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「室井慎次」亀山P立ち上げた27年前、ここまで「想像せず」も「踊る大捜査線」で人生変えられた

日刊スポーツ 2024年10月30日 18時40分

映画「室井慎次 生き続ける者」(本広克行監督、11月15日公開、未完成版)マスコミ試写会が30日、都内の東宝本社で開かれた。試写後、BSフジ社長の亀山千広プロデューサー(68)とフジテレビドラマ・映画制作局の臼井裕詞局長(57)が登壇し「緊急特別捜査会議」マスコミ記者会見が開催された。

1997年(平9)1月期に全11話、放送された連続ドラマ「踊る大捜査線」からシリーズを作り上げてきた亀山氏は、葉敏郎(63)演じた警察庁長官官房審議官・室井慎次を描いた続編を、27年前に想定していたか? と聞かれ「全く、想像していない」と即答。「ここまで作ると想像してなかった」とした上で、同シリーズを「節目節目で人生を変えられた」存在だと位置付けた。

10月11日から公開された前編「室井慎次 敗れざる者」と「-生き続ける者」は、12年9月公開の「-THE FINAL」から12年ぶりの「踊る」シリーズの新作となる。物語は、27年前に湾岸署の刑事・青島俊作とかわした約束を果たせなかったことを悔やみ、職を辞して故郷の秋田に帰京した室井を描く。捜査し、次々と犯人を逮捕してきたものの、その過程で見過ごしてきた事件の被害者、加害者家族を支援したいという思いから、そうした子供たちと穏やかに暮らす、血縁がないながらも、家族になっていく室井と子どもたちを描いた。

亀山氏は、映画最終章と銘打たれた「-THE FINAL」で製作を務めた当時、フジテレビ常務取締役だった。同年9月7日に都内で行われた初日舞台あいさつ後、取材陣から「(目標は興収)3ケタ?」と聞かれると、「目指したいです。しばらく出てないんで、チャンスがあれば。経験している数字ですが」と語っていた。そのことを踏まえ、質疑応答で「12年前の『-THE FINAL』公開時…もっと言えば97年の連ドラ放送時に、枯れていく室井慎次を描くことを想定、想像していたか?」と質問が出た。亀山氏は「12年前に全く想像してないし、27年前に、ここまで『踊る』を作るとも想像してない」と即答した。

その上で、隣に立つ臼井氏に視線を送り「3とFINALの時点で、私は臼井さんの立場になっていた。若い人間に渡して引き継げば良いと思っていた」と後進にシリーズを委ねる考えがあったと振り返った。一方で「若いプロデューサーには、荷が重いプロジェクトになってしまった」と「踊る」シリーズがフジテレビを代表するIP(知的財産)になったことが、引き継げなかった大きな要因だと示唆した。

「室井慎次」は、シリーズを代表する脚本家で「容疑者 室井慎次」では監督も務めた君塚良一氏(66)が23年12月、亀山氏に「室井を書きたい。本広監督と3人で仕事ができないか」とメールを送ってきたのが全ての始まりとなった。君塚氏が室井慎次を主人公にした物語を作りたかった歳大の理由は、室井を演じた柳葉敏郎(63)が、室井という役を大事にするあまり、刑事、黒いスーツ、オールバック、反社会勢力の役のオファーがきても、全て断っており「、柳葉さんを室井から解放したかった」という思いからだった。

臼井氏は「人生の中でも宝ものだと。自分が背負いきれるのであろうと。今の自分には荷が重い、大事にしたいんだ」と、柳葉がオファーした当初は固持したと明かした。亀山氏は「まず会ってみませんかと話した。『室井に決着をつけましょう』『人生の節目を付けた方が良い』と。必要なことと思ってくれた」と柳葉を口説き落とした経緯を説明した。

当初は出演を固持した柳葉も、君塚氏のメールを撮影現場で読んだ際「約3分、絶句し涙した」と感激していたという。亀山氏は「僕も、この年齢…僕はまだ働かされているけど、室井は60歳で組織を辞めている。気付いたらその年齢。(そういう状況が自分の製作意欲に)火を付けたのかな」と続けた。一方で「一昨年12月まで映画を作ると思わない。映画は過去のことだった」と、君塚氏からメールが来るまでは映画を作る考えがなかったとも明かし「当たったことで、管理職になって映画を作れなくなった」とも語った。

「踊る大捜査線」は、98年10月に映画第1弾「-THE MOVIE」が公開され、興収101億円と大ヒット。03年7月には、公開から20年たった今もさん然と輝く、邦画実写映画歴代最高興収173億5000万円を記録した「-2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が公開。10年7月公開の「-3 ヤツらを解放せよ!」は興収73億1000万円、12年9月公開の「-THE FINAL」は同59億7000万円を、スピンオフ映画として、05年5月に公開された「交渉人 真下正義」も興収42億円を記録。公開した映画シリーズ6本の累計興行収入は、487億円、累計動員数3598万人を超えた、一大刑事シリーズとなった。

亀山氏は「あまりにデカい船になって(映画のタイトルに)『-FINAL』とつけたら、社長になった」と「-FINAL」公開翌年の13年にフジテレビ社長に昇格したことに触れた。さらに「4年でクビになりBSフジへ…BSも面白いんだけど、節目節目で人生を変えられた」と、17年からBSフジで社長を務める現状を説明した。

亀山氏は、ドラマ立ち上げからフジテレビ社長、BSフジ社長を歴任する中で「僕はドラマから離れて、しばらくたつ。みんな現役でやっている方を前に、僕が通用するか分からなかった」と、新作の製作にあたり、不安があったと吐露。「監督との話の中で『お前、幾つになった? そろそろ、こういう映画、撮らなきゃならんだろう。ずっと側にいるから』と言ったら、プロデューサーになった。映画作りの面白さ、難しさが勉強になった」と口にした。そうした自身の歩みを重ねたのか「だから、室井の人生が分かる」と、かみしめるように口にした。【村上幸将】

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