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長塚京三「敵」東京国際映画祭で男優賞受賞も「撮るので、精いっぱい…こういう事態になるとは」

日刊スポーツ 2024年11月6日 20時29分

<第37回東京国際映画祭クロージングセレモニー>◇6日◇TOHOシネマズ日比谷

コンペティション部門に出品された映画「敵」(25年1月17日公開)主演の長塚京三(79)が、最優秀男優賞を受賞した。「敵」は東京グランプリ/東京都知事賞と、吉田大八監督(61)の監督賞を含め3冠を獲得。邦画の3冠制覇は、2005年(平17)の、根岸吉太郎監督(74)佐藤浩市(63)主演の「雪に願うこと」以来19年ぶり。邦画の最高賞受賞、日本人俳優の最優秀男優賞受賞も、19年ぶりの快挙となる。

長塚はクロージングセレモニー後、受賞者会見に臨んだ。1974年(昭49)にフランス映画「パリの中国人」でデビューして、今年で俳優人生50年を迎えた中、初の国際映画祭男優賞受賞は想像していたかと聞かれ「全然、こういう事態になるとは想像もつきませんでした」と口にした。

その思いの裏には「撮るので、精いっぱい…出ずっぱりみたいなので」と撮影、作品作りに必死だったという実情もあった。「ロケは、お家を借りてやったんですけど、僕の家から遠く、朝から行って、終わって帰ると遅い。そこを何とかしなきゃなぁ」と口にした。「毎日、1日を終えるので精いっぱい。先のことなど、考えられなかった。家族…私の場合、妻のサポートがあって、食べるものを、しっかり食べ、寝る時間を確保してもらった」と妻に感謝した。その上で「大変な肉体労働を終えたような気持ちで、さわやかなんですけど、映画祭に呼ばれ、賞をいただけるなんて、考えてもいませんでした」と続けた。

海外のメディアからは、早大文学部演劇科を中退しパリ大(ソルボンヌ)に留学した中で「パリの中国人」に出演し、スタートしたキャリアに質問が及んだ。長塚は「僕は、ひょんなことから俳優になった。フラフラしていたら『俳優をやってみないか?』と言われ、この世界に入った。フランスで映画をやらせてもらって、1つの経験として違う職業をやろうと思ったら日本に帰って、再燃して…こんな役がある、と」と、自らのキャリアを振り返った。

その上で「どこからキャリアが始まったかは、難しいんだけど。フランスで学生時代に映画に出て…と1つの、僕の宣伝の売り文句として掲げないと…それが50年たっても付きまとっている」と言い、笑った。劇中で、妻に先立たれた77歳の元大学教授・渡辺儀助を演じたことも踏まえ「フランス語の教授とか、フランスに住んでいる人間とか(フランスと)縁が切れなくなった。それは、しょうがない。諦めました」とも語った。

吉田監督は「僕がお願いしたことは、あまり関係ない。ひと言くらいのせりふで、設定するのは、あり得ない。でも、映画にとっては、良い偶然を頂いた」と、長塚がフランス語が堪能なことと、キャスティングは関係がないことを強調した。

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