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これぞトランプ印の「黄金」時代! 原因が原因だけに価格上昇はまだ続く?

ニューズウィーク日本版 2025年2月12日 16時15分

ヒュー・キャメロン
<トランプ政権の関税措置の発表を受けて金価格が急騰、連続で史上最高値を更新中。トランプの政策が世界経済に与える大混乱を懸念して、資金が安定資産の金市場に流れ込んでいる>

金価格は長期にわたって上昇を続けているが、最近はとくにめざましい急騰ぶりを見せている。1月11日にも史上最高値を更新した。専門家のなかには、こうした動きを、トランプ政権の経済政策に起因するとみる向きもある。

金価格は11日に1トロイオンスあたり2968.5ドル(日本では1グラムあたり約1万5000円超、2月12日、田中貴金属調べ)まで上昇し、3000ドルに迫る勢いで推移している。

 

週初からの金価格の急騰は、ドナルド・トランプ大統領がアメリカへのすべての鉄鋼とアルミニウムの輸入品に25%の関税を課すという新たな関税政策を発表した後に始まった。

こうした攻撃的な関税政策が、トランプの他の通商政策と相まって、米ドルに下落圧力をかけるのではないかという懸念から、多くの人々が金に目を向けていると、専門家は推測している。金に期待が集まるのは、安全資産として、また通貨インフレに対するヘッジ手段として、歴史的な実績があるからだ。

金相場は昨年11月の大統領選挙におけるトランプの勝利と、それに続く大統領就任の前からかなりの上昇を見せていた。過去1年間で約43%、過去3カ月で13%上昇した。

大統領選以前の金価格の主な上昇要因は、経済の不確実性、地政学的な緊張、世界の中央銀行からの需要の高まりといった不安要素だった。

それに加えて、トランプがいま貿易戦争を誘発しかねない関税政策を取り始めたことで、金の記録的な上昇がさらに加速した。これまでの予測は完全に覆され、年末には1オンスあたり3000ドルの節目に近づくか、それを超えると予想されている。

「価格上昇の短期的な推進力は3つ。トランプ、トランプ、トランプだ」と、オンライン貴金属投資サービス、ブリオンボールトでリサーチ・ディレクターを務めるエイドリアン・アッシュは語る。

 

「関税リスク」とそれが世界貿易と地政学に及ぼす影響が「金市場を怯えさせ、アメリカに殺到させた」と彼は言う。

この傾向は金に限ったことではない。2024年12月のアメリカの貿易赤字額が984億ドルと、ほぼ3年ぶりの高水準となった。これは「誰もがアメリカへのモノの輸出を急いでいる」証拠だという。

金価格は歴史的に他の資産のパフォーマンスが悪いときに上昇するものだ。だが現在は、株式市場が活況を呈すると同時に、金が史上最高値を更新している。この一見矛盾した状況は、「多くの資金が落着き先を探しており、株式市場の周辺にもまだ多くの不安要素がある」ことを示している、とアッシュは述べた。

オランダの銀行・金融サービスグループINGの最近の分析も、トランプの関税政策と中国の報復措置が金の直近の上昇に寄与していると指摘している。

「アメリカがカナダ、メキシコと関税発動の延期で合意しても、貿易と関税をめぐる不確実性がなくならない限り金価格は上がり続ける」と、INGコモディティ・ストラテジストのエワ・マンティは書いている。「貿易摩擦が激化し、報復措置が増加すれば、安全資産としての金の需要は続くだろう」

トランプが鉄鋼とアルミニウムに世界共通の関税を課すと発表したことを受け、欧州委員会は10日、「EUとアメリカが大西洋を越えた貿易と投資を通じて、深く統合された生産網を構築したことを考慮すれば、関税の賦課は違法であり、経済的に逆効果になるだろう」と述べた。「関税は本質的に税金だ。関税を課すことで、アメリカは自国民に課税し、ビジネスのコストを引き上げ、インフレを煽ることになる」

 

トランプのカナダとメキシコに対する関税は、追加の国境警備措置と麻薬密売撲滅への取り組みに関する合意が成立したため、今のところ保留されている。

3月12日に発効する鉄鋼とアルミニウムに対する新たな関税について、これまでのところ、国別の適用除外は発表されていない。

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