中大法科大学院教授で弁護士の野村修也氏(62)が26日、X(旧ツイッター)を更新。兵庫県知事選で再選されたばかりの斎藤元彦知事(47)に「公職選挙法違反疑惑」が浮上している問題について言及した。
「斎藤知事のPR会社社長への支払問題について。選挙前の立候補準備行為(立候補のための情勢分析やポスター・ウエブ等といった公選法上使用が認められている文書図画の事前制作など)に対価を支払うことは適法」とした上で「支払われた70万円は立候補準備行為の対価として常識的な金額なので、選挙期間中の選挙運動の対価を先払いしていたとは認定できず、運動員に対する買収問題は生じない」との見解を示した。
そして「理論上は、事前収賄(当選した暁に仕事を発注する等の約束の下で、無償の役務提供が行われていた事案)が成立する余地はあるが、これまでに出てきている事実関係からそれを疑うのは、悪意に満ちた臆測の域を出ないだろう」とつづった。
それでも残る問題について2つ提示した。「残る問題は、無償の役務提供(ボランティア)が(1)公選法199条1項で禁じられている請負業者等の寄附に該当するかという問題と、(2)政治資金規正法21条1項で禁じられている公職の候補者に対する『会社の』寄付に該当するかという問題」と投げかけた。
そして「<1>については、選挙期間中に、本件PR会社や社長個人が兵庫県と『請負その他特別の利益を伴う契約』を結んでいたかが問題となる」とした上で「過去に結んでいたかどうかは関係ない。仮に社長個人が選挙期間中も兵庫県の審議会委員に就任していたとしても、これは委任契約であって請負契約ではなく、また、報酬は日当1万2500円とのことなので、交通費や会議日や事前説明等の時間に本業を離れることの機会損失を考えると『特別の利益を伴う契約』とは言えないだろう。したがって、争点は、選挙期間中に、PR会社が兵庫県の請負業者だったか否かと、今回の選挙で行われていたボランティア活動が『会社による寄附』と認定されるか否かの2点に絞られることになる」とした。
さらに「<2>についても、今回の選挙で行われていたボランティア活動が『会社による寄附』と認定されるかどうかによって結論が変わってくる」とした上で「TVでは、いろいろな臆測が飛び交っているようだが、論点はかなり絞られているのだから、過大な攻撃も過少な評価も回避しながら、事実に即して冷静に議論することが肝要だと思う」とつづった。
公職選挙法の現状についても触れた。「なお、蛇足ながら付言しておく。今回の件で明らかになっているように、公職選挙法の規制はネット時代の選挙運動に即しておらず、時代遅れと言わざるを得ない。お金持ちだけが優秀なネットPR業者を雇えるのは問題だとしても、選挙期間中のウエブ活動の支援を全て無償にするのはどうかと思う。車上運動員(いわゆるウグイス嬢)と同様の規制を検討すべき時期に来ているのではないだろうか」と問題提起した。
野村氏は日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」(月~金曜午後1時55分)にコメンテーターとして出演している。