上京約1年の新星女優、中山ひなの（19）が、サッカー仕込みのたくましさで飛躍を狙う。現在放送中のTBS系連続ドラマ「さっちゃん、僕は。」（火曜午後11時56分）では、地上波連ドラ初出演ながら、相手役のFANTASTICS木村慧人（24）と遠距離恋愛となるヒロイン、さっちゃん役を熱演。10代のあどけなさと、大人の落ち着きを併せ持つニューフェースに、今の気持ちを聞いた。
生まれ育ったのは九州、佐賀県北西部にある人口約5000人の小さな町、玄海町。幼い頃から熱中したのがサッカーだった。「（1学年上の）兄や幼なじみがうまくて悔しくて」。負けず嫌いから夢中になり、小学2年から男子に交ざって地元クラブチームでボールを蹴った。
転機は中学1年の頃。右足首を骨折して離脱した。学校では運動会の応援団長や学級委員長も務めたアクティブ派。動かずにはいられなかった。「何か新しいことをしよう」。思い浮かんだのが「ずっと憧れていた」という女優の道だった。
すぐに隣の福岡県まで向かい、オーディションを受けた。「私はすごくオーディションが好きで。楽しさにハマってしまいました」。転身を決意すると、中学2年時には、そのオーディションから地元舞台の主演をつかんで女優デビュー。活動を優先して福岡の高校に進学し、母親と共に移り住んだ。
福岡ローカルながら、毎度豪華ゲストが出演することで知られるKBCのドラマ「福岡恋愛白書」や短編映画などに出演して演技を磨き、卒業後に上京。タイミングを同じくして、長かった髪の毛も役作りのために短く切った。約1年が経ち、またもオーディションから今回の「さっちゃん－」のヒロイン役をつかみとった。
「上京して1年ちょっとしかたっていない、こんなに早いタイミングで地上波のドラマに出演できることになってうれしかったです。着実に進んでいるなという実感を感じました」。次週放送の第6話以降は見どころ十分といい「個人的には、ここからのさっちゃんに注目してもらいたいです。1話、2話とかでは（木村演じる）京介のことを純粋に信じているさっちゃんが、いろいろなことを知ってしまう。そこからどう決断して、どう変わっていくのか。見ててほしいポイントだと思います」と話した。
今後も出演作が多く控えるなど、演技力は高く評価されている。都内での生活にも徐々に慣れ、休日は友人と原宿などに出かけるなど10代らしさもたっぷり。福岡時代にレッスンなどを共にした仲間も多く上京してきており「この前は竹下通りでチーズハットグを食べました。（チーズが）伸びましたね。成功しました」と笑顔。今後の活動については「舞台も経験しましたけど、自分は映像の方が好きだなと思いました。オーディションで役をいただけるなど、自分はただただ恵まれていて、運が良い。これからも目の前のことに誠実に、作品の中で自分の役割をしっかりできて、監督の指示もしっかりくみ取れる役者になりたいなと思います」と力を込めた。
今年10月で20歳の節目を迎える。「この道に進んでいなかったら、なでしこジャパンを目指していたかもしれない」とサッカーのことも忘れてはいないが、「スポーツは引退です。もう動けません（笑い）。これからは芸能にまい進して、ゴールデン帯ドラマのメイン役や、広く劇場公開される映画に出たいです」と掲げた。
自身の特徴は「童顔で低身長」と語り、モットーは「楽しむこと」。得意のオーディションなどでも「その時感じたことを受け取って出して、そこにいる人の中で一番楽しむようにしています。これまでそんな姿を『面白い』と言ってくださる監督さんもいました。純粋にお芝居が好きですし、自分が楽しまないと見ている人も楽しくないと思っています」。
今回の「さっちゃん－」でも木村との身長差カップルぶりが話題のひとつだが“ハタチ”になってもまだ制服を脱ぐつもりはない。「童顔を生かして、やれるうちは学生役をたくさんやりたいなと思っています。そして、少しずつ大人な役にも挑戦したいです。これからいろんな作品に出て、みなさんの目にとまるように頑張ります。このインタビューを読んでくださったみなさんも、よかったら私の出ている作品を見てみてください！」。
玄海が生んだサッカー娘が、大人の女優への階段を1歩ずつ登っていく。【松尾幸之介】
◆中山（なかやま）ひなの 2004年（平16）10月29日、佐賀県玄海町出身。1学年上の兄や幼なじみの影響で小2からサッカーに励む。中2から女優に転身し、08年オムニバス舞台「迷子のふたり」でデビュー。21年の短編映画「あめとひなた」では、かごしま平和映画祭で主演女優賞受賞。高卒後に女優業に専念するため上京。ピアノや革細工などの美術工作も得意。151センチ、血液型AB。