松竹創業130周年記念 2025-26年ラインナップ発表会が23日、都内で開催された。席上で、松竹創業130周年記念作品として、山田洋次監督(93)の新作映画「TOKYOタクシー」が製作され、倍賞千恵子(83)と木村拓哉(52)が出演することが発表された。木村は2006年(平18)の主演映画「武士の一分」以来、19年ぶりの山田組への参加。倍賞と木村は、2004年(平16)のスタジオジブリのアニメ映画「ハウルの動く城」以来21年ぶりの共演で、実写での共演は初めて。撮影は2月から4月に東京近郊で行われ、11月21日公開する。
24年に日本アカデミー賞外国作品賞を受賞した、22年のフランス映画「パリタクシー」(クリスチャン・カリオン監督)が原作。さえない日々を送る個人タクシー運転手と、偶然に乗せた人生の終活に向かうマダムとの出会いを描き、木村は個人タクシー運転手の宇佐美浩二、倍賞は85歳の高野すみれを演じる。
山田監督は「できたら、他の作品で見ることができない、彼の優しさを撮りたい。今までにない、木村拓哉演じる運転手さん。平凡な職業ですからね。特別な人じゃない」と語った。「娘が1人、恋女房がいて、小さな家で一生懸命、日常を大事にしながら生きている」と木村の役どころについて説明した上で「木村拓哉君の、人に見せない素顔が、スッと出てきたら魅力的だなと。盗み取るように描きたい。今までの木村拓哉の主演映画にはない、魅力を盗み取りたい」と繰り返した。
木村は、山田監督のコメントを聞いての受け止めと、タクシー運転手を演じたことはあるか? と聞かれると「お久しぶりです、とごあいさつしたら、違う作品の番宣に年末年始、参加し、一般の方とお話しさせていただく、自分の素の部分を何度も見ていただいて『すばらしい、ああいう木村君が良い』と言われた」と笑顔で語った。作品名は言及しなかったが、昨年12月29日にTBS系で放送されたドラマ「グランメゾン東京」と公開中の映画「グランメゾン・パリ」(塚原あゆ子監督)に関する、一連のプロモーションを指したとみられる。
木村は「宇佐美浩二いう立派な役をいただいた。監督が魅力的とおっしゃった顔を、良い形で投影できれば」と意気込みを示した。その上で「個人タクシーの運転手(という役)は、今まで経験したことがないですし、劇中に出てくる車両に乗り込んだ関係性…今から撮影に入るという状況になった時、外に出た時、休憩中にタクシーの運転手の皆さんに意識がいくようになった」とタクシーの観察から、自然と役作りが始まっていると明かした。そして「宇佐美が抱える思い(倍賞が演じる)すみれさんと出会って気付ける部分、共演者の方たちと1つ1つ、積み重ねていきたい」と語った。
倍賞演じるすみれは85歳で、浩二のタクシーに乗って東京の柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設まで向かう中、寄り道を依頼し、次第に心を許して自らの壮絶な過去を語る役どころだ。木村との共演について聞かれ「好きな木村拓哉君と仕事できて、うれしい」と笑みを浮かべた。「(物語は)柴又から始まる、ものすごい、きついことを言うおばあちゃん。柴又では似合わないと思った」と、自身の代表作の1つ「男はつらいよ」と同じ、東京・柴又が舞台だと明かした。そして「横顔を見ていたら、受け止めてくれるんじゃないかと思ってせりふを言っていました」と、木村を見つめ、笑みを浮かべた。