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極めて珍しい「黒いオオカミ」をカメラが捉える...ポーランドで発見

ニューズウィーク日本版 2025年2月10日 14時10分

マンディ・タヘリ
<静寂に包まれたポーランドの森。その中を黒い影がゆっくりと進む──極めて珍しい黒いオオカミ2頭が、小川を渡る姿がカメラに捉えられた。欧州ではほとんど見られないこの貴重な映像が公開され、関心を集めている>

ポーランドの森に設置されたカメラで、珍しい黒いオオカミ2頭が小川を歩いて渡る様子がとらえられた。ポーランドの野生動物保護ファンド「SAVE」が公開したこの動画は、昨年の夏に撮影されたものだ。

本誌は2月9日午後(米国時間)、オオカミの生態に詳しい専門家数人と、ポーランド共和国の気候環境省に対して、メールでコメントを求めた。

ポーランドで黒い被毛のオオカミが目撃されることは滅多にない。2頭の姿をとらえた動画となれば、なおさら貴重だ。

SAVEが2月4日にフェイスブックで公開したこの動画は、森の中に設置されていたカメラで撮影された2つの映像を編集したものだ。1本目には、黒いオオカミ1頭がゆっくりと小川を歩いて渡り、ジャンプして川岸に飛び乗ったあと、灰色のオオカミがあとに続く姿が映っている。2本目には、同じ小川を、黒いオオカミ2頭が渡る様子が映っている。

Two extremely rare black wolves have been caught on camera in Poland.The animals - which are grey wolves with a genetic mutation changing the colour of their fur - are relatively common in North America but little seen in Europe pic.twitter.com/AUJHJomYNz— Notes from Poland (@notesfrompoland) February 9, 2025

被毛が黒いのは遺伝子変異によるもので、欧州ではかなり珍しい。欧州に生息する一般的なオオカミは被毛が灰色だ。SAVEのオオカミプロジェクト・コーディネーターを務めるジョアンナ・トチドロウスカ氏は2月9日、本誌へのメールの中で、「黒い被毛のオオカミはほとんど存在しないと言っていい」と述べた。

トチドロウスカによれば、「黒いオオカミと灰色のオオカミは同じ種」であり、色が異なるのは遺伝子変異だという。

これに対して、北米では黒いオオカミはさほど珍しくなく、イエローストーン国立公園に生息しているオオカミのおよそ半数は被毛が黒い。同公園の公式サイトには、「黒い被毛のオオカミは、たった1つの遺伝子が原因で出現する。黒い個体はすべて、その黒い被毛に関連した変異体をもっている。この突然変異は、家畜犬との交雑に起因するものだと考えられている」という説明がある。またこのサイトによると、家畜犬との交雑は、ここ7000年のあいだに起きた可能性が高いという。

イエローストーン国立公園に生息する黒いオオカミに関する複数の研究では、遺伝子変異による黒い被毛のオオカミと、「ジステンパー流行時の生存率の高さ」には関連性があることが示されている。また、縄張り争いをするとき、黒いオオカミは、灰色のオオカミほど攻撃的ではないこともわかっている。

トチドロウスカ氏は本誌に対し、ポーランドのカメラでとらえられた黒い被毛のオオカミ2頭は「同じ家族に属しており、きょうだいの可能性がある」という考えを述べた。また、「オオカミは通常、両親、ならびに2、3年以内に生まれた子オオカミという家族で群れを形成する」と説明した。カメラに映っていたオオカミは見たところ、体重がおよそ66ポンド(およそ30キログラム)で、年齢は1歳半ほど、少なくとも1頭はオスだという。

ポーランドでは、オオカミが絶滅の危機に瀕しており、1998年に保護種に指定された。その結果、個体数が大幅に増加。AP通信によると、国内には現在、2500頭から3000頭が生息している。その大多数は、灰色に少量の赤や黒が入り混じった被毛をもつ。

オオカミは、食物連鎖の頂点に君臨する捕食動物だ。獲物となる動物の個体数を制御し、生態系全体に大きな影響をもたらしている。

SAVEは、今回の目撃を喜ぶフェイスブック投稿の中で、今後は、カメラが設置されていた森林の周辺でオオカミの糞を採集し、黒い被毛をもつオオカミの遺伝的性質について、さらに解明を進めたいと述べている。

オオカミの安全を考慮し、具体的な目撃地点は明かされていない。

(翻訳:ガリレオ)

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