ゲイブ・ウィスナント モニカ・セイガー
<航空機墜落事故の責任をめぐり、トランプ大統領がDEI政策を槍玉に挙げたことで、全米で新たな論争が巻き起こっている。トランプ氏がこのタイミングで批判を展開した狙いとは?>
ドナルド・トランプ大統領は木曜日、ワシントンDC近郊で発生した航空機事故について言及し、バラク・オバマ、ジョー・バイデン両政権の対応や、連邦航空局(FAA)および運輸省における多様性、公平性、包括性(DEI)政策を厳しく批判した。
「私はオバマ政権時代の基準を、せいぜい平凡レベルのものから卓越したものへと変えた」とトランプ氏は記者会見で語った。
「航空管制官として資格を得るためには、最高レベルの適性が求められる。最高の知能と心理的適性を持つ者のみが資格を得るべきだ」
事故を起こしたのはアメリカン航空5342便で、乗客60人と乗員4人が搭乗していた。この旅客機は水曜日、空中でアメリカ陸軍のブラックホーク・ヘリコプターと衝突した。これは2009年以来、米国で発生した初の大規模な商業航空機事故となる。
DEIは、1月20日の大統領就任以来、トランプ政権にとって重要な論点となっている。トランプ大統領は就任初日に大統領令を発令し、連邦政府のDEIプログラムを「廃止」する方針を打ち出した。DEIの取り組みは、歴史的に不利な立場に置かれてきた人々を含め、すべての個人が公平に扱われ、完全に参加できるよう促進することを目的としている。しかし、トランプ氏の命令により、多くの政府機関は方針の解釈に苦慮している。
トランプ氏が今回のヘリコプター事故についてDEIの影響を指摘したのは、政権がDEI関連の取り組みや契約、ウェブサイトの撤廃を進めている流れの一環でもある。国防長官のピート・ヘグセス氏も、国防総省(ペンタゴン)内のDEI政策を廃止するための追加の大統領令を準備していると発表している。
ワシントンDC近郊で水曜日の夜に発生した航空機事故を受け、トランプ大統領が初めて記者会見を開いた。事故機はカンザス州ウィチタを離陸し、ロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港への着陸態勢に入っていた際、ヘリコプターと衝突した。ヘリコプターはバージニア州フォート・ベルボアを拠点とする3人の乗員が乗った訓練飛行中だった。
木曜日の時点で、米国当局はこの事故が過去約25年間で最悪の航空惨事となる可能性があるとし、搭乗していた64人全員が死亡したとみられると発表した。
事故は東部時間の水曜日午後9時直前に発生し、現在も救助活動が続いているため、正確な犠牲者数は不明。連邦航空局(FAA)は、「CRJ700型リージョナルジェット機が、レーガン・ワシントン・ナショナル空港の33番滑走路への進入中に、シコルスキーH-60型ヘリコプターと空中衝突した」と発表した。
ヘリコプター操縦士を標的に
事故原因の調査はまだ終了していないが、トランプ大統領は記者会見で「非常に強い意見を持っている」と発言。事故の原因について、操縦士やヘリコプター管制の「能力不足」によるものだと非難した。
「20/20の視力(正常な視力)を持つ人間が、何が起こっているかを見落とすなんて考えられない」とトランプ氏は指摘した。
また、「アメリカン航空のパイロットはすべて正しく対処していた」とし、「なぜかヘリコプターが同じ高度にいて、しかも角度をつけて飛んでいた。本当に信じられないほどひどい」と批判した。
「ヘリコプターはそのまま飛行を続け、少し方向転換したものの、すでに手遅れだった。本来、同じ高度にいるべきではなかった。異なる高度にいれば、上を飛ぶか下をくぐるかのどちらかで回避できたはずだ」と述べた。
トランプ氏は、バイデン政権が定めた航空関連の基準と自らの基準が「完全に正反対」だと強調した。また、この「甚大な悲劇」を受け、FAA(連邦航空局)の新たな長官代行としてクリス・ロシュロー氏を任命。ロシュロー氏は航空業界団体のトップ幹部だった。
