中村勘九郎(43)中村七之助(41)が12日、都内で、「猿若祭二月大歌舞伎」(来年2月2~25日、東京・歌舞伎座)の取材会を行った。「猿若祭」は、1624年(寛永元)に、初代猿若(中村)勘三郎が江戸で初めて歌舞伎興行を創始したことを記念した興行。今回で6回目、2年連続での開催となり、勘九郎は「これをきっかけに定着して、2月は猿若祭という形で今後できればうれしく思います」と話した。
昼の部「きらら浮世伝」は、つたじゅうと呼ばれた蔦屋重三郎が主人公で、小さな商売から身を起こした出版人を描いた物語。88年に銀座セゾン劇場で、勘九郎、七之助の父で18代目中村勘三郎さんが重三郎を演じ初演された。今回が初の歌舞伎化となる。
勘九郎は「父が30代で演じた作品。いつかやりたいと思っていました。(25年のNHK)大河ドラマでやることを聞いてすごくうれしかったですし、このタイミングしかないと思い、今回挑戦いたします。抑圧された若い芸術家たちが爆発していた青春群像劇をお見せしたい」と話した。
蔦屋重三郎の魅力を聞かれ、「プロデュース能力、版元として優れ、クレイジーでありながら、反骨精神はわれら歌舞伎俳優とも共通している。常に闘っていて、父とかぶる部分はあります」とし、「僕も、悔しかったり、ちくしょうこんちくしょう、いつか見てろよという気持ちは常に持ち続けています。物を作り上げる人間としては共通しているんじゃないかなと思います。クリエーティブな部分、他人を見抜く力はこれからどんどん身に着けたい」と、自らに重ねた。
七之助は「父と食事をすると、毎回『きらら-』の話が出てきました。稽古が壮絶だったと100回くらい聞いてます。戦友たちと涙して、一生懸命努力して、1つの作品に向かう姿勢がうらやましいなと思っていました。志高くもって、常にアンテナを張って生きていくとすばらしい作品ができると、私も毎日思いながら過ごしています」と語った。
24年は勘三郎さん十三回忌の年で、追善興行や、ゆかりの演目の上演などを、1年を通して行ってきた。12月5日が命日で、法要も営まれたという。
勘九郎は「親族、いろいろな方々が来てくださいまして、法要ができて良かったです。でも僕、まだ実感ないんですよね。生きててもまだ60代ですからね」としみじみ。七之助も「年数を重ねていけばいくほど、近くなっています。2日に1回くらいは夢に出てきます。法要ってなかなか残酷で、亡くなったことを突きつけられている感覚でした。父のおかげで十三回忌の追善を乗り越えられたので、父がいたらこういうことを喜んでくれたなというのを常に考えて1年1年生きていこうかなと思います」と感慨を語った。
ほか、夜の部「人情噺文七元結」では、勘九郎、七之助ともに初役で、左官長兵衛と女房お兼をつとめる。