるマイクロプラスチックの影響を実験した。その結果、マイクロプラスチックが原因で脳に血流が到達せずに、血管や脳の健康を損なう仕組みが明らかになった。
マイクロプラスチックは環境汚染物質として広く知られており、その健康リスクについての研究が進められている。マイクロプラスチックを吸い込んだり、食べたり、あるいは接触することで体内に取り込まれる可能性がある。一度体内に入ると、一部のマイクロプラスチックは血流に入り、さまざまな臓器へ移動することがある。
先行研究では、マイクロプラスチックがホルモンと相互作用したり、細胞に侵入してDNAを損傷し、特定のがんのリスクを高める可能性があることが示されている。特に、ナノプラスチックと呼ばれる極めて小さな粒子は危険とされている。
ナノプラスチックは脳疾患や炎症、さらにはがんのリスクと関連していることが判明しているが、ナノプラスチックよりもわずかに大きいマイクロプラスチックが人体にどのような影響を及ぼすかが研究されている段階だ。
今回の研究では、マイクロプラスチック、小型(smaller)マイクロプラスチック、ナノプラスチックという3種類の異なるサイズのプラスチック粒子を、生後8週間のオスのマウスに投与した。投与量は、ヒトがさらされる可能性のあるレベルで設定された。
マウスの体内で何が起きているかを追跡するために各プラスチック粒子に蛍光色が付け、特殊な技術によって脳血管を撮影し、マイクロプラスチックの動きが追跡された。その後、血液サンプルを採取し、マイクロプラスチックが血流中の細胞とどのように相互作用したかを分析した。
また、記憶、運動能力、探索行動、持久力に対する影響を調べるために、マウスの行動実験も行った。
その結果、マイクロプラスチックが(感染や異物と戦う)免疫細胞に吸収されることが判明した。また、免疫細胞のサイズや形状が変化し、細小血管が詰まりやすくなることもわかった。
特に、大きめのマイクロプラスチックが極めて細い血管である毛細血管で詰まり、脳内の血流を長時間にわたって阻害する可能性があることが判明。マイクロプラスチックが投与されてからわずか30分後には、マウスの脳の血流が阻害されることが確認された。
さらに、行動にも変化が見られた。マイクロプラスチックを投与されたマウスの記憶力、運動能力、速度、運動技能、そして持久力が低下することが観察された。これらの問題の多くは、実験の4週間後に改善が見られたが、一部の血管の詰まりは残ったままであった。
この研究結果は、ヒトの脳の健康に対するマイクロプラスチックの潜在的な影響について警鐘を鳴らす可能性がある。たとえば、脳卒中や認知機能の低下のリスクを高める可能性が考えられる。しかし、結論づけるにはさらなる研究が必要だという。
マウスの脳の血管の大きさや構造はヒトとは異なるため、同じ影響がヒトにも及ぶかどうかはまだ明らかではない。特に心臓や血管に疾患を持つ人々に対して、マイクロプラスチックの長期的な健康リスクを詳しく調査する必要があると提言している。
本研究は、1月22日に科学誌「Science Advances」に掲載された。
【参考文献】
Huang, H., Hou, J., Li, M., Wei, F., Liao, Y., Xi, B. (2025). Microplastics in the bloodstream can induce cerebral thrombosis by causing cell obstruction and lead to neurobehavioral abnormalities, Science Advances, 11(4).
<マイクロプラスチックが原因で脳に血流が到達せずに、脳の健康を損なう仕組みが明らかに>
マイクロプラスチックとは、プラスチック製品が劣化する際にプラスチックの塊から剥がれ落ちる微小なプラスチック粒子を指す。
そのマイクロプラスチックが血流を通して脳を阻害し、脳の機能や行動に影響を与える可能性があることが、最新研究で明らかになった。
環境生物学者の研究チームが、脳血管の写真撮影をとおして行動を観察しながら、若いオスのマウスの脳におけるマイクロプラスチックの影響を実験した。その結果、マイクロプラスチックが原因で脳に血流が到達せずに、血管や脳の健康を損なう仕組みが明らかになった。
マイクロプラスチックは環境汚染物質として広く知られており、その健康リスクについての研究が進められている。マイクロプラスチックを吸い込んだり、食べたり、あるいは接触することで体内に取り込まれる可能性がある。一度体内に入ると、一部のマイクロプラスチックは血流に入り、さまざまな臓器へ移動することがある。
先行研究では、マイクロプラスチックがホルモンと相互作用したり、細胞に侵入してDNAを損傷し、特定のがんのリスクを高める可能性があることが示されている。特に、ナノプラスチックと呼ばれる極めて小さな粒子は危険とされている。
ナノプラスチックは脳疾患や炎症、さらにはがんのリスクと関連していることが判明しているが、ナノプラスチックよりもわずかに大きいマイクロプラスチックが人体にどのような影響を及ぼすかが研究されている段階だ。
今回の研究では、マイクロプラスチック、小型(smaller)マイクロプラスチック、ナノプラスチックという3種類の異なるサイズのプラスチック粒子を、生後8週間のオスのマウスに投与した。投与量は、ヒトがさらされる可能性のあるレベルで設定された。
マウスの体内で何が起きているかを追跡するために各プラスチック粒子に蛍光色が付け、特殊な技術によって脳血管を撮影し、マイクロプラスチックの動きが追跡された。その後、血液サンプルを採取し、マイクロプラスチックが血流中の細胞とどのように相互作用したかを分析した。
また、記憶、運動能力、探索行動、持久力に対する影響を調べるために、マウスの行動実験も行った。
その結果、マイクロプラスチックが(感染や異物と戦う)免疫細胞に吸収されることが判明した。また、免疫細胞のサイズや形状が変化し、細小血管が詰まりやすくなることもわかった。
特に、大きめのマイクロプラスチックが極めて細い血管である毛細血管で詰まり、脳内の血流を長時間にわたって阻害する可能性があることが判明。マイクロプラスチックが投与されてからわずか30分後には、マウスの脳の血流が阻害されることが確認された。
さらに、行動にも変化が見られた。マイクロプラスチックを投与されたマウスの記憶力、運動能力、速度、運動技能、そして持久力が低下することが観察された。これらの問題の多くは、実験の4週間後に改善が見られたが、一部の血管の詰まりは残ったままであった。
この研究結果は、ヒトの脳の健康に対するマイクロプラスチックの潜在的な影響について警鐘を鳴らす可能性がある。たとえば、脳卒中や認知機能の低下のリスクを高める可能性が考えられる。しかし、結論づけるにはさらなる研究が必要だという。
マウスの脳の血管の大きさや構造はヒトとは異なるため、同じ影響がヒトにも及ぶかどうかはまだ明らかではない。特に心臓や血管に疾患を持つ人々に対して、マイクロプラスチックの長期的な健康リスクを詳しく調査する必要があると提言している。
本研究は、1月22日に科学誌「Science Advances」に掲載された。
【参考文献】
Huang, H., Hou, J., Li, M., Wei, F., Liao, Y., Xi, B. (2025). Microplastics in the bloodstream can induce cerebral thrombosis by causing cell obstruction and lead to neurobehavioral abnormalities, Science Advances, 11(4).