2014年(平26)11月10日に83歳で亡くなった映画俳優・高倉健さん出演映画の特集上映「没後10年 高倉健特集 銀幕での再会」が7日、東京・丸の内TOEIでスタートした。この日は、1981年(昭56)の映画「駅 STATION」(降旗康男監督)の上映後、同作の撮影を手がけた木村大作監督(85)が、高倉さんとの思い出と秘話を明かした。同監督は高倉さんと、1977年(昭52)の主演映画「八甲田山」(森谷司郎監督)で撮影を担当し、出会った。
高倉さんは「駅 STATION」で、オリンピック(五輪)の射撃選手で警察官の三上英次を演じた。木村監督は「健さんの映画を見たら、分かると思うけれど…セリフをほとんど言っていませんよ」と振り返った。「駅 STATION」の脚本は、台本の改変を嫌うことで知られる倉本聰氏(89)が手がけたが、高倉さんは台本を読んで「僕、こんなことは言いません」と言ったという。その一言で、台本のせりふがカットされることも少なくなかったという。
木村監督は「健さんは、そんなこと言わなくても自分は表現できていると思っていただろうし、実際、表現できていた。すごい俳優」だとたたえた。「演じているのは三上英次だけど、俺に言わせれば高倉英次だよ!」と声を大に訴えた。その上で「演技する力が、うまいという人はいっぱいいるけれど、健さんは、いつも、どのシーンも感情でやっているね」と評した。そして「後ろ姿が全ての人生を表現する。好んで撮っていた」と熱っぽく語った。
高倉さんは、15年の公開を目指し、新作映画「風に吹かれて」の製作を進め、14年6月に木村監督に撮影を依頼していたという。ロケハンに向かおうとしていたが、その中、高倉さんから「初めて検査入院した。すぐ、帰ってくるから、ちょっとだけ待ってくれ」と連絡があったが半年後、亡くなった。
木村監督は「高倉健と黒澤明監督は、自分の映画人生において、神。俺の人生を決定付けた…それは神だよね」と力を込めた。そして「90歳まで、あと5年。どう見ても元気だ。どうして日本の映画界は、木村大作に新しい仕事をよこさないんだ!!」と、18年「散り椿」以来の監督作の製作に意欲を見せた。【村上幸将】