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【将棋】西山朋佳女流3冠、史上初の女性棋士に1歩届かず 再挑戦は「今後はいったん整理したい」

日刊スポーツ 2025年1月22日 18時27分

将棋の西山朋佳女流3冠(白玲・女王・女流王将=29)が22日、大阪府高槻市の関西将棋会館でプロ棋士編入試験5番勝負第5局に臨み、試験官の柵木(ませぎ)幹太四段(26)に敗れた。対戦成績2勝3敗で不合格となり、将棋史上初の「女性棋士」の誕生はならなかった。現在のプロ制度の原型ができて100年、歴史の扉は開かなかった。

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左手で口を押さえ、右手で左手首を強くつかんだ。「何かあるかな…」。互いの玉が向かい合う玉頭付近での激しい玉頭戦。西山が苦しげな表情を見せ、必死に逆転の一手を探した。歴史を塗り替えるまであと1勝まで迫ったが、棋士の厚い壁を破ることができなかった。

終局後の感想戦。「確かにチャンスはあった気がした」。試験官となった柵木の指摘につぶやいた。勝てば合格、負ければ不合格の運命の大一番。序盤で飛車を左翼へ展開する「振り飛車」を得意とする西山は戦型は「決めていた」という、飛車を3筋に振る三間飛車を選択した。自らのスタイルを崩さず、真っ向勝負を挑んだ。

「いろいろ思いはあるが、5人の試験官の棋士の方に向き合っていただいて、すごく感謝しています」。終局後のインタビューでは悔しさは表情に出さず、感謝の言葉を口にした。

試験は新人棋士5人と対局し、3勝すればプロの四段に昇段、3敗した時点で不合格となる。現行制度の編入試験を女性で受けたのは、不合格となった福間香奈女流5冠(32)に続いて2人目だった。これまで、男性も含めて受験したのは今泉健司五段ら5人で西山、福間以外の3人は合格した。

「相当な負けず嫌い」。師匠の伊藤博文七段は西山をこう評す。悲願を達成することはできなかったが、今回の5番勝負では「少しでも納得のいく将棋をと、取り組んでいた。将棋に触れる時間も増え充実した時間で収穫も多かった」と振り返り、「準備と微妙な違いがあった場合の対応力が足りなかった」と反省も口にした。

現在のプロ制度の原型ができてから100年で、約350人がプロ棋士になったが、すべて男性だ。再挑戦について「今日のことだけを考えてきたので、今後はいったん整理したい」。必ず、チャンスはある。【松浦隆司】

◆西山朋佳(にしやま・ともか)1995年(平7)大阪府大阪狭山市生まれ。伊藤博文七段門下。大阪学芸高卒。慶応大環境情報学部中退。5歳で将棋を始め、10年にプロ養成機関の奨励会に入会。15年に三段昇段。2位以内に入ると棋士になれるリーグで19年度後期に3位となり、棋士にあと1歩届かなかった。21年、25歳で退会。女流棋士転向後の21年10月に初代白玲となり、女流8タイトルの半分の4冠に。タイトル獲得通算18期。振り飛車党。姉の静佳さんは囲碁棋士二段。

◆棋士編入試験 2014年(平26)4月に制度化。19年、今の名称に。アマチュア強豪か女流棋士で、プロ公式棋戦で最もいいところから見て10勝以上、かつその間の勝率6割5分以上の成績を収めた者が受験資格を得る。直近プロになった棋士5人が試験官を務め、3勝で合格。3敗で不合格。受験料は50万円。過去の合格者は14年今泉健司現五段(51)、20年折田翔吾現五段(35)、23年小山怜央現四段。小山はプロ棋士養成機関「奨励会」の在籍未経験者として初めて合格した。女流棋士では22年に里見(現福間)香奈女流5冠(32)が挑んだが、3連敗で不合格だった。過去の編入試験ではこのほか、44年花村元司九段(故人)、05年瀬川晶司現六段(54)が合格している。

◆再挑戦への道 西山が再挑戦するためには、竜王戦、王位戦、朝日杯など予選から勝ち上がるプロ公式棋戦で、最もいいところから見て10勝以上、かつその間の勝率6割5分以上の成績を挙げなければいけない。この受験資格を得て、挑戦を宣言すれば再度、挑戦できる。

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