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水森かおりの新曲「三陸挽歌」「オノマトペ」が印象的な演歌 新境地のような名曲が誕生

日刊スポーツ 2024年9月2日 5時0分

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

久々に「オノマトペ」が印象的な演歌がヒットしている。水森かおりの新曲「三陸挽歌」(作詞たきのえいじ、作曲・弦哲也、編曲・伊戸のりお)と、入山アキ子の「ザンザ岬(ニューバージョン)」(作詞・星野哲郎、作曲・鈴木淳、編曲・南郷達也)である。ともに「ザンザ…」という表現が歌詞に登場する。

オノマトペとは「擬態語」「擬音語」を意味するフランス語。擬態語は、ピカピカ、キラキラなど物事の状態を表す。擬音語は、クスクス、ザーザーなど音を言葉で表している。擬音語の中には、ニャンニャン、ワンワン、キャーなど人や動物が発する声を表す「擬声語」が含まれる。

水森の「三陸挽歌」は、岩手の三陸海岸を舞台に、涙と過去を捨てに来た女性の心情を歌う。歌詞の「ザンザザザン ザンザザザン」で、三陸の波のように明日に向かって歩み出す女心を表現している。ご当地ソングの女王の、新境地のような名曲である。

入山の「ザンザ岬」は08年発売の同名曲のニューバージョン。北海道・稚内を舞台に海に生きる男女の熱い恋心を歌い上げる。歌詞の「ザンザザ ザンザザ ザンザとヨー」で、打ち寄せる波のような熱い女心を表現した、こちらも名曲である。

昨年発売された一条貫太のヒット曲「男の漁場」でも、「ザンザ ザンザと~」と歌い出す。大漁を目指して波をかき分ける漁船のきしみすら聞こえる。

三者とも波の擬音語を見事にメロディーに乗せて、聴く者の心に訴えかける作品に仕上げている。

オノマトペは昔からあり、中原中也の詩「サーカス」が特に有名だ。ブランコの揺れを「ゆあ~ん、ゆよ~ん、ゆあゆよん」と巧みに表現した。

オノマトペを使ったヒット曲は、演歌に限らず、ポップス系にも多くある。

「ギンギラギンにさりげなく」(近藤真彦)や「ギザギザハートの子守唄」(チェッカーズ)は、若者の熱い心を感じさせる。

「キューティーハニー」の「チュクチュクしちゃうの」は、乙女心のオノマトペだ。元祖の前川陽子が歌ったのが73年、倖田来未がカバーしたのが04年と、31年の時をへても変わらず新鮮である。

AKB48の「ヘビーローテーション」には、「ガンガン」「ジャンジャン」「ドンドン」「ビンビン」と登場する。この連続が大ヒットの一要因でもある。

演歌の「子連れ狼」(橋幸夫)は、「しとしとぴっちゃん・しとぴっちゃん…」で冷たい雨を、「ひょうひょうしゅるる・ひょうしゅるる」で身に凍む北風を見事に表した。

名曲「舟唄」(八代亜紀)では、港町の居酒屋でいとしい人を思って独り飲む心情を「ほろほろ飲めば」「ぽつぽつ飲めば」と歌った。まるで情景が浮かび上がってくるようである。

歌におけるオノマトペは、聞く者の想像力をかき立て、作品に深みを増してくれる魔法の表現だ。歌手がオノマトペを、どう歌っているかを意識して聞くのも楽しいものだ。【笹森文彦】

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