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相米慎二監督「お引越し」「夏の庭 The friends」4K版12・27から全国順次公開

日刊スポーツ 2024年9月9日 13時33分

2001年(平13)に53歳で亡くなった、相米慎二監督の代表作の93年「お引越し」と94年「夏の庭 The friends」の4Kリマスター版が、12月27日から東京・Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、新宿武蔵野館ほか全国で順次公開することが決定した。配給のビターズ・エンドが9日、発表した。

「お引越し」は、1年前の23年9月にイタリアで開催された世界3大映画祭の1つ、第80回ベネチア映画祭でクラシック部門に出品され、最優秀復元映画賞を受賞した。邦画の受賞は、22年に鈴木清順監督の「殺しの烙印」4Kデジタル復元版が、アジア映画として初めて同賞を受賞したのに続き2年連続。折しも、受賞した9月9日は相米監督の命日だった。

「お引越し」は、相米監督の10作目となった代表作の1つで、ひこ・田中氏の同名小説の実写映画化作品で、田畑智子(43)のデビュー作となった。田畑が演じた京都の小学6年生の漆場レンコが、父ケンイチが家を出て母ナズナとの2人暮らしが始まった中、離婚目前の両親の間で成長していく姿を描いた。中井貴一(62)が主演し父のケンイチ、母ナズナを桜田淳子(66)が演じた。

公開された93年にベネチア映画祭と並ぶ世界3大映画祭の1つ、カンヌ国際映画祭(フランス)の「ある視点」部門に出品された。公開から30周年を迎え、3ミリオリジナルネガフィルムから4K解像度によるスキャンを行い、デジタルリマスター作業を行い、4Kデジタルリマスター版がベネチア映画祭で世界初上映された。公開から30年の時を経て、世界3大映画祭のうち2映画祭に出品され、受賞を果たす快挙となった。

「夏の庭 The friends」は、4Kリマスター版として修復されると、今夏、相米監督特集が組まれた香港映画祭〈夏編〉でワールドプレミア上映された。原作は、世界十数カ国で翻訳出版されている湯本香樹実氏の小説。三國連太郎のさん圧倒的存在感と少年たちのみずみずしい演技で映画化した。ある老人と少年たちの交流から「死」と「生」を考えさせられていく、ひと夏の成長譚(たん)。公開から約30年後のいま、海外での再評価・上映を経ての凱旋(がいせん)公開となる。

両作品の出演者が、コメントを発表した。

田畑智子(「お引越し」レンコ役)「お引越し」は私自身のデビュー作であり、思い入れしかない、宝物のような作品です。小学生だった私は、まさか30年たってもまだこの仕事をしているなんて思ってもいませんでした。相米監督に出会って私の人生が変わった。あの夏はそのぐらいの出来事でした。それが今、またスクリーンで観られる! みなさんがどういう感想を持ってくださるのか、すごく興味が湧きます。改めて見る方も、初めての方も、現代だからこそ響くところがきっとあるし、相米監督のつくる世界をいろんな方に楽しんでもらいたいです。

中井貴一(「お引越し」父・ケンイチ役)相米監督との出会いは、人見知り合戦からスタート。お互い、人見知りで、「東京上空いらっしゃいませ」の顔合わせが進まず、トイレから帰って来た相米監督が、突然、「中井、ゴルフやる?ゴルフ行こう」と。その一週間後、ゴルフをラウンドしながら、打ち合わせ、顔合わせとあいなった。そこからの、お付き合い。

『お引越し』は、1カ月、京都ロケ。しかも、お盆時期。インバウンドの盛んな今ほどではないが、実際の大文字山をバックに撮影などとは、車量、人の数からして正気の沙汰ではない。それを、平然と実行するのが、相米組のすごさ。まだまだ、話すエピソードの尽きぬ、思い出の映画である。最も敬愛し、最高の友人でもあった相米慎二のすごさを、再び体感してほしい。

笑福亭鶴瓶(「お引越し」木目米先生、「夏の庭 The Friends」葬儀屋役)相米監督には「東京上空いらっしゃいませ」からずっと出演させてもらったのですが、その時は別に何とも思わなかったですね。ただウマが合って、僕と相米監督と安田プロデューサーと中井貴一で“あほの会″というのを作って月に一回ご飯食べに行ったりしてましたね。いま番組でいろいろな監督と出会う機会が多いのですが、“相米さんはどうやった″とずっと聞きはるんですよね。若い監督が相米慎二の事を神さんみたいに尊敬しててそんな監督の作品にずっと出してもうてた僕までもがなんかうらやましがられて...。改めてすごい人やったんやなと実感してます。ただ人間的にはむちゃくちゃですよ。それでも人に好かれていて不思議な人ですね。あの偉大さを今ようやくわかったというか、ただの友達と思ってましたがすばらしい監督ですね。

戸田菜穂(「夏の庭 The Friends」近藤夏子先生役)私の映画デビュー作は、相米慎二監督の「夏の庭 The Friends」で、三國連太郎さん淡島千景さんの孫の役だったと話す時、とてもとても誇らしい気持ちになります。「わあ、虹きれい」このセリフ、何度やってもオッケーがもらえず、「ダメ」「ダメ」「違う」と言われ続けました。静まり返る現場で独りぼっち、頼れるのは自分しかいない。これがプロの厳しさだと教わりました。本当に虹がきれいだと思ってセリフが言えるまで、延々と繰り返されたこの尊い経験がいつも私の根底にあります。あの夏の神戸、小さな家、庭、コスモス。今はもう会えない相米監督。。。あの少年たちはいくつになったのかなあ。あの夏に行ける! もう1度映画館で! 試写室から出てきた相米監督の目には光るものがあり、それはとても優しい目でした。

◆「お引越し」京都に住む、明るく元気な小学6年生、レンコ。父ケンイチが家を出て、母ナズナとの二人暮らしが始まった。ナズナは新生活のための規則を作

るが、変わっていこうとするナズナの気持ちがわからない。レンコは、離婚届を隠したり、自宅で籠城作戦を決行したり、果てにはかつて家族で訪れ

た琵琶湖への小旅行を勝手に手配する…。

◆「夏の庭 The friends」木山、河辺、山下の小6トリオは、祖母の葬式に出席した山下の話を聞き、「死」に興味を持ちはじめる。近所に住む1人暮らしのおじいさんがもうすぐ死にそうだ、と聞きつけた3人は、家を張り込むことに。はじめは少年たちを追い返そうとしたおじいさんも、次第に彼らを受け入れ始める。そんなとき、ひとりぼっちのおじいさんのために、3人はある計画を思いつく…。

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