マシュー・トステビン
<トランプの対外支援凍結は「中国が世界中で選ばれるパートナーになる道を開いた」──支援停止の数日後にすぐさまカンボジアに働きかけた中国の作戦>
米国際開発庁(USAID)による支援先への支払い凍結で、カンボジアの地雷・不発弾除去プロジェクトが作業の中断を余儀なくされたことを発表した。だが、その数日後に中国が資金を提供したことを同プロジェクトの代表が明らかにしている。
米国務省も在カンボジア中国大使館もコメントの要請には応じていない。
ドナルド・トランプ大統領は、USAIDを通じた対外援助を90日間停止するという決定を下したが、これに対しては、中国が世界中に影響力を拡大する道を開くことになると批判の声があがっていた。
東南アジアに位置するカンボジアは、すでに中国の最も親密な同盟国のひとつであり、近年は人権侵害や民主主義の欠如を批判するアメリカとぎくしゃくした関係にあった。
USAIDが支援先への支払いを凍結したため、カンボジア地雷対策センター(CMAC)の運営が一時的に停止されたことが発表された数日後の2月5日、ヘン・ラタナ(Heng Ratana)事務局長はフェイスブックで、2025年3月1日から1年間、中国からカンボジア地雷廃絶プロジェクトに440万ドルの助成金が提供されることを明かした。
中国からカンボジア地雷廃絶プロジェクトに助成金が提供されることを発表したヘン・ラタナ事務局長のフェイスブック投稿
「12カ月にわたるこのプロジェクトは、400人以上のCMACの技術専門家をサポートすることになる」とラタナはいう。作業はカンボジア(人口1700万人)の7つの州で実施されるという。
カンボジアは1970年代の戦争で壊滅的な被害を受けた。ベトナム戦争から波及したアメリカの空爆と、中国の後ろ盾で権力を掌握し、大量虐殺を行ったポル・ポト派(クメール・ルージュ)の支配によるものだ。
現在も数百万個の地雷が国中の地中に残っている。
地雷反対キャンペーンを展開し、地雷除去に取り組むイギリスのNGOヘーロー・トラストによれば、1979年のポル・ポト政権崩壊以来、1万8800人以上が地雷によって死亡し、さらに4万5000人が負傷したという。
在カンボジア米大使館は昨年、2025年にカンボジアで地雷除去やその他の不発弾除去に1200万ドルを費やす見込みだと述べていた。
USAIDに何が起きたのか
カンボジア政府は7日の声明で、地雷除去活動を支援するアメリカの資金は、USAIDから直接ではなく、米国務省の武器撤去・削減局から提供されたものだと述べた。
プノンペンポスト紙によると「地雷とクラスター爆弾の除去は、その他の爆発性戦争残存物の除去とともに、カンボジア政府とアメリカ以外の援助国からの財政支援によって継続される」という。
USAIDは何百億ドルもの対外人道援助を提供してきた。トランプ政権はUSAIDを国務省に統合する計画を進めており、数千人の職員が職を失うことになる。この変化は、イーロン・マスクが新たに設立した政府効率化省(DOGE)のもとで起きている。
サマンサ・パワー(Samantha Power)元USAID長官は「アメリカの地位と世界の安全保障を低下させ、中国が世界中で選ばれるパートナーになる道を開いたのは、中国自身の行動ではなかったことに後世の人々は驚嘆するだろう」と、ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した論説で述べた。
対して、トランプ大統領は2月2日、記者団に「USAIDは過激な狂人たちによって運営されている。連中を追い出すつもりだ。そのうえで決定を下す」と語った。
カンボジア王立アカデミーの政策アナリスト セウン・サム(Seun Sam)は、カンボジアのニュースサイト「キリポスト」の記事で「中国が支援しなければ、CMACはカンボジアで地雷除去を続けるための十分な資金を確保できない。だから中国からの支援は進行中の地雷除去の取り組みにとって特に重要だ」と述べている。
これからどうなる?
