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長塚京三「敵」で映画12年ぶり主演、河合優実と初共演、黒沢あすかと78歳で入浴シーン

日刊スポーツ 2024年9月14日 10時0分

長塚京三(79)が、作家・筒井康隆氏(89)の小説を映画化した「敵」(25年1月17日公開)に主演することが13日、分かった。

映画の主演は、13年公開の「ひまわり~沖縄は忘れない あの日の空を~」以来、12年ぶり。脚本も手がけた吉田大八監督(60)がモノクロで描ききった劇中で、妻に先立たれた77歳の元大学教授を演じた。

撮影時は78歳だったが、妻を演じる黒沢あすか(52)との入浴シーンにも挑んでいるといい、話題作への出演が相次いで大ブレーク中の河合優実(23)との初共演も実現した。

長塚は劇中で、妻に先立たれた77歳の元大学教授・渡辺儀助を演じる。朝起きる時間、食事、衣類、使う文房具1つに至るまで丹念に扱い、預貯金の残高と生活費があと何年持つかを計算し、自分の寿命を知るなど一見、自己管理を徹底した生活を送っているように見える。一方で、時には晩酌を楽しみ、昔の教え子に淡い恋愛感情を抱くような、格好の悪い人間らしさもある役どころだ。そんな穏やかな老後を過ごす儀助の元にある日「敵」が現れる。儀助は穏やかな生活を望んでいたのだろうか、それとも、どこかで敵の訪れを待っていたのではないだろうか…果たして敵は一体何なのかなど、考察の沼にハマる作品となりそうだ。

94年のサントリー「ウイスキーオールド」のCMに起用されたことを期に「理想の上司」のキャラクターを確立した長塚だが、今作では、人生の最期に向かって生きる人間の恐怖と喜び、おかしみを同時に表現する。「僕の最後の、いや最後から2番目あたりの映画として受けさせていただきます。かなりの強行軍は承知ですが、共演者、スタッフの皆さんが、最後まで味方でいてくれることを信じて。『てき』、いいタイトルです」と語った。

映画がモノクロになったことについて、長塚は「後からモノクロと聞いたから驚いたけど、仕上がりはすてきだった」と手応えを口にした。亡くなってなお、儀助の心中に幻想的に現れ、支配する妻・信子を演じた黒沢は「台本を手にしたとき、長塚さん演じる儀助との浴室シーンに、年齢を重ねてきたからこそ醸し出せる味わい深さを大切にしたいと思いました」と振り返った。

儀助が淡い恋愛感情を抱く、清らかに清楚(せいそ)で妖艶な魅力をもつ大学の教え子・鷹司靖子を瀧内公美(34)が演じる。長塚との共演は初だが「言葉では言い尽くせないほど京三さんに魅了され、クランクアップの前日、明日でしばらくはお会いできないのかと思うとお風呂の中で涙が出たほどです」と振り返った。

河合は、バーで出会い儀助を翻弄(ほんろう)する謎めいた大学生・菅井歩美を演じる。「短い時間ではありましたが、おそらくどの時代に読んでもどうにも魅惑的なこの物語のもと、未知なるものに顔を合わせ、考えてみる機会をもらいました」と出演した印象を語った。河合のほか松尾諭(48)松尾貴史(64)カトウシンスケ(43)中島歩(35)らが出演する。

主要キャスト、吉田監督、筒井氏はコメントを発表した。

長塚京三(渡辺儀助役)

タイトルは、原作である筒井康隆先生の小説の表題をいただくと聞きました。吉田監督のシナリオは、おおむね原作に準じるものだとも。両者とも大変興味深く読ませていただいて、なんだろうこの主人公は、ほぼ監督そのままじゃないか、と思えてなりませんでした。ご自分でおやりになればいいのに、とさえ。難はただ1つ、「ちょっとばかり歳が足りないか!」。まだやり直しのきく年齢での「絶望」は、全く絶望とはいえませんからね。冗談はさて置き、老耄に押しまくられて記憶が混濁し、授けを求めようにも、人も、物たちさえも、いつの間にか手のひらを反したように敵側に回っていて、恐らくは粗略でもあり、傲慢(ごうまん)でもあったろう主人公の、かつてのあしらいに、幾星霜かを経て、なお復讐(ふくしゅう)するかのようだ。「この逆境、老残零落のシラノ(ド・ベルジュラック)だったらどうするだろう?」などと考えてみたら面白そうである。

瀧内公美(鷹司靖子役)

いつかご一緒させてもらいたいと願っていた吉田大八組。大八さんの現場はとても不思議な空気感で、どの表現が良いのだろうかと試行錯誤しながら撮影を進めていましたが、なんだかほっこりしていてとても居心地が良い現場でした。とても不思議な面白い作品に仕上がっていると思います。わたしも今から「吉田大八ワールド」が楽しみです。

黒沢あすか(渡辺信子役)

大八監督が長年温めてきた、筒井康隆さん原作の「敵」。その映画化にあたり監督が手がけた台本は、世間擦れしていない儀助の品性とノスタルジックな雰囲気が絶妙に融合し、夢か幻か、あるいはSFかと思わせる独特の世界観を感じました。出演者としてその一端を担えたことを光栄に思います。

河合優実(菅井歩美役)

菅井歩美を演じました、河合優実です。初めてご一緒させていただいた吉田大八監督の、この「敵」という作品への思い入れにまず刺激を受けたことを思い出します。このような作り手の熱がたしかにこもった映画に力を添えられるのはとてもうれしいことです。

吉田大八監督

何十年も前に小説を読み終えた時から「敵って何?」という問いが頭を離れず、とうとう映画までつくることになりました。筒井先生の作品を血肉として育った自分にとってそれはかつてないほど楽しく苦しい作業の連続でしたが、旅の途中で長塚京三さんをはじめとする素晴らしい俳優たち、頼もしいスタッフたちと出会えてようやく観客の皆さんが待つ目的地が見えてきた気がします。自分自身、この先こういう映画は二度とつくれないと確信できるような映画になりました。僕は幸せです。

筒井康隆氏

すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた。登場人物の鷹司靖子、菅井歩美、妻・信子の女性三人がよく描き分けられている。よくぞモノクロでやってくれた。

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