今年7月の東京都知事選に無所属で立候補し、15万票あまりを獲得したAIエンジニアの安野貴博氏(33)は24日、NHK「日曜討論」(日曜午前9時)に出演し、SNSの選挙に対する影響力について「今年は転換点だと思っている。明らかに強くなっている」と指摘した。
この日の同番組のテーマは「選挙とSNS」で、それぞれの専門家が出演し、意見を述べた。安野氏も出馬した都知事選での石丸伸二氏の台頭や、10月の衆院選での国民民主党の大躍進、さらに11月17日に投開票された兵庫県知事選での斎藤元彦知事の勝利にも、SNSの後押しがあったことが指摘されている。一方で、SNS上の情報には偽情報なども確認され、有権者側の情報の見極め方も問われる局面となっている。
安野氏は、SNSの影響力をどう考えるか問われ、自身が都知事選でSNSを駆使した背景に触れ「私の場合は、既存メディアに一切取り上げてもらえなかった中で、SNSを主体として発信した。その結果の15万票は、SNSなしではなしえなかったように思う」と振り返った。
その上で「今年は転換点だと思っている。明らかに影響力は強くなっている」と指摘。「選挙のやり方として『地上戦』『空中戦』があるが、これまでは街頭演説や既存メディア対応をメインでやって、余った時間でネットの対応をやりましょうと語られてきたが、(最近は)むしろネットにもっと多くの時間や知恵を絞らないといけなくなってきたと思う」と、自身の体験をまじえながら語った。
SNSは「有権者とコミュニケーションをとるのに、有効な媒体。私の場合は自分の考えを一方的に伝えるのではなく、有権者のみなさまが何を考えているのかを聞くということに使えると思っていた」と表現した。安野氏は都知事選で「AIあんの」を使い、ユーザーのコメントや質問に答えたりする試みも行い、話題になった。
安野氏はまた「既存メディアはファクトチェックもしっかりされていて、ネットではあいまいな情報やフェイクニュースが流れているといわれるが、ネットにも候補者討論会をやったり、候補者に何時間も話を聞くメディアもある。これはある種の1次情報だ」と主張。「そういうメディアとフェイクニュースを流しているメディアを十把ひとからげに語るのは、違うと思う」とも口にした。