Infoseek 楽天

中村橋之助、福之助、歌之助の3兄弟 自主公演「神谷町小歌舞伎」への思いを激白

日刊スポーツ 2024年8月21日 20時0分

歌舞伎俳優中村橋之助(28)福之助(26)歌之助(22)の成駒屋3兄弟が、自主公演「神谷町小歌舞伎」を9月12、13日、東京・浅草公会堂で行う。昨年に続く2度目の開催に向け、その思いを語った。

-前回の公演の反響と手応えは

橋之助 おかげさまで全席完売でした。アンケートでも6割が初めて歌舞伎を見た方で、かつ喜んでくれました。僕たちが思い描いていた及第点というところは、クリアできたのかなと思います。

歌之助 「歌舞伎を皆さんに愛していただく」という第1歩としては、いいスタートを切れたと思います。こだわりだった古典を見て面白いと思っていただけたのが、一番うれしかった。

福之助 歌舞伎は難しいと思ってる方も多いと思います。でも「見やすいものもたくさんあります」というのが、この公演のメッセージです。裏方ではいろいろありましたが、1回目としては成功だったと思います。

-今回はどんな公演を思い描いていますか

橋之助 今回の主役は福之助なんです。福之助に何をやりたいのかを聞くと「一本刀土俵入」でした。その上で、お客さまにとって見やすく、我々にとっても勉強になるものを考えた時に「双蝶々曲輪日記 角力場」を思い付いて、あえて相撲を重ねるのも面白いのではということで、今回は相撲にちなんだ2演目でお届けする形になりました。

福之助 実はこの劇中に出て来るお君ちゃんという女の子の役を、小さい頃に1度やったことがあって、その時に亡くなった伯父勘三郎の最後の長セリフがかっこいいなと思っていました。あと、小学校の時国技館に通っていて、序ノ口からずっと見ていた相撲ファンなんです。そういうのもあって、お相撲さんの役をやりたいというのはずっと思い描いていました。

-どんな演目ですか

福之助 お客さまの見やすさを重視しても、すごく分かりやすくて、時代劇を見ているかのようにリラックスして見てもらえる演目だと思います。僕が演じる茂兵衛は、今まで素晴らしい先輩方が演じていて、そこに追いつくのはまだ全然無理な話ですが、年齢的にもちょうど間くらいなので、なるべく等身大で、今の自分の価値観でできるタイミングだと思います。

-神谷町小歌舞伎は運営も含めた自主公演とのことですが、その目的は

橋之助 まずは“歌舞伎に接してもらう”ことです。歌舞伎というと、どうしても難しいイメージがあると思います。確かに難しいものもありますが、見やすいものもあります。そして何よりも、3兄弟の共通点は古典が好きということなんです。我々自身が成長できて、お客さんも一緒に成長して、歌舞伎座の本興行につながればいいなと思っています。

福之助 演目の前にごあいさつが付いていて、前回は橋之助がやりましたが、今回は僕がやらせていただきます。

橋之助 去年のあいさつは魂を込めました。役ではなく、橋之助として出て行って皆さんに「こういう楽しみ方があります」という話をしました。今回はそれを福之助に任せました。

福之助 僕は歌舞伎の難しいところも理解しているつもりで、一般の方たちと同じ感覚で見ている部分もあると思っています。そういうところを分かりやすく説明したいなと思っています。

-運営面も3人が主体ですが

橋之助 これも1つの経験というか、僕たちはおかげさまで、裏方の仕事を経験せず、今まで芸に集中できた部分があります。でも、こういう苦労もあって公演が成り立っているんだというところを感じるのは、すごくいいことなんです。

-最も苦労しているのは

橋之助 チケットですね。去年は土日だったので早い時期に完売しましたが、今年は平日なので…。あとは少しでも節約のためにと、後援会からお申し込みあったチケットはプレイガイドを通さずに発券して、自分たちで宛名を書いて送っているんです。

-逆にファンにとてはうれしいのでは? ファンは橋之助さんの直筆だと認識できていない?

福之助 きったない字だから、わかっているんじゃないかな…

橋之助 去年はチケット袋を作るのを忘れてしまいました。それで普通の封筒にチケットって書いて送りました。今年は発注したけど、サイズを間違えて入りませんでした(笑い)。

福之助 これで来年、字がきれいになったら「こいつら諦めたんだな」と思われそうですね。

-今年、新たに取り込んだことは

歌之助 3等席を3000円に設定しました。去年、同世代の子を誘いましたが、見たいけど、お金で見に行けないという子がいました。この神谷町小歌舞伎は歌舞伎の入り口的な意味があって、演目も初心者向けなので、チケットもリーズナブルにということもできればと思っています。

橋之助 チケット代にしてもそうですが、チラシでも、グッズでも、演目立てにしても、前例を作るということはとても慎重にならないといけないことだと思うんです。でもそれができるのは、歌舞伎座での本興行があるからなんです。神谷町小歌舞伎でやったものを歌舞伎座でとなった時に、いいものだけを取っていけるようにいろんな実験をしながら、そしてお客さまの声を聞きながら取り組んで行く。僕たちがお客さまに育てられているという感覚を持っています。

-何かアピールしておきたいことはありますか

福之助 パンフレットですね! 今年はビジュアルはもちろん、読み応えにもこだわりました。インタビュー記事はお弟子さんの記事も載せています。お弟子さんたちの記事はなかなか接する機会がないと思います。インタビュー記事以外にも演目のあらすじや解説もありますが、「一本刀」は僕、「角力場」は橋之助が自分の言葉で解説を書いているので、そこも含めて手作り感を楽しんでいただければと思います。

-では、最後にメッセージをお願いします。

橋之助 3兄弟だけでなく、成駒屋一門が同じ方向を向いてお客さまのため、歌舞伎のため、そしてこの小歌舞伎のために、1回1回命をかけて務めていきます。足を運んでいただくことが我々にとって何よりの応援になりますし、力にもなります。ぜひ、浅草公会堂に足を運んでいただけたらうれしいです。

歌之助 歌舞伎を生で見ていただきたいというのが一番なので、ぜひこの公演を機会に感じていただきたいです。この公演を機に歌舞伎を愛していただくということを目標に、かつ本興行へのチュートリアルとなるように頑張っていきますので、ぜひご来場いただければと思います。

福之助 使っていただいた時間に対して、ちょっとでも良いものを見せられたらと思って、僕たちも努力しています。ぜひ、自分の口上から楽しんでください。【聞き手・川田和博】

この記事の関連ニュース