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堀田眞三 恩人は“ミスター超大作”佐藤純弥監督 黒澤映画の名優志村喬を暗殺/連載2

日刊スポーツ 2024年9月6日 22時28分

俳優堀田眞三(78)が11日から15日まで、東京・渋谷伝承ホールで演劇集団UTARI第4回公演「時は今 天が下しる 桔梗かな」(主催:K‘sLink宮島啓)に出演する。本能寺の変を新たな解釈で描く作品で、羽柴秀吉を演じる。出演は、他に若山騎一郎、加納明、田中正彦、賀集利樹、島本和人ら。芸歴61年目、映画、テレビ、舞台合わせて2000作品に出演してきた堀田に聞いてみた。

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「君よ憤怒の河を渡れ」「人間の証明」「植村直己物語」「敦煌」「男たちの大和/YAMATO」などで知られた佐藤純弥監督。2019年(平31)に86歳で亡くなった“ミスター超大作”を、堀田は恩人と慕う。

「佐藤純弥監督には、ものすごくお世話になった。純弥先生から声をかけていただいて、一時期東映が渡瀬恒彦、誠直也、藤竜也、それから僕。この4人を、渋谷の安藤組の親分から俳優に転じた安藤昇さんの一家の子分役につけて、ブレークさせようとした時期があった」

佐藤監督は1973年(昭48)に安藤昇主演の「やくざと抗争 実録安藤組」のメガホンを撮っている。

「その頃に佐藤純弥監督が、僕のことを買ってくださった。ABCテレビの『天皇の世紀』(71年)で佐藤監督がメガホンを取る放送回の時に、土佐勤王党の郷士・那須信吾役を演じました。東宝の黒沢明監督映画の名優として知られた、志村喬さんが幕末の土佐藩の参政・吉田東洋を演じていた。僕は雨の中で志村さんが演じる吉田東洋を暗殺して脱藩する役でした」

BSフジ「クイズ!脳ベルSHOW」に出演する時は、生真面目な堀田の回答が笑いに変わる。

「司会の(ますだおかだ)岡田圭右さんがいろいろ振ってくれるんだけど、僕の話がどんどん、あっちこっちに行ってしまうんでね。それで岡田さんがツッコんでくれるんだけど、本当にボケちゃったみたいになる(笑い)。ちょっと勝手なんですが、こんな年齢まで生き残ってるんでね」

俳優として出演した作品のジャンルは、ものすごく幅広い。「仮面ライダー」シリーズ、戦隊シリーズ、アクション映画、時代劇…。

「外国映画も結構、出演させていただいている。シャーリー・マクレーンさんと共演させていただいたり、韓国の映画とか。日本の役者は顔が薄いから。それもあって、国籍不明みたいなキャラクターがあって話が来てるのかな(笑い)」

俳優になる気は全くなかった。

「僕は大阪でセメント会社に勤めていたんです。その頃、高城丈二っていう俳優さんがいたんです。映画やドラマになった『悪魔のようなすてきな奴』という作品に主演した人です。僕の会社の先輩で、ものすごく歌のうまい人がいたんです。その先輩がプロダクションから高城丈二と2人で売り出されるという話で、上京することが決まった。ところが、その先輩のお母さんが亡くなられて上京が取りやめになったんです。その後に高城丈二は大ブレークするんだけどね」

その後は、普通に会社員生活を送っていた。

「上京をやめた人の親戚に松竹のプロデューサーがいたんです。その人のうちにしょっちゅう遊びに行ってたら『俳優にならないか、いいキャラを出してる』って言われたんです。でも、俳優なんて全く意識になかった。それで、一段落したら『役者にチャレンジできる、こんなのがあるよ』と。それが東映のニューフェースの募集で、彼が応募してくれた。それで第1次は書類審査があって、第2次は京都の太秦、第3次が東京の大泉であって、第4次が東京・銀座の東映本社でした」

結果は合格。思いもかけず合格してしまった東映のニューフェース。

「俳優なんてなるつもりもないし、その才能もあると思わないから東映本社に電話したんです。そして話をしたら『何言ってんだ。ニューフェースってとんでもないことだ。今回は5万人ぐらいの中から、東映が金を出して、お前を育ててやろうっていうのに』って言われたんです。スターになれるか分からないから『いくらくれますか』って聞いたら『そんなやつ、お前が初めてだ』って。それで結果的に東映でニューフェース11期生として採られた。それが1964年(昭39)の東京五輪の前の年」

当時は、映画界が隆盛だった。

「テレビが台頭してくる前で、まだ映画が良かった。映画界の最高は昭和33年。昭和33年から5年間が絶頂期で、その頃で11億2745万人の観客動員。日本の人口から考えると、赤ちゃんからおばあちゃん、おじいちゃんまで全員が、月に1回は映画を見に行っている娯楽の王様だった。それから、5年間でにテレビが出てきて、『週刊テレビガイド』が100万部を突破したとか、缶ビールが出てきたとか、トリスを飲んでハワイ行こうとか、世の中が大きく変わった。1ドルが365円の時代。劇的に日本の全てが多様化、国際化してきました」

(続く)

◆堀田眞三(ほった・しんぞう)1945年(昭20)10月20日、熊本県御所浦町(現天草市)生まれ。63年第11期東映ニューフェース。64年映画「くノ一化粧」で俳優デビュー。70~72年TBS「キイハンター」。73年映画「やくざと抗争 実録安藤組」。79~80年TBS系「仮面ライダー」。10年(平22)NHK大河「龍馬伝」。176センチ。血液型O。

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