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【軍師に聞く】石丸伸二氏の都知事選手掛けた藤川晋之助氏 石丸氏に伝えた「王道」とは/1

日刊スポーツ 2024年12月24日 5時0分

7月の東京都知事選で約165万票を獲得し、3選された小池百合子知事(72)に敗れはしたが圧倒的な存在感をみせた石丸伸二・前広島県安芸高田市長(42)。その石丸氏の選挙戦を手掛けた「軍師」が、選挙プランナーの藤川晋之助氏(71)だ。SNSを駆使しながら支持を拡大する戦略は、その後に行われた他の選挙のモデルにもなった。長年選挙に携わり「選挙の神様」と言われる藤川氏に、「石丸現象」とSNS選挙の今後について聞いた。【中山知子】

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藤川氏が石丸氏の都知事選を手掛けたきっかけは、都知事選で石丸氏の後援会長を務めた「ドトールコーヒー」創業者の鳥羽博道氏からの依頼だった。最初は、不安もあったという。

藤川氏 「よし、分かりました」と言ってやったわけではないんです。最初は大丈夫かな?と思ってスタートしましたが、ネット選挙という大きな時代の節目の中で、あれだけの選挙になりました。政治の地殻変動が、ネットによって起きていくのではないか、という実感を初めて得たのです。それまでの選挙では、ネットを見ている若い世代の人が投票に行くの?と懐疑的に見ていましたが、結構な数の人が選挙に行ったことが投票行動にも現れました。これは、政治が大きく変わるきっかけになると感じました。

こうした流れを踏まえて、藤川氏は9月の自民党総裁選で、決選投票で石破茂首相に敗れた高市早苗氏の陣営にも関わった。

藤川氏 「石丸選挙」では、若い人たちが政治に参加するきっかけができました。高市さんについては、女性総理への期待という関心が高まることで、日本社会が変わるきっかけになるのではないかと思ったのです。(高市氏が決選投票に進んだことで)一定の効果はあったと思いますけれど、永田町の原理は変わっていませんね。

石丸氏躍進の一助となったSNS選挙は、兵庫県の斎藤元彦知事の知事選再選でも大きな推進力になったと指摘される。ただ、藤川さんは2人の選挙戦には違いがあったと分析する。

藤川氏 石丸さんの選挙で、僕らは意識して「ネット防衛隊」というものを作りました。石丸さんのことが好きなために相手候補を悪く言ったりするようなことが、ネットではどうしても起きてしまう。そのため、投稿内容をすべてチェックし、そういうことができるだけ起きないよう、100人ほどのネット部隊のうち20人くらいが一日中、(石丸氏に関する)すべての投稿内容をチェックしました。斎藤知事の場合はそれが十分ではなかったことで(真偽不明の情報が出回るなど)、ネット選挙の問題点があそこまで出てきたのではないでしょうか。

「石丸選挙」は、いわゆるオールドメディアと、(SNSという)ニューメディアがある意味、ハイブリッドになって成功した例だったと思います。都知事選では、小池都知事VS蓮舫さんという「2強」の構図をぶち壊さないと、石丸さんは浮かび上がらない。とにかく「3強」にしようと、新聞やテレビを巻き込みながら(支持の)数字を上げていった過程がありました。一方、斎藤さんは最初からオールドメディアにたたかれ、ニューメディアで「それはどういうことだろう」「そんなことはないんじゃないか」という流れが起きた中で、勝利した。あまり指摘されていないことですが、石丸さんの選挙と斎藤さんの選挙は、本質的に違うと思っています。

その石丸氏は11月、自身のユーチューブ番組で、来年の東京都議選に向けて新党を旗揚げする考えを表明した。藤川氏は約1カ月前、石丸氏と話をしたそうだ。

藤川氏 1カ月前くらいにこの事務所に来られて、「新党をそろそろやりたいと思います」と。ただ私は「選挙をやることと、新党をつくるのは根本的に違う」ことを伝えました。選挙は、2、3カ月、わーっとやれば結果が出ますが、新党は何年も積み重ねてやっていかないといけない。多くの人たちのリーダーとして責任がある仕事です。選挙に出る時みたいな気持ちでは前には進めないよ、覚悟がいるぞ、とは伝えました。石丸さんは「藤川さんが言うようなかつての政党のイメージとは違って、もっと軽やかなものにしたい」と、おっしゃっていました。

都知事選でも支えたスタッフが中心となり、「石丸新党」は設立に向けた準備が進んでいるようだ。

藤川氏 僕から見ると、都議会は伏魔殿。そこでチェック機能になり得る議員を送り出すことには、大きな意味があります。だから石丸さんの試みは成功してほしいと思います。

一方で、都知事選に落選した時から彼に言っているのは、「『王道』は、もう1回、都知事を目指す」ということです。石丸さんも「藤川さんの言われる『王道』の方に、結局は行くことになるんですよね」と、話していました。石丸さんに頑張ってもらわないと、都政が変わるきっかけがますますなくなってしまうと思っています。

(2「『選挙の神様』が考える、SNSと選挙」に続く)

◆藤川晋之助(ふじかわ・しんのすけ)1953年(昭28)10月31日生まれ。23歳で国会議員の秘書になり、政策担当秘書、政党の事務局長などを歴任。大阪市議も務めた。現在は「藤川選挙戦略研究所」代表理事として、政策立案や人材育成、さまざまな候補者の選挙戦略に携わる。ここまで携わった選挙は、130勝16敗と8割超の勝率。

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