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建築家・映画評論家の渡辺武信さん虚血性心疾患で死去、86歳 詩人として松本隆氏に影響も

日刊スポーツ 2024年9月10日 3時0分

建築家・映画評論家・詩人の渡辺武信(わたなべ・たけのぶ)さんが8日、虚血性心疾患のため都内で亡くなったことが9日、分かった。86歳だった。通夜は13日午後6時から、葬儀・告別式は14日午前11時から、東京都中野区中央2の33の3、宝仙寺 大師堂。喪主は妻葉子(ようこ)さん。

渡辺さんは、日刊スポーツ映画大賞の選考委員を1988年(昭63)の設立時から務めてきた。選考会に向けて精力的に都内の各劇場を回り、映画を鑑賞していた23年10月、自宅で転倒し、大腿(だいたい)骨脛骨(けいこつ)を骨折。入院し、手術を受けた中、同11月に都内で開催の選考会には投票で参加した。リハビリをへて回復した今年は、8月下旬に夫婦で毎年、参加するのが恒例だった、大分・湯布院映画祭にも参加するなど元気だったという。そうした中での、突然の死だった。

渡辺さんは1938年(昭13)1月10日、横浜市に生まれ。東京教育大(現筑波大)付属高から東大工学部建築学科に進学し、同大在学中の58年に天沢退二郎、内田弘保、大西広、江頭正己の各氏と「赤門詩人」を創刊。60年に「暴走」、61年には「×(バッテン)」を、それぞれ創刊し、63年には両誌が合流した「凶区」を創刊。日本語ロックの先駆けとなったバンド「はっぴいえんど」の元ドラマーで、日本を代表する作詞家となった、松本隆氏(75)も渡辺さんの詩に大きな影響を受け、07年刊行の「続・渡辺武信詩集」(現代詩文庫)に解説を寄せている

映画評論においては、石原裕次郎さん、赤木圭一郎さん、小林旭を軸としたアクション映画をはじめとした、日活映画研究の第一人者として広く知られている。81年には「日活アクションの華麗な世界」(未来社)を出版。特に、裕次郎さんへの造詣が深いことが、日刊スポーツ映画大賞選考委員就任の決め手となった。大手映画会社の大作はもちろん、中堅から単館系の小規模作品まで幅広く鑑賞した上での、舌鋒(ぜっぽう)鋭いトークで選考会を沸かせた。

建築の分野においては、69年に単位取得満期退学した東大大学院工学系研究科建築学専攻博士課程在籍中から「渡辺武信設計室」を開設。83年の著書「住まい方の思想 私の場をいかにつくるか」(中公新書)に代表されるように、人が心地よく暮らす空間作りにこだわり、個人住宅や老人福祉施設などに強い関心を持ち、設計に取り組んだ。日本建築家協会住宅部会賞には、その名を冠した「渡辺武信賞」も設置した。多彩な才能を発揮し、昭和、平成、令和を駆け抜けた。

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