さらに、トランプ氏は今回の事故の数日前に、TSA(運輸保安庁)の長官を解任し、航空保安諮問委員会を廃止。その理由について、「国土安全保障省(DHS)の活動が国家安全保障を最優先するよう、リソースの誤用を排除するため」と説明した。
「一つの国として、突然命を奪われた尊い魂を悼む」とトランプ氏は述べ、「本当に私たちは喪に服している。この事故は多くの人々に衝撃を与えている」と語った。
トランプ氏の主張に反発の声
米上院議員のゲイリー・ピーターズ氏は、MSNBCの番組「モーニング・ジョー」でトランプ大統領の発言を「無責任」だと非難した。
「率直に言って、何が起こったのかについて憶測を流すのは極めて無責任だと思う」とピーターズ氏は述べた。「まずは事実を明らかにすべきだ。事実は比較的早く判明するだろうし、徹底的な調査が必要だが、それには時間がかかる。我々はそのプロセスを尊重しなければならない」
ミシガン州選出の民主党議員であるピーターズ氏は、国家運輸安全委員会(NTSB)は高度な専門性を持つ組織であると強調した。
「事実に基づいて判断しなければならない。陰謀論や憶測で人々の恐怖や不安を煽るべきではない」と述べた。
バイデン政権で運輸長官を務めたピート・ブティジェッジ氏は、トランプ氏の記者会見を受けてXに投稿し、トランプ氏の主張を「卑劣」だと批判した。
「遺族が悲しみに暮れる中、トランプ氏はリーダーシップを発揮するどころか、嘘をついている」とブティジェッジ氏は投稿した。
「我々は安全を最優先し、ニアミスを減らし、航空管制を強化し、バイデン政権下では数百万回のフライトで商業航空機の墜落による死者ゼロを達成した」
「トランプ大統領は現在、軍とFAAを管轄している。彼の最初の行動の一つは、航空の安全を維持してきた主要な幹部を解任し、職務停止にすることだった。今こそ、大統領として真のリーダーシップを示し、今後同様の事故を防ぐために何をするのか説明すべきだ」
カナダの市民団体デモクラシー・ウォッチ・カナダはXに次のように投稿した。
「トランプがピート・ブティジェッジの責任を追及し、DEIや『白人が多すぎる』施策についてデタラメを語っている。さらに、ヘリコプターと飛行機が同じ高度にいたことを認めた。もし航空管制官が黒人や茶色の肌の人間だったり、車椅子を使っていたら、トランプの言い分はどうなるのか? 狂気の沙汰だ」
ニューヨーク州選出の民主党上院議員であるチャック・シューマー院内総務も、声明を発表しトランプ氏を非難した。
「ネット上の評論家が陰謀論を垂れ流すのとは訳が違う。米国大統領が、遺体の収容や遺族への通知が続く最中に憶測を述べることは、到底許されるものではない。本当に胸が痛む」
「今は、犠牲者の家族や愛する人々のために祈りを捧げるべき時だ。そして、勇敢な救助隊員たちの安全も祈っている」
マサチューセッツ州選出の民主党下院議員アヤンナ・プレスリー氏は、木曜日にGBHニュースの「ボストン・パブリック・ラジオ」に出演中、トランプ氏がDEIが航空機事故の原因になった可能性があると発言したことを知った。彼女はこれについて、「恥ずべきで、嘆かわしく、吐き気がする発言だが、驚くことではない」とコメント。「彼らは何にでもDEIのせいにする」
「二度と起こらないように」
「こういう悲劇の時、トランプは遺族を癒し、国民に安心感を与えるべき存在であるはずだ。しかし、彼がやることはこれだ」とプレスリー氏は批判。「また同じことの繰り返し... 我々は彼の言動に対抗しなければならない」と語った。
救助隊は現在もポトマック川の墜落現場周辺で作業を続けている。トランプ氏は、引き続き徹底的な調査が行われると述べた。
「このようなことが二度と起こらないようにする」とトランプ氏は語った。
