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「ジョーカー」続編はなんとミュージカルシーン盛りだくさん 今回も悲しき犯罪者に泣かされる

日刊スポーツ 2024年10月14日 7時0分

DCコミックの悪役を、ひたすら人間くさく描いた「ジョーカー」(19年)は、賛否を呼びながらR指定としては異例の興行収入10億ドル超えのヒットとなった。

ヒーローのバットマンも登場しない「シン・ジョーカー」とも言えるこの作品が、ここまで成功を収めるとは監督トッド・ウィリアムズ、主演ホアキン・フェニックスのコンビも想像しなかっただろう。

コロナ禍をはさんだ続編「ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」(11日公開)は、同じ世界観のもとで、なんとミュージカルシーンを随所に織り込んでいる。トッド=ホアキンコンビは、今回も「こう来るか」という驚きで作品世界に引きずり込む。

前作から2年後。5人殺害の罪に問われたジョーカーことアーサー(フェニックス)は、閉鎖病棟に収用されている。そこで出会った謎の女リー(レディー・ガガ)は、「カリスマ犯罪者」である彼の熱烈な信奉者だ。心神喪失で無罪を勝ち取ろうとしている女性弁護士(キャサリン・キーナー)の心配をよそに、アーサーとリーの間で起きた「化学反応」は、しだいに狂乱を巻き起こしていく。

恋愛感情に目覚め「生まれて初めて、オレは1人じゃないとと思った」と生気を取り戻すジョーカーはますます人間くさい。弁護士主導の法廷は、前作の「シン-」の匂いを引き継いでリアルに進行する。

一方で、「バンド・ワゴン」(53年)の「ザッツ・エンターテインメント」を始め、往年の名作のカバー曲を中心としたミュージカルシーンがこれに絡む。夢を歌う映画全盛期の曲調が不思議なほど作品世界にマッチする。その歌詞がまるでジョーカーの思いを代弁しているように聞こえてくる。

レディー・ガガは、歌と踊りの幅広な表現力を存分に発揮している。一方で、「アリー スター誕生」「ハウス・オブ・グッチ」と進んで映画出演してきた「役者心」を今回も感じさせる。ジョーカーを信奉しながら、どこか覚めているリーの独特なキャラに説得力がある。前作に続いてヒリヒリするようなジョーカー像でぐんぐん前に出る名優フェニックスとしっかりつり合う好演だ。

それにしても、初めての恋にうぶに揺れまくるジョーカー。悲しき犯罪者に今回も泣かされた。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)

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