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【王位戦】藤井聡太王位「いろいろな経験ができた」渡辺明九段の作戦押しつぶした圧倒的な構想力

日刊スポーツ 2024年8月28日 20時44分

藤井聡太王位(竜王・名人・王座・棋王・王将・棋聖=22)に渡辺明九段(40)が挑む将棋の伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦7番勝負第5局が27、28の両日、有馬温泉(神戸市北区)の老舗旅館「中の坊瑞苑」で行われ、先手の藤井が渡辺を下し、シリーズ対戦成績を4勝1敗で防衛、5連覇を達成した。

王位連続5期獲得により、早くも2つ目の「永世称号」を手にした。複数の永世称号獲得は史上5人目、22歳1カ月での達成は羽生善治九段の24歳9カ月を大幅に更新する史上最年少の偉業となった。

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「作戦家」の異名を持つ渡辺の背水の陣の作戦を、圧倒的な構想力で押しつぶした。渡辺が選んだ戦型は後手雁木(がんぎ)。経験値が問われる局面が多いスペシャリストの作戦だ。藤井は右銀を足早に繰り出し、急戦策で対抗した。

「どういう方針でやるか難しい将棋だった」。一手一手が難しく、長考合戦に。2日目の難解な中盤戦では73手目の飛車切りから猛攻を開始。果敢な攻めを見せ、終盤は相手の経験値を上回る深い読みで優勢を築き、相手玉を華麗な詰みに討ち取った。

7月に史上最年少の21歳11カ月で永世棋聖の資格を獲得。自身初となる「永世称号」の資格獲得後、2カ月あまりで、2つ目の「永世称号」を手にした。永世称号は大棋士の代名詞といわれ、タイトル戦で大活躍した証しだ。

“ダブル永世”の偉業に「意識していなかったが、うれしく思っています」と喜びを口にした。日本将棋連盟によると、これまで最も若い永世2冠は羽生善治九段の24歳9カ月。2つ以上の永世称号を得たのは藤井のほか、最多7冠の羽生九段、5冠の故大山康晴15世名人、5冠の中原16世名人、2冠の渡辺九段のみで、史上5人目だ。22歳1カ月での永世2冠は“羽生超え”の史上最年少となった。

23年10月に史上初の全8冠制覇を果たしたが、今年4~6月に行われた第9期叡王戦で同学年の伊藤匠(たくみ)叡王に敗れ、初めて失冠した。「不調説」もあったが、棋聖戦、王位戦では「横綱相撲」で相手をなぎ倒し、タイトル獲得を歴代6位の通算24期まで伸ばした。今シリーズを振り返り「結果は幸運もあった」と課題も見つけた。9月4日からは昨年、全8冠制覇をかけて死闘を繰り広げた軍曹・永瀬拓矢九段との王座戦5番勝負が始まる。「気持ちを切り替えていきたい」と前を見据え、対永瀬戦に「研究が深い」と警戒した。若き第一人者に休息はない。【松浦隆司】

◆永世称号 各タイトルで多く獲得した棋士に許される特別な呼び名。棋戦ごとに条件が違う。王位戦では通算10期以上か連続5期以上が条件。引退後に名乗るのが原則で、過去に「永世称号」の資格を得たのは故大山康晴15世名人、中原誠16世名人、羽生善治九段といったレジェンドが名を連ねる。

◆永世8冠の道 羽生善治九段は17年、当時のすべてのタイトル戦で「永世称号」を獲得する史上初の永世7冠を成し遂げた。現在はタイトルが1つ増え、8タイトルある。王位、棋聖で永世称号を得た藤井の各タイトルの通算獲得数は、竜王(3期)、叡王(3期)、王将(3期)、名人(2期)、棋王(2期)、王座(1期)。王将は通算10期獲得など各タイトル戦により条件は異なり、永世8冠は最短でも20代後半になる。

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