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化け猫の中身は森山未来 久野遥子監督×山下敦弘監督のコラボ作品「化け猫あんずちゃん」

日刊スポーツ 2024年7月22日 7時0分

「化け猫あんずちゃん」(19日公開)は、「ロストコープ」を採用したユニークなアニメ映画だ。

実写で撮影した映像から登場人物の芝居を抽出し、アニメ化する手法だという。人体の動作をそのままデジタル映像化するモーションキャプチャに作家の意図が加わり、デフォルメされたものと考えればいいのだろうか。

原作はいましろたかし氏のコミック。児童向け作品として、人間社会になじんだ化け猫あんずちゃんの日常をファンタジックに描きながら、現実社会のつらさが投影されている。

寺の和尚さんに拾われ、大切に育てられた37歳のあんずちゃんは言葉を話し、人間のように暮らしている。ある日、和尚さんの息子、哲也が11歳の娘かりんを連れて帰ってくる。妻に先立たれ、ギャンブルで身を崩した哲也は「母さんの命日に戻ってくる」と言い残して姿を消してしまう。かりんの面倒を見ることになったあんずちゃんは「お母さんに会いたい」という希望をかなえるために「化け猫の力」を使うが、それは地獄のふたを開ける行為だった…。

元になる実写を担当したのは山下敦弘監督。そこであんずちゃんを演じたのは森山未来だ。田園風景の中でミニバイクに乗るあんずちゃんの姿や、かりん(五藤希愛)とのやりとりにほっこりと心温まる。アニメ映像に転換されてはいても、どこか山下監督の初期作品「リアリズムの宿」(03年)などのユルいテンポに重なって見える。

哲也役は青木崇高で、化け猫の森山とは対照的に見た目も本人に似ている。そんなほどよい散らばり具合にアニメを担当した久野遥子監督のセンスが光っている。

「役者さんの動きを細かく拾いすぎても、演技の持つ『旨み』が弱まってしまう。拾うべき動きとそうではない動きを見極めるのが大事だと思いました」という。

地獄の面々が登場してからは一気に騒がしくなるが、鬼たちのアスリートのような動きはロストコープのたまものだろうし、一転カーチェイスシーンはいかにもアニメらしい描き方だ。そして「レッドタートル ある島の物語」(16年)の美術監督ジュリアン・ド・マンによる奥行きのある背景。

前例の無いコラボアニメ作品からはいろんな顔がのぞく。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

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