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現代社会の「嫌な空気」を吹き飛ばす痛快コメディー 「ポライト・ソサエティ」

日刊スポーツ 2024年8月19日 7時0分

ダイアナ妃の最後の恋人はパキスタン系の医師であり、クイーンのフレディ・マーキュリーもまたパキスタン系であった。過去の映画からも英国にパキスタン系の人たちが根付いていることがうかがえる。南アジア系移民の中ではインド系に伍(ご)する存在なのだという。

「ポライト・ソサエティ」(23日公開)は、ムスリム女性が結成したパンクバンドの異色ドラマ「絶叫パンクスレディパーツ!」で注目されたパキスタン系のニダ・マンズール監督が撮った初めての長編作品だ。

女性が「窮屈」を感じるムスリム社会で、夢見る姉妹が家父長制やルッキズム、スクールカーストといった「嫌な空気」を吹き飛ばす。カンフー映画やボリウッド風の描写を織り込んだコメディーで、現代社会の課題を浮き彫りにする。あのオバマ前大統領が「お気に入り映画」の1本に選んだこともうなずける。

ロンドンで暮らすリアはスタントウーマンになることを夢見ている。周囲の変人扱いの中で、画家を志す姉のリーナ(リトゥ・アリヤ)だけが理解者だった。

そんなある日、リーナが富豪一家の子息に見初められた。非の打ちどころのない医学者の彼にリーナも夢中。とんとん拍子で結婚話は進展する。姉を失う寂しさも手伝って彼のリサーチを始めたリアはそのとんでもない「裏の顔」を知ってしまう。

誰も信じてくれない「陰謀」から姉を奪還するため、リアは極秘作戦に着手するが…。

アクションシーンにはカンフー映画のテイストが、華やかなな披露宴のシーンにはボリウッド映画へのリスペクトがうかがえる。マンズール監督はそんな様式美を物語の展開に違和感なく包み込み、主人公リアのむちゃな行動で笑わせながら、作品にシスターフッド(女性たちの連帯)の軸を貫いている。

Netflixドラマなどで活躍するリア役のプリヤ・カンサラの軽やかな身のこなしに思わず見入り、不器用だが、真っすぐに生きる姉妹に拍手を送りたくなる。

ルッキズムにもの申す作品で言いにくいが、リーナ役のリトゥ・アリヤといい、南アジア系ならではの、くっきりとした美しさも改めて実感させられた。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

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