藤野英人
<2024年、カナダのコンビニ大手がセブン&アイ・ホールディングスに買収を提案し、日本経済界に大きな衝撃が走ったが、海外企業による日本企業の買収はむしろ「プラス」の影響が──>
「トランプ政権による金融規制緩和は、日本経済にも大きな影響を与える」と日本の資産運用会社、レオス・キャピタルワークスの藤野英人氏は語る。
【動画で全編を見る】トランプ政権による今年の日本経済の予測
M&Aや経営統合、業務提携が活発になることで業界内の勢力図が再編成され、市場の起爆剤になり得るというのだ。
レオス・キャピタルワークスのYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」の動画「トランプ政権による今年の日本経済の予測」では、藤野氏と同社経済調査室長の三宅一弘氏が2025年の市場予測を展開している。
株価が純資産に対して低く評価されているか、高く評価されているかを示す指標にPBR(株価純資産倍率)があるが、日本の企業は海外から見れば「割安」であることが多い。つまり、ポテンシャルに対してまだ十分に力を発揮できていないということだ。
言い換えれば、企業体制を変えることで株価が大きく伸びる余地がある。そのため、「これから米国企業投資ファンドを中心とする日本企業の買収が起きる」と藤野氏は予想する。
世界屈指の金融機関、ゴールドマン・サックス・グループの株価が米大統領戦の直後に大きく上昇したように、投資銀行の動きも活発になるという。
資産運用会社レオス・キャピタルワークス 藤野英人氏(「お金のまなびば!」より)
2024年、セブン&アイ・ホールディングスがカナダのコンビニエンスストア大手、アリマンタシォン・クシュタール(Alimentation Couche-Tard)から買収提案を受けたことは日本の経済界に大きな衝撃を与えた。
【関連記事】セブン「買収提案」の意味は重い...日本企業の「バーゲンセール」が始まり、外資の草刈り場になる未来
「セブン&アイ・ホールディングス(※)は日本では大手企業だが、世界から見れば中堅企業。同様のことがこれから頻発すれば、大手を含めた業界再編が起きる可能性がある」と藤野氏は続ける。
日本の上場企業は約4000社。一方、ドイツの上場会社は約400社であり、日本のわずか10分の1だ。ドイツといえば、2023年のGDP(国内総生産)が日本を抜いて世界3位となった国だ。日本とは何が違うのだろうか。三宅一弘氏は次のように指摘する。
「欧米全般にいえることだが、業界の社数が少なくマージンが相対的に高い。そして全体として収益力も高くなる。これは過去10~20年の再編を通じて進んできたことだが、日本では大きく遅れている」
伝統的に、日本企業は事業の売却・合併に消極的で、なかなか再編が進まない傾向がある。
「海外の力も借りながら再編が本格化すれば、日本の株にとって起爆剤になる可能性がある」と三宅氏。特にミクロの面ではプラスの影響が大きいという。
金融規制緩和を日本の「追い風」に
なかでも三宅氏は、「世界の情報技術IT関連」は今年の注目の的になると予想。「一期目のトランプ政権のとき、情報技術を中心とした広義のITは株価も非常に強くなった。今回も、AIや半導体含めた情報技術はイノベーションや金融規制緩和が進む流れの中では中核になっていくだろう」
「鶴の一声」ならぬ「トランプの一声」で株価変動が激しくなると予想される2025年、我々はお金についてどのような心構えをすればよいのだろうか。
藤野氏は「一番やってはいけないのは、株価の変動に対し、焦って売買してしまうこと。実は、こういうときこそ長期分散。予測がしづらいときこそ投資の3原則である『長期・積立・分散』を実践することが長期的なリターンを上げる結果につながる」と助言する。
投資家だけでなく、大手企業やスタートアップの経営者、ビジネスマンにも大きな影響を及ぼしそうなアメリカの金融規制緩和政策。景気循環が追い風となり、飛躍を求める人にとっては「チャンスの一年」となりそうだ。
※個別銘柄を推奨するものではありません。
構成:酒井理恵
●YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」
