将棋の第83期順位戦B級2組8回戦、谷川浩司17世名人(62)対郷田真隆九段(53)戦が15日、大阪府高槻市の関西将棋会館で行われ、先手の谷川が115手で郷田を下し、史上3人目の通算1400勝を達成した。歴代1位は羽生善治九段の1577勝、2位は大山康晴15世名人の1433勝。阪神淡路大震災の発災から17日で30年。神戸市の自宅マンションで被災した谷川が節目の勝利を届けた。
移転したばかりの関西将棋会館の最も格式の高い5階の特別対局室。床の間の掛け軸には谷川の「道法自然」など昭和以降の歴代永世名人4人の書がある。
神戸の被災地へ届けとばかりに、谷川が得意とする「光速の寄せ」が決まった。戦型は角換わり。難解な中盤から終盤へ。鋭く踏み込み、鮮やかに寄せきった。
終局後、「苦しい将棋だったが、勝負手がなんとか功を奏したのかな」と振り返った。区切りの記念星に「40代をすぎて勝てなくなり、ペースが落ちてきているが、1つの区切りをつけられたのは少しホッとしている」と話した。
谷川は76年、14歳8カ月で四段に昇格しプロ棋士に。加藤一二三・九段以来、22年ぶり史上2人目の中学生棋士となった。83年史上最年少の21歳で名人。名人5期を含むタイトル計27期は現役3位で、歴代では5位。棋戦優勝も22回を数えるレジェンド棋士だ。
棋士人生の中でも忘れられない出来事がある1995年1月17日、阪神淡路大震災が発生し、谷川は神戸市東灘区にある13階にある自宅マンションで被災。建物は無事だったが、本棚や居間の飾り棚が倒れて、食器の7割が割れた。両親は親戚に身を寄せて無事が確認されたが、須磨区にある実家の高松寺は半壊した。
1・17は発生から30年となる。「これは偶然ですが、震災30年は1つの区切りですが、被災された方の生活はまだまだ続く。これからも経験をした立場としては発信をしていかなかればいけないなと思う」。
還暦を過ぎてもなお、ひたむきに将棋に取り組む。【松浦隆司】