<航空機墜落事故の責任をめぐり、トランプ大統領がDEI政策を槍玉に挙げたことで、全米で新たな論争が巻き起こっている。トランプ氏がこのタイミングで批判を展開した狙いとは?>
ドナルド・トランプ大統領は木曜日、ワシントンDC近郊で発生した航空機事故について言及し、バラク・オバマ、ジョー・バイデン両政権の対応や、連邦航空局(FAA)および運輸省における多様性、公平性、包括性(DEI)政策を厳しく批判した。
「私はオバマ政権時代の基準を、せいぜい平凡レベルのものから卓越したものへと変えた」とトランプ氏は記者会見で語った。
「航空管制官として資格を得るためには、最高レベルの適性が求められる。最高の知能と心理的適性を持つ者のみが資格を得るべきだ」
事故を起こしたのはアメリカン航空5342便で、乗客60人と乗員4人が搭乗していた。この旅客機は水曜日、空中でアメリカ陸軍のブラックホーク・ヘリコプターと衝突した。これは2009年以来、米国で発生した初の大規模な商業航空機事故となる。
DEIは、1月20日の大統領就任以来、トランプ政権にとって重要な論点となっている。トランプ大統領は就任初日に大統領令を発令し、連邦政府のDEIプログラムを「廃止」する方針を打ち出した。DEIの取り組みは、歴史的に不利な立場に置かれてきた人々を含め、すべての個人が公平に扱われ、完全に参加できるよう促進することを目的としている。しかし、トランプ氏の命令により、多くの政府機関は方針の解釈に苦慮している。
トランプ氏が今回のヘリコプター事故についてDEIの影響を指摘したのは、政権がDEI関連の取り組みや契約、ウェブサイトの撤廃を進めている流れの一環でもある。国防長官のピート・ヘグセス氏も、国防総省(ペンタゴン)内のDEI政策を廃止するための追加の大統領令を準備していると発表している。
ワシントンDC近郊で水曜日の夜に発生した航空機事故を受け、トランプ大統領が初めて記者会見を開いた。事故機はカンザス州ウィチタを離陸し、ロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港への着陸態勢に入っていた際、ヘリコプターと衝突した。ヘリコプターはバージニア州フォート・ベルボアを拠点とする3人の乗員が乗った訓練飛行中だった。
木曜日の時点で、米国当局はこの事故が過去約25年間で最悪の航空惨事となる可能性があるとし、搭乗していた64人全員が死亡したとみられると発表した。
事故は東部時間の水曜日午後9時直前に発生し、現在も救助活動が続いているため、正確な犠牲者数は不明。連邦航空局(FAA)は、「CRJ700型リージョナルジェット機が、レーガン・ワシントン・ナショナル空港の33番滑走路への進入中に、シコルスキーH-60型ヘリコプターと空中衝突した」と発表した。
ヘリコプター操縦士を標的に
事故原因の調査はまだ終了していないが、トランプ大統領は記者会見で「非常に強い意見を持っている」と発言。事故の原因について、操縦士やヘリコプター管制の「能力不足」によるものだと非難した。
「20/20の視力(正常な視力)を持つ人間が、何が起こっているかを見落とすなんて考えられない」とトランプ氏は指摘した。
また、「アメリカン航空のパイロットはすべて正しく対処していた」とし、「なぜかヘリコプターが同じ高度にいて、しかも角度をつけて飛んでいた。本当に信じられないほどひどい」と批判した。
「ヘリコプターはそのまま飛行を続け、少し方向転換したものの、すでに手遅れだった。本来、同じ高度にいるべきではなかった。異なる高度にいれば、上を飛ぶか下をくぐるかのどちらかで回避できたはずだ」と述べた。
トランプ氏は、バイデン政権が定めた航空関連の基準と自らの基準が「完全に正反対」だと強調した。また、この「甚大な悲劇」を受け、FAA(連邦航空局)の新たな長官代行としてクリス・ロシュロー氏を任命。ロシュロー氏は航空業界団体のトップ幹部だった。