<2024年、カナダのコンビニ大手がセブン&アイ・ホールディングスに買収を提案し、日本経済界に大きな衝撃が走ったが、海外企業による日本企業の買収はむしろ「プラス」の影響が──>
「トランプ政権による金融規制緩和は、日本経済にも大きな影響を与える」と日本の資産運用会社、レオス・キャピタルワークスの藤野英人氏は語る。
【動画で全編を見る】トランプ政権による今年の日本経済の予測
M&Aや経営統合、業務提携が活発になることで業界内の勢力図が再編成され、市場の起爆剤になり得るというのだ。
レオス・キャピタルワークスのYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」の動画「トランプ政権による今年の日本経済の予測」では、藤野氏と同社経済調査室長の三宅一弘氏が2025年の市場予測を展開している。
株価が純資産に対して低く評価されているか、高く評価されているかを示す指標にPBR(株価純資産倍率)があるが、日本の企業は海外から見れば「割安」であることが多い。つまり、ポテンシャルに対してまだ十分に力を発揮できていないということだ。
言い換えれば、企業体制を変えることで株価が大きく伸びる余地がある。そのため、「これから米国企業投資ファンドを中心とする日本企業の買収が起きる」と藤野氏は予想する。
世界屈指の金融機関、ゴールドマン・サックス・グループの株価が米大統領戦の直後に大きく上昇したように、投資銀行の動きも活発になるという。
資産運用会社レオス・キャピタルワークス 藤野英人氏(「お金のまなびば!」より)
2024年、セブン&アイ・ホールディングスがカナダのコンビニエンスストア大手、アリマンタシォン・クシュタール(Alimentation Couche-Tard)から買収提案を受けたことは日本の経済界に大きな衝撃を与えた。
【関連記事】セブン「買収提案」の意味は重い...日本企業の「バーゲンセール」が始まり、外資の草刈り場になる未来
「セブン&アイ・ホールディングス(※)は日本では大手企業だが、世界から見れば中堅企業。同様のことがこれから頻発すれば、大手を含めた業界再編が起きる可能性がある」と藤野氏は続ける。
日本の上場企業は約4000社。一方、ドイツの上場会社は約400社であり、日本のわずか10分の1だ。ドイツといえば、2023年のGDP(国内総生産)が日本を抜いて世界3位となった国だ。日本とは何が違うのだろうか。三宅一弘氏は次のように指摘する。
「欧米全般にいえることだが、業界の社数が少なくマージンが相対的に高い。そして全体として収益力も高くなる。これは過去10~20年の再編を通じて進んできたことだが、日本では大きく遅れている」
伝統的に、日本企業は事業の売却・合併に消極的で、なかなか再編が進まない傾向がある。
「海外の力も借りながら再編が本格化すれば、日本の株にとって起爆剤になる可能性がある」と三宅氏。特にミクロの面ではプラスの影響が大きいという。
金融規制緩和を日本の「追い風」に
なかでも三宅氏は、「世界の情報技術IT関連」は今年の注目の的になると予想。「一期目のトランプ政権のとき、情報技術を中心とした広義のITは株価も非常に強くなった。今回も、AIや半導体含めた情報技術はイノベーションや金融規制緩和が進む流れの中では中核になっていくだろう」
「鶴の一声」ならぬ「トランプの一声」で株価変動が激しくなると予想される2025年、我々はお金についてどのような心構えをすればよいのだろうか。
藤野氏は「一番やってはいけないのは、株価の変動に対し、焦って売買してしまうこと。実は、こういうときこそ長期分散。予測がしづらいときこそ投資の3原則である『長期・積立・分散』を実践することが長期的なリターンを上げる結果につながる」と助言する。
投資家だけでなく、大手企業やスタートアップの経営者、ビジネスマンにも大きな影響を及ぼしそうなアメリカの金融規制緩和政策。景気循環が追い風となり、飛躍を求める人にとっては「チャンスの一年」となりそうだ。
※個別銘柄を推奨するものではありません。
構成:酒井理恵
●YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」