USAIDは改めてどのプロジェクトを支援するかを決定していくが、アメリカが援助資金を削減したところに中国が首を突っ込むチャンスを見出す可能性はある。とはいえ、それはアメリカの支援復活を妨げるものではない。
<トランプの対外支援凍結は「中国が世界中で選ばれるパートナーになる道を開いた」──支援停止の数日後にすぐさまカンボジアに働きかけた中国の作戦>
米国際開発庁(USAID)による支援先への支払い凍結で、カンボジアの地雷・不発弾除去プロジェクトが作業の中断を余儀なくされたことを発表した。だが、その数日後に中国が資金を提供したことを同プロジェクトの代表が明らかにしている。
米国務省も在カンボジア中国大使館もコメントの要請には応じていない。
ドナルド・トランプ大統領は、USAIDを通じた対外援助を90日間停止するという決定を下したが、これに対しては、中国が世界中に影響力を拡大する道を開くことになると批判の声があがっていた。
東南アジアに位置するカンボジアは、すでに中国の最も親密な同盟国のひとつであり、近年は人権侵害や民主主義の欠如を批判するアメリカとぎくしゃくした関係にあった。
USAIDが支援先への支払いを凍結したため、カンボジア地雷対策センター(CMAC)の運営が一時的に停止されたことが発表された数日後の2月5日、ヘン・ラタナ(Heng Ratana)事務局長はフェイスブックで、2025年3月1日から1年間、中国からカンボジア地雷廃絶プロジェクトに440万ドルの助成金が提供されることを明かした。
中国からカンボジア地雷廃絶プロジェクトに助成金が提供されることを発表したヘン・ラタナ事務局長のフェイスブック投稿
「12カ月にわたるこのプロジェクトは、400人以上のCMACの技術専門家をサポートすることになる」とラタナはいう。作業はカンボジア(人口1700万人)の7つの州で実施されるという。
カンボジアは1970年代の戦争で壊滅的な被害を受けた。ベトナム戦争から波及したアメリカの空爆と、中国の後ろ盾で権力を掌握し、大量虐殺を行ったポル・ポト派(クメール・ルージュ)の支配によるものだ。
現在も数百万個の地雷が国中の地中に残っている。
地雷反対キャンペーンを展開し、地雷除去に取り組むイギリスのNGOヘーロー・トラストによれば、1979年のポル・ポト政権崩壊以来、1万8800人以上が地雷によって死亡し、さらに4万5000人が負傷したという。
在カンボジア米大使館は昨年、2025年にカンボジアで地雷除去やその他の不発弾除去に1200万ドルを費やす見込みだと述べていた。
USAIDに何が起きたのか
カンボジア政府は7日の声明で、地雷除去活動を支援するアメリカの資金は、USAIDから直接ではなく、米国務省の武器撤去・削減局から提供されたものだと述べた。
プノンペンポスト紙によると「地雷とクラスター爆弾の除去は、その他の爆発性戦争残存物の除去とともに、カンボジア政府とアメリカ以外の援助国からの財政支援によって継続される」という。
USAIDは何百億ドルもの対外人道援助を提供してきた。トランプ政権はUSAIDを国務省に統合する計画を進めており、数千人の職員が職を失うことになる。この変化は、イーロン・マスクが新たに設立した政府効率化省(DOGE)のもとで起きている。
サマンサ・パワー(Samantha Power)元USAID長官は「アメリカの地位と世界の安全保障を低下させ、中国が世界中で選ばれるパートナーになる道を開いたのは、中国自身の行動ではなかったことに後世の人々は驚嘆するだろう」と、ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した論説で述べた。
対して、トランプ大統領は2月2日、記者団に「USAIDは過激な狂人たちによって運営されている。連中を追い出すつもりだ。そのうえで決定を下す」と語った。
カンボジア王立アカデミーの政策アナリスト セウン・サム(Seun Sam)は、カンボジアのニュースサイト「キリポスト」の記事で「中国が支援しなければ、CMACはカンボジアで地雷除去を続けるための十分な資金を確保できない。だから中国からの支援は進行中の地雷除去の取り組みにとって特に重要だ」と述べている。
これからどうなる?
USAIDは改めてどのプロジェクトを支援するかを決定していくが、アメリカが援助資金を削減したところに中国が首を突っ込むチャンスを見出す可能性はある。とはいえ、それはアメリカの支援復活を妨げるものではない。