ブレンダン・コール
<コンゴ東部の悪名高い反政府勢力M23が重要都市ゴマを掌握? 背後でM23を支援していると言われる隣国ルワンダをなぜ止めないのか、首都キンシャサでデモ隊が旧宗主国フランスやアメリカの大使館に怒りをぶつけた>
フランスの旧植民地、コンゴ民主共和国において、米国大使館を含むいくつかの公館が、デモ隊の標的となった。同国東部の主要都市に侵攻した反政府勢力を西側諸国が制御しないことに対する国民の怒りが高まっているのだ。
【動画】コンゴはなぜ世界一豊かな国になっていないのか
ニューヨーク・タイムズ紙が現地報道を引用して伝えたところによると、首都キンシャサにある米国大使館本館の前で、デモ隊がタイヤを燃やしたり石を投げつけたりしたという。
1月28日には、ルワンダ、ウガンダ、フランス、ベルギーの大使館・公館も標的となった。コンゴ東部における反政府勢力「3月23日運動(M23)」の襲撃が激しさを増し、国内の治安も急激に悪化している。
デモ隊の怒りの矛先は、コンゴの同盟諸国に向かっている。コンゴの民兵組織M23が東部の重要都市ゴマへの攻撃を阻止できなかったためだ。国連と米国は、M23を支援しているとして隣国ルワンダを非難している。
ルワンダはM23への支援を否定しているが、安全保障上の理由からコンゴ東部に軍を駐留させ、ミサイルシステムを保有していることは認めている。
西アフリカ研究の専門家である英リーズ・ベケット大学のオラインカ・アジャーラは本誌に対し、コンゴの反政府勢力がこのまま勢いを増せば、コンゴとルワンダの直接対決につながる可能性があり、地域の安定をも脅かしうると語った。
ツチ族が率いる反政府勢力M23は、東部の都市ゴマを掌握したと主張しているが、コンゴ政府はこれを否定している。ゴマは、首都キンシャサから1000マイル(約1600キロ)離れた交易の中心地だ。
複数の援助機関が、ゴマにおける人道危機を警告している。路上には無数の死体が転がり、数十万人が銃撃や砲撃を避けて逃げ回っているという。
キンシャサではデモ隊が、ルワンダに圧力をかけて反政府勢力の進撃を止めさせるよう国際社会に要求した。警察は暴徒化するデモ隊に催涙弾を発射したが、各国大使館の建物は放火され略奪されたと、AP通信は報じた。
米国大使館本館では、タイヤが燃やされ、石が投げつけられた。匿名の米政府関係者は、建設中の新館の敷地にも侵入されたと語った。
ロイター通信の映像には、デモ隊がフランス大使館に押し入り、建物を略奪する様子が映っている。フランスのジャン=ノエル・バロ外相は、この襲撃を非難し、攻撃によって火災が発生したと述べた。バロ外相はのちにX(旧ツイッター)で、施設の火災は収まったと言っている。
ウガンダ大使館とベルギー公館でも略奪と放火の被害に遭った。コンゴで活動する国連の人道支援機関の事務所も襲撃された。
リーズ・ベケット大学のアジャーラは、キンシャサとゴマの間の距離を考えれば、すぐ内乱にはつながることはないとしながらも、攻撃に懸念を示した。
M23の勢力伸長は、コンゴとルワンダの直接衝突につながる可能性がある。コンゴ内外に数百も存在するといわれる民兵組織が、貴重な鉱物資源をめぐってこの漁夫の利を得ようとする可能性も出てくる。
アジャーラは、本誌にこう語った。「この地域は非常に不安定で、何百もの反政府勢力が国境周辺で活動している。ルワンダは、自国の安全保障上の利益を守っていると主張しているが、根底にあるのはこの地域の金鉱床で、すべての国がここに関心を寄せている」
デモ参加者のティモテ・ツィシンビは、AP通信にこう語った。「我々は、国際社会の偽善を糾弾する。彼らはルワンダに、この暴挙を止めさせなければならない」
「大使館に対する攻撃は、コンゴ民主共和国のなかに根深い不満があることを示している。紛争に直接関与しているか、『加担している』勢力に対する不満、そして、ルワンダにM23への支援を止めさせるよう迫っていない西側諸国への不満だ」
ジャーナリストのトーマス・ファン・リングは、Xにこう投稿した。「首都キンシャサは、完全に無政府状態だ」
#DRCongo : the situation in the capital #Kinshasa is completely out of control.Anti-#M23 protesters have started attacking the French, American, Belgian and Ugandan embassies, accusing those countries of being complicit to the violence because of their close ties to #Rwanda pic.twitter.com/m64pPLF1O3— Thomas van Linge (@ThomasVLinge) January 28, 2025
米トランプ政権のマルコ・ルビオ国務長官は1月27日、M23によるゴマ襲撃を非難し、米国はコンゴの主権を尊重すると確認した。
国連安全保障理事会は、28日に緊急会合を開く予定だ。
(翻訳:ガリレオ)
【動画】コンゴはなぜ世界一豊かな国になっていないのか
【動画】恐怖の反政府勢力「M23」の狙いはなにか
