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【USAID】トランプ=マスクが援助を凍結した国々のリベンジは必至、中国と

ニューズウィーク日本版 2025年2月4日 22時4分

カレダ・ラーマン
<米国際開発庁(USAID)から特に多くの援助を受けてきた国々を示した。将来の筆頭反米諸国だ>

USAIDが2023会計年度に支出した金額は、720億ドル(約11.2兆円)に上る。同年の最大の支援先はウクライナで、160億ドル(約2兆5000億円)を超えている。

ドナルド・トランプ米大統領の助言役を務めるイーロン・マスクは2月3日午前、トランプがUSAIDの閉鎖に同意したと述べた。



地図は、USAIDを監督する米対外支援局が発表したデータを基に作成されたもので、2023年度にUSAIDが特に多額の支援を行なった国々を示している。各国への支援額の大きさを比較しやすくするため、ウクライナは除外されている。

米国は、世界最大の突出した人道支援の提供国だ。USAIDは100カ国以上に対し、総額で数百億ドル単位の人道支援、開発援助、安全保障援助を行なっている。

海外支援の連邦政府予算に占める比率は1%弱で、一部の国に比べると少ないにもかかわらずだ。

だがUSAIDは、連邦政府の「ムダ」削減を看板政策にするトランプ政権の最初の餌食になろうとしている。トランプの個人的なリストラ顧問である大富豪のイーロン・マスクもUSAIDを閉鎖する意向だ。

民主党議員らは、議会が予算を決めている連邦政府機関を、大統領令で廃止することはできないと反発するのだが。



トランプは、2期目の就任初日となる1月20日、前例のない「対外支援・開発援助の90日間凍結」を命じ、これによりUSAIDの多くの事業が停止されている。トランプは、自らの「米国第一主義」の外交政策に沿って予算が配分されるよう、支出を見直すという。

マルコ・ルビオ米国務長官は1月30日、米国を「より安全で、より強く、より繁栄した国」にするうえで、どの事業が適切であるか判断するための見直しを進めると述べた。



ルビオは凍結措置について、人道支援や開発援助、安全保障援助の受け手である国々からアメリカが今より「はるかに多くの協力」を得る目的がある、と述べた。

一方マスクは2月3日、USAIDは「修復不可能な状態」にあり、同機関を閉鎖するという自身の考えにトランプも「同意した」と発言。「彼には何度か『本当にいいのか?』と確認した。だから、閉鎖するのは間違いない」

USAIDは対外援助や開発支援を担う米政府傘下の独立機関。冷戦の真っただ中にあった1961年に旧ソ連の影響力に対抗するため、当時のジョン・F・ケネディ米大統領が設立した組織だ。

USAIDのプログラムは保健衛生の向上、貧困の軽減、自然災害や紛争への対応としての緊急支援の提供、教育や民主的制度の強化に重点を置いており、対外援助法に基づき米連邦議会の承認を得て運営されている。

USAIDはミッションステートメント(綱領)の中で「われわれは米国民を代表し、海外で民主的価値観を推進・実証し、自由で平和でかつ繁栄した世界の実現を目指す」と述べ、さらにこう続ける。



「USAIDはアメリカの外交政策を支援すべく、生命を救い、貧困を削減し、民主的統治を強化し、人道危機からの復興を支援し、援助を超えた発展を促進するためのパートナーシップと投資を通じて、米国政府の国際開発および災害援助を主導している」

トランプは2月2日に記者団に対して、「USAIDは過激な左翼の愚か者の集団が運営している。彼らを排除し、その後どうするか判断する」と述べていた。

米政府効率化省のトップを務めるマスクは3日にX(旧ツイッター)の音声対話サービス「スペース」で、USAIDの業務は「政治的にひどく偏って」おり「もはや修復不可能」だと述べた。

米上院外交委員会の民主党議員らは2日、ルビオに宛てた書簡の中で、トランプには米議会の資金提供を受けた独立機関を排除する法的権限はないと次のように述べた。

「米議会はUSAIDを米国務省とは別個の独立機関として設立した。特に危機の際、開発に関する助言や知識および対外援助を迅速に展開し、われわれの国家安全保障上の目標を達成できるようにすることがその目的だ。したがってUSAIDを国務省に統合または吸収するいかなる試みも事前に議会で審議・承認されるべきであり、法律でもそうすることが義務づけられている」



民主党のクリス・マーフィー上院議員は2日にXに投稿を行い、次のように書いた。

「この決定はすぐに壊滅的な結果をもたらす。アメリカの援助に依存している栄養不良の乳児たちは命を落とすことになる。

テロ対策の各種プログラムが停止し、われわれの最も危険な敵対勢力はますます強くなるだろう。

アメリカを脅かす感染症がその威力を保ったまま、これまで以上に迅速にアメリカにアメリカに到達するだろう。そして中国がその空白を埋めることになる」

その結果は火を見るより明らかだ、とマーフィーは続ける。

「開発途上国が支援を頼れる相手が中国だけになれば、彼らはこれまで以上に、港湾や重要な鉱物資源の支配権を中国に与える取引を結ぶようになる。その結果アメリカの影響力は縮小し、アメリカの雇用が失われることになる」



ロイター通信は米上院民主党の上級補佐官2人から得た情報として、議員やスタッフが2日に会合を開き、3日にも再度集まって法的措置を含む次の対応を検討する予定だと報じた。

トランプがアメリカの対外援助を全面的に凍結したことを受け、USAIDでは職員が自宅待機や解雇処分を受けたりプログラムが停止されており、1日にはウェブサイトが停止した。



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