さらに、トランプ氏は今回の事故の数日前に、TSA(運輸保安庁)の長官を解任し、航空保安諮問委員会を廃止。その理由について、「国土安全保障省(DHS)の活動が国家安全保障を最優先するよう、リソースの誤用を排除するため」と説明した。
「一つの国として、突然命を奪われた尊い魂を悼む」とトランプ氏は述べ、「本当に私たちは喪に服している。この事故は多くの人々に衝撃を与えている」と語った。
トランプ氏の主張に反発の声
米上院議員のゲイリー・ピーターズ氏は、MSNBCの番組「モーニング・ジョー」でトランプ大統領の発言を「無責任」だと非難した。
「率直に言って、何が起こったのかについて憶測を流すのは極めて無責任だと思う」とピーターズ氏は述べた。「まずは事実を明らかにすべきだ。事実は比較的早く判明するだろうし、徹底的な調査が必要だが、それには時間がかかる。我々はそのプロセスを尊重しなければならない」
ミシガン州選出の民主党議員であるピーターズ氏は、国家運輸安全委員会(NTSB)は高度な専門性を持つ組織であると強調した。
「事実に基づいて判断しなければならない。陰謀論や憶測で人々の恐怖や不安を煽るべきではない」と述べた。
バイデン政権で運輸長官を務めたピート・ブティジェッジ氏は、トランプ氏の記者会見を受けてXに投稿し、トランプ氏の主張を「卑劣」だと批判した。
「遺族が悲しみに暮れる中、トランプ氏はリーダーシップを発揮するどころか、嘘をついている」とブティジェッジ氏は投稿した。
「我々は安全を最優先し、ニアミスを減らし、航空管制を強化し、バイデン政権下では数百万回のフライトで商業航空機の墜落による死者ゼロを達成した」
「トランプ大統領は現在、軍とFAAを管轄している。彼の最初の行動の一つは、航空の安全を維持してきた主要な幹部を解任し、職務停止にすることだった。今こそ、大統領として真のリーダーシップを示し、今後同様の事故を防ぐために何をするのか説明すべきだ」
カナダの市民団体デモクラシー・ウォッチ・カナダはXに次のように投稿した。
「トランプがピート・ブティジェッジの責任を追及し、DEIや『白人が多すぎる』施策についてデタラメを語っている。さらに、ヘリコプターと飛行機が同じ高度にいたことを認めた。もし航空管制官が黒人や茶色の肌の人間だったり、車椅子を使っていたら、トランプの言い分はどうなるのか? 狂気の沙汰だ」
ニューヨーク州選出の民主党上院議員であるチャック・シューマー院内総務も、声明を発表しトランプ氏を非難した。
「ネット上の評論家が陰謀論を垂れ流すのとは訳が違う。米国大統領が、遺体の収容や遺族への通知が続く最中に憶測を述べることは、到底許されるものではない。本当に胸が痛む」
「今は、犠牲者の家族や愛する人々のために祈りを捧げるべき時だ。そして、勇敢な救助隊員たちの安全も祈っている」
マサチューセッツ州選出の民主党下院議員アヤンナ・プレスリー氏は、木曜日にGBHニュースの「ボストン・パブリック・ラジオ」に出演中、トランプ氏がDEIが航空機事故の原因になった可能性があると発言したことを知った。彼女はこれについて、「恥ずべきで、嘆かわしく、吐き気がする発言だが、驚くことではない」とコメント。「彼らは何にでもDEIのせいにする」
「二度と起こらないように」
「こういう悲劇の時、トランプは遺族を癒し、国民に安心感を与えるべき存在であるはずだ。しかし、彼がやることはこれだ」とプレスリー氏は批判。「また同じことの繰り返し... 我々は彼の言動に対抗しなければならない」と語った。
救助隊は現在もポトマック川の墜落現場周辺で作業を続けている。トランプ氏は、引き続き徹底的な調査が行われると述べた。
「このようなことが二度と起こらないようにする」とトランプ氏は語った。