<コンゴ東部の悪名高い反政府勢力M23が重要都市ゴマを掌握? 背後でM23を支援していると言われる隣国ルワンダをなぜ止めないのか、首都キンシャサでデモ隊が旧宗主国フランスやアメリカの大使館に怒りをぶつけた>
フランスの旧植民地、コンゴ民主共和国において、米国大使館を含むいくつかの公館が、デモ隊の標的となった。同国東部の主要都市に侵攻した反政府勢力を西側諸国が制御しないことに対する国民の怒りが高まっているのだ。
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ニューヨーク・タイムズ紙が現地報道を引用して伝えたところによると、首都キンシャサにある米国大使館本館の前で、デモ隊がタイヤを燃やしたり石を投げつけたりしたという。
1月28日には、ルワンダ、ウガンダ、フランス、ベルギーの大使館・公館も標的となった。コンゴ東部における反政府勢力「3月23日運動(M23)」の襲撃が激しさを増し、国内の治安も急激に悪化している。
デモ隊の怒りの矛先は、コンゴの同盟諸国に向かっている。コンゴの民兵組織M23が東部の重要都市ゴマへの攻撃を阻止できなかったためだ。国連と米国は、M23を支援しているとして隣国ルワンダを非難している。
ルワンダはM23への支援を否定しているが、安全保障上の理由からコンゴ東部に軍を駐留させ、ミサイルシステムを保有していることは認めている。
西アフリカ研究の専門家である英リーズ・ベケット大学のオラインカ・アジャーラは本誌に対し、コンゴの反政府勢力がこのまま勢いを増せば、コンゴとルワンダの直接対決につながる可能性があり、地域の安定をも脅かしうると語った。
ツチ族が率いる反政府勢力M23は、東部の都市ゴマを掌握したと主張しているが、コンゴ政府はこれを否定している。ゴマは、首都キンシャサから1000マイル(約1600キロ)離れた交易の中心地だ。
複数の援助機関が、ゴマにおける人道危機を警告している。路上には無数の死体が転がり、数十万人が銃撃や砲撃を避けて逃げ回っているという。
キンシャサではデモ隊が、ルワンダに圧力をかけて反政府勢力の進撃を止めさせるよう国際社会に要求した。警察は暴徒化するデモ隊に催涙弾を発射したが、各国大使館の建物は放火され略奪されたと、AP通信は報じた。
米国大使館本館では、タイヤが燃やされ、石が投げつけられた。匿名の米政府関係者は、建設中の新館の敷地にも侵入されたと語った。
ロイター通信の映像には、デモ隊がフランス大使館に押し入り、建物を略奪する様子が映っている。フランスのジャン=ノエル・バロ外相は、この襲撃を非難し、攻撃によって火災が発生したと述べた。バロ外相はのちにX(旧ツイッター)で、施設の火災は収まったと言っている。
ウガンダ大使館とベルギー公館でも略奪と放火の被害に遭った。コンゴで活動する国連の人道支援機関の事務所も襲撃された。
リーズ・ベケット大学のアジャーラは、キンシャサとゴマの間の距離を考えれば、すぐ内乱にはつながることはないとしながらも、攻撃に懸念を示した。
M23の勢力伸長は、コンゴとルワンダの直接衝突につながる可能性がある。コンゴ内外に数百も存在するといわれる民兵組織が、貴重な鉱物資源をめぐってこの漁夫の利を得ようとする可能性も出てくる。
アジャーラは、本誌にこう語った。「この地域は非常に不安定で、何百もの反政府勢力が国境周辺で活動している。ルワンダは、自国の安全保障上の利益を守っていると主張しているが、根底にあるのはこの地域の金鉱床で、すべての国がここに関心を寄せている」
デモ参加者のティモテ・ツィシンビは、AP通信にこう語った。「我々は、国際社会の偽善を糾弾する。彼らはルワンダに、この暴挙を止めさせなければならない」
「大使館に対する攻撃は、コンゴ民主共和国のなかに根深い不満があることを示している。紛争に直接関与しているか、『加担している』勢力に対する不満、そして、ルワンダにM23への支援を止めさせるよう迫っていない西側諸国への不満だ」
ジャーナリストのトーマス・ファン・リングは、Xにこう投稿した。「首都キンシャサは、完全に無政府状態だ」
#DRCongo : the situation in the capital #Kinshasa is completely out of control.Anti-#M23 protesters have started attacking the French, American, Belgian and Ugandan embassies, accusing those countries of being complicit to the violence because of their close ties to #Rwanda pic.twitter.com/m64pPLF1O3— Thomas van Linge (@ThomasVLinge) January 28, 2025
米トランプ政権のマルコ・ルビオ国務長官は1月27日、M23によるゴマ襲撃を非難し、米国はコンゴの主権を尊重すると確認した。
国連安全保障理事会は、28日に緊急会合を開く予定だ。
(翻訳:ガリレオ)
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