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花の都で磨かれる日本の“銘品”和菓子、日本酒、おやき…アンテナショップ「GOEN」開店

日刊スポーツ 2024年7月6日 8時23分

<情報最前線:ニュースの街から>

フランス・パリから広がる日本の銘品と「ご縁」。一般社団法人「長野欧州貿易支援機構」(長野県佐久市)は今年5月、県の名産品を中心として販売、PRするアンテナショップ「GOEN(ゴエン)」を開店した。オリンピック(五輪)・パラリンピック開催による経済波及効果が期待できるパリで、日本の銘品の販路拡大を目指している。同機構の笹沢幸司代表理事(49)は、GOENに出品する企業や行政とともに「パリで通用するブランド」を目標に掲げる。【沢田直人】

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■山形 京都 岡山など23企業4自治体出品

アンテナショップ「GOEN」は、今年5月11日に“花の都”パリでオープンした。店内には和菓子や日本酒、みそといった日本の銘品が並ぶ。長野県のほか、山形県、京都府、岡山県などから、23の企業と4つの自治体が出品している。笹沢氏は「特に和菓子やおやきが人気で売れています。ヘルシーでもありますからね」と話した。

笹沢氏は約30年前、フランスでパティシエとして修業を積んでいた。帰国後は長野県佐久市に飲食店を開業。しかし、2020年に拡大した新型コロナウイルス感染症の影響で苦しい状況に立たされたという。そんな中、フランスの飲食業界で活躍を続ける友人から「長野の食材を送ってくれないか」と連絡があった。フランスでは日本食ブームが訪れていたが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻などが重なり、物流が停滞していた。笹沢氏は「定かではないんですけど、友人は私を助ける気持ちを持って、心配してくれたのだと思う」と感謝した。

長野欧州貿易支援機構は、企業が特産品を欧州へ直接輸出する活動を支援しており、また参画する企業を募集している。笹沢氏によると、GOENに出品している長野県内の多くの企業の輸出形態は、海外に商品を輸出しているものの、ほとんどが国内の商社に卸売りをするのみで、販路拡大にはつながりにくい状況だという。笹沢氏は「輸出しているメリットがあまり享受されていない」と指摘し「パリで通用するようになると、他の国に出していくことのハードルが下がる」と力を込めた。

同機構と企業はGOENを通じて、商品をPRするとともに地元の声をリサーチしている。その上で、現地のスーパーやレストランなどとつながる場所を目指している。また、現地の需要を聞き、価格を調整するほか、パリ仕様の商品やパッケージを検討している企業もあるという。

パリでは五輪・パラリンピックの開幕が目前に迫っている。笹沢氏は「経済が活性化しているという意味で、パリオリンピックまでには、絶対にオープンさせたいと思っていました」と振り返った。一方で「『パリで磨かれるブランド』を目指しているので、観光客の方たちを目的にしているわけではないです」とこだわりを見せた。今後の目標については「プラットフォームとして機能するために、欧州に同じような拠点を増やしていきたい」と展望を広げた。

▼和菓子「桜井甘精堂」

長野県小布施町の栗菓子製造販売「桜井甘精堂」は、創業200年以上の歴史がある。同社はGOENに食べきりサイズの「ひとくち栗ようかん」、栗と砂糖のみを原料にして作ったきんとんの「ひとくち栗かの子」、赤えんどう豆と砂糖に和三盆を加えた落雁「花逢瀬」を出品した。

平山豪晴代表取締役によると、同社は海外のデパートの催事などで、商品を短期間で出品することはあったが、常設する店舗に主導で出品するのは初めてという。「弊社が取り扱う和菓子がどう評価していただけるのか。気に入っていただければ海外に広めていきたい」と話した。

▼おやき「いろは堂」

長野市のおやき専門店「いろは堂」は国内でも人気が高い野沢菜、野菜ミックス、かぼちゃ、粒あん、ぶなしめじなどといった定番商品のおやきを出品。伊藤拓宗代表取締役によると、パリでおやきを販売する店舗はこれまでになかったという。販売価格は1個4・2ユーロ(約700円)。日本での販売に比べて倍以上の値段だが「円安もありますし、食の物価は高いところ。現地の人は高すぎないという認識があるようです」と説明した。また「おやきは手軽さやヘルシーなことが強みだと思っている」と強調し「現地の人に受けるような味付けとか食材を考えていければと思います」と語った。

▼きび団子「廣榮堂」

岡山県名物のきび団子を製造する廣榮堂(岡山市中区)は、伝統の商品「元祖きびだんご」などを出品する準備を進めている。廣榮堂は今年、創業168年。小西祐貴社長室室長は「『岡山から世界へ』という大きい目標があるので、きび団子という文化、和菓子を200年、300年と未来につないでいくためにいろんなチャンレンジをしないといけない」と意気込む。「日本で受けている商品がそのまま受けるとは思っていないので、今のパッケージでいいのか、味もそうですが、賞味期限も短い商品ですので、そこの改善も見据えながら市場調査して商品を作っていきたい」と述べた。

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