藤井聡太王将(22)が4連覇へ、逆転勝ちの白星スタートを切った。13日、静岡県掛川市「掛川城 二の丸茶室」で行われた将棋の第74期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局で、挑戦者の永瀬拓矢九段(32)を112手で下した。12日からの2日制で始まった対局は、相掛かりで1筋から積極的に仕掛けた先手永瀬に押され気味のまま終盤にもつれ込んだ。倒れず粘った末、局面をひっくり返した。
◇ ◇ ◇
新年早々、見応えのある大熱戦でした。最後は、藤井王将が駒の効率を生かして勝ちをもぎ取った感じでした。この人らしいと思ったのは、4筋にあった金が端攻めに対応して3、2、1筋へと動いた後、2、3、4筋へと大移動して、最後は5筋で決め手になったところ。ほかの棋士ならまず考えません。指しにくいのですが、それを平然とやってのけるのが「藤井流」。
永瀬九段の攻めに対しては、ゆったりしながら辛抱して指していた気がします。攻勢になってからは香、桂、角といった飛び道具を絶妙の位置に配備して、永瀬陣をうまく攻略しました。
永瀬九段が採用した相掛かりからの積極的な仕掛けは、今後の参考になる可能性が十分あります。うまく手を作っていました。作戦としては成功しています。
残念だったのは、7筋に歩を打たれた後、馬で桂を先に取ったところ。守備の要を1枚はがされたうえに最も価値の低い歩と金を交換してしまったのが痛かったです。この後、少しずつ流れが傾いていった気がします。
シリーズは始まったばかりです。永瀬九段がどんな作戦を今後、用意してくるのか楽しみにしています。(加藤一二三・九段)