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ワクワクの展開の連続だったパリ五輪開会式 蜷川幸雄さんが生きていれば誰よりも…

日刊スポーツ 2024年8月5日 7時0分

パリオリンピック(五輪)の開会式が波紋を呼んでいます。女装したダンサー、パフォーマーらが長いテーブルの前で一列に並んだ光景が、キリストと使徒たちを描いたダビンチの名画「最後の晩餐」に似ていることから、カトリック教会などから「キリスト教をやゆしている」と批判を浴びています。さらには、演出を担当した芸術監督トマ・ジョリー(42)や出演者が「殺害予告」の脅迫を受けたとして、検察などが捜査に乗り出す騒ぎになっています。

開会式の中継を見ましたが、「かなり攻めているな」という印象を持ちました。「最後の晩餐」に似た場面や、フランス革命でギロチンによって処刑された王妃マリー・アントワネットを思わせるドレス姿の女性が首を持って登場するなど、かなり異色でした。

トマ・ジョリーは日本ではなじみが薄いけれど、フランスで「ロミオとジュリエット」「リチャード三世」などシェークスピア作品から伝説的なフランス発ロックミュージカル「スターマニア」まで幅広く演出。その奇抜で斬新な演出にさまざまな物議を起こす若手演出家として知られています。

五輪の開会式と言えば、2012年のロンドン五輪を思い出します。エリザベス女王が映画「007」の主人公と共演する場面などが話題となりました。当時、蜷川幸雄さんは「これまでの開会式はスポーツをスペクタクル化したものが多かったけれど、今回は人間の進化、作り上げた歴史を描いて、人間賛歌にもなっていた」と高く評価したことを思い出します。

3年前の東京五輪の開会式は、コロナ禍の開催でいろいろな制約、アクシデントがあったにせよ、ピクトグラムをパントマイムでみせるパフォーマンスが目立ったくらいで、良くも悪くも印象に残らないものでした。その点、パリ五輪はエッフェル塔でセリーヌ・ディオンが「愛の讃歌」を熱唱する場面まで、次はどんな展開が待っているのかと、ワクワクの連続でした。蜷川さんも生きていれば、誰よりも面白がったことでしょう。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)

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