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節目の年のアリス あなたの知らない広瀬アリス…全領域広がる役柄「どんと来い」

日刊スポーツ 2024年10月13日 8時0分

広瀬アリス(29)の多彩な引き出しに魅了される秋になりそうだ。放送中のフジテレビ系「全領域異常解決室」(毎週水曜午後10時)で不可解な異常事件の解決に奔走する警察官・雨野小夢を演じている。コメディエンヌとしての印象を強め、世代トップ俳優の一角となった20代。30代への端境期の今、役者として思うことを聞いた。【望月千草】

★多彩引き出し

取材部屋で広瀬の到着を待っていると、ドアの向こうから高く弾むような笑い声が聞こえてきた。見えなくても、中心に誰がいるのかはすぐに想像できた。

気取らず、飾らない。今作の作風にかけて身近で起きた“ミステリー”を問うと、遠慮がちに「すっごい小さい話なんですけど…」と口を開いた。「最近洗面所にG(ゴキブリ)が出ました。引き出しを開けた瞬間に出てきて、『ギャーッ』って扉を閉めました。それ以来、その扉を開けていません」と頭を抱えた。手首をしならせ「扉の奥の方に、Gを倒すやつをポーンって(投げ)入れました」。神妙な表情かと思えば、数秒後には豪快に笑う。周囲も釣られる。その場を軽やかに陽気に包むのは、誰もができることではない。

「全領域-」は、神隠しやシャドーマンを思わせる“不可解な異常事件”に挑んでいく物語。演じる雨野小夢はオカルト否定派だが、広瀬は「日常にないものが好き」。学生時代、“不思議なこと”にまつわる本を図書室で読みふけったことも。だからこそ、作風にひかれる。「作中の会話も全部面白い。『シャドーマンかも知れませんね』『え?』っていうやりとりだったり、『UMA』とか未確認生物の話を真剣にしていてシュールです」。藤原竜也(42)演じる超常現象のスペシャリスト興玉雅とバディを組み「大いに振り回されたいですし、その後ろを必死について行きたいです」という。

デビュー17年目。苦楽を乗り越え「お芝居が楽しい」とかみしめる。17年NHK連続テレビ小説「わろてんか」での女漫才師役が好評を博し、コメディエンヌのイメージが定着した。ただ、近年はそれとは異なる作風への出演も続く。WOWOWのリーガル・ミステリー「完全無罪」では弁護士、フジテレビ系「366日」では悲劇に直面しながらも愛する人を思い続けるヒロインを演じた。意識的にかじを切ったわけではないという。ただ「この年になってやれる役の幅がめちゃめちゃ広まって、いろんな役に挑戦したいなと思っています」と明かす。「もちろんコメディーを強みとしているんですけど、『こういう広瀬もいるんだよ~』っていうのは、やっぱり今年30歳になるのでどんどん広げたいです。引き出しは『質より数』と思っています。それがいつか質に変わる瞬間は来る。『できないことはないっしょ!』っていうマインドなので(笑い)」。

モットーは「やるんだったら楽しく」そして「よく寝る」。幼い頃から「ゲラゲラ笑っている」記憶ばかり。「楽しいお仕事なんて圧倒的に少ないですし、ドラマの撮影も『せりふが大変だな』『昨日遅かったら寝れてないな』とか、楽な撮影なんてない。だから『やるんだったら楽しい方が良くない?』って思います」。デビューした10代の頃から軸は変わらない。

★12月で30歳に

12月で30歳。変化していく年齢は後ろ盾だ。一般論では、年齢が上がることをネガティブに捉えがちな女性は多い。だが、年を重ねることに、大きな抵抗はないという。「同世代の方で仕事をバーッとやっていた方がちょっと落ち着いてプライベートや休みを大事にしたり、同世代の女優さんも地元の友達も結婚や妊娠がすごい増えて、『そっかそんな年齢なのか』って思いました。この年齢だったら、結婚していても違和感がないよねっていう年齢になっちゃったんだなとは思います」と自身に重ねた。「私、母が29歳の時に生まれた子どもなんです。(自分と同じ)この年で私を産んでいるってことは、親の役をやっても違和感がない。ってことは『いろんな役が来るね! ラッキー!』と思ってます。何でも、どんとこいです」といたって前向き。何事も芸の肥やし。懐深く構えている。

★お芝居が好き

ただ、思っていた“大人の女性”と今の自分は少し違うようだ。「(想像は)トレンチコートを着て、さっそうと高いヒールで表参道を歩く。だったんですけど、この前ビーサンで歩いていました(笑い)」と机に顔をうずめて笑う。遠い存在のように映る人気俳優だが、口にする言葉は等身大。おこがましいが、どこか親近感を覚えてしまう。「20代から30代に変わるって、純粋に大人だなとは思います。でも、あらがったところで変わらないからなぁ…みたいに思っちゃう。自分が楽しいと思う人生を生き続けたいです」。

「楽しいと思う人生」とは何だろうか。問いかけには即答した。「好きなことだけをしていたいですね。今はやっぱりお芝居がすごく好き。(座長として)自分が引っ張る立場にもなった。責任感を持つことはすごく良い経験ですし、成功したこともあれば失敗したこともある。でも、好きだからやり続けているんだと思います。終わった後に『やっぱ楽しかったな』って思うことができるように日々お芝居をしています」。背伸びはしない。自分の気持ちには素直で居続ける。「『私はこうだ!』って決め付けないで生きています。他に興味が持てることがいつか見つかったら、そっちに目を向けていくのもアリかな? とか思ったり」。“そっち”とは、芸能界以外のジャンルでも。「何でも。何でもです。そのくらい余白を持っていた方が気が楽になると思うので、必ず持っておこうって決めています」。明るく前向きなだけではない。冷静に地に足を着け、現在地を見つめる、凜(りん)とした大人な女性の横顔が見えた。

▼「全領域異常解決室」大野公紀プロデューサー

今回広瀬さんにオファーした理由は、彼女の持つ共感性だったり、飾らない自然体の魅力がこの役柄に必要だと思ったからです。コメディーも繊細な演技もとてもお上手。今回の役の根幹になると思っていたので、だいぶ前から広瀬さんに演じて欲しいと思っていました。29歳女性の広瀬さんが等身大で演じていただけるようなキャラクターにしたいなと考えているので、視聴者の方には今まで見たことのないような広瀬さんを期待していただけたらと思います。

◆広瀬アリス(ひろせ・ありす)

1994年(平6)12月11日、静岡県生まれ。08年NHK「ファイブ」で女優デビュー。09年「ミスセブンティーン」に選出され、15年まで雑誌「Seventeen」の専属モデルを務めた。主な出演作にNHK連続テレビ小説「わろてんか」フジテレビ系「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」シリーズなど。23年NHK「どうする家康」で大河ドラマ初出演。24年フジ系「366日」で月9初主演。165センチ。血液型AB。

◆全領域異常解決室

身近な現代事件×人々の常識を超えた“不可解な異常事件”を「全領域異常解決室」(通称・全決=ゼンケツ)という世界最古の捜査機関が解決していく本格ミステリー。脚本は黒岩勉氏。

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