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伊藤詩織監督、米アカデミー賞ノミネートは「性暴力サバイバーとして、すべての人に希望」

日刊スポーツ 2025年1月24日 9時28分

第97回米アカデミー賞のノミネート作品が23日、発表され、ジャーナリストの伊藤詩織さん(35)が初めて監督を務めたドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」が、長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。日本人の監督のノミネートは史上初めて。「Black Box Diaries」は、伊藤監督が15年4月に元テレビ局員の男性から受けた性的暴行被害について、調査に乗り出す様子を自ら6年にわたって記録したドキュメンタリー。

伊藤監督は、アカデミー賞へのノミネートから一夜明けた24日、コメントを発表。「このアカデミー賞のノミネーションは、1つの大きな壁を乗り越える出来事となりました。性暴力のサバイバーとして、また、権力によって沈黙を強いられているすべての人に希望をもたらすものだと思います」と、ノミネートに入った意義を強調した。

授賞式は3月2日に、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催される予定。伊藤監督は「ここまで歩みを進めることができたのは、多くの方々の、支えのおかげです」と、支援者に感謝するとともに「この作品は私個人の物語にとどまるものではありません。声を奪われてきた人々、そして今もなお声を上げ続けている世界中のすべての方々に、この瞬間をささげます」と、同様の被害にあった人々の作品だと強調。「この作品を通じて、少しでも多くの人々が変化への一歩へ向かっていくことを願っています」と語った。

「Black Box Diaries」の日本での公開時期は未定だが、24年1月にサンダンス映画祭(米国)で行われた上映を皮切りに、現時点で50以上の映画祭で上映され、18個の賞を受賞。30以上の国と地域での配給も決まっている。また、伊藤監督は“ドキュメンタリー界のアカデミー賞”とも称されるIDAドキュメンタリー賞で、新人監督賞を受賞。EU議会や英国国会、UN Womenや国連腐敗防止条約などでも、今作の講演を行ってきた。

第78回英国アカデミー賞(BAFTA)でも、ドキュメンタリー賞にもノミネートされている。日本人監督の作品のノミネートは、市川崑監督の1966年(昭41)「東京オリンピック」以来59年ぶり。結果は2月16日(現地時間)に発表される。

◆伊藤監督の性被害の、一連の経緯 伊藤監督は、米国の大学に在籍した13年12月に元テレビ局員の男性と知り合い、同氏が15年4月3日に帰国して会食した際、意識を失いホテルで暴行を受けたと主張。準強姦(ごうかん)容疑で警視庁に被害届を提出した。一方、男性は合意に基づく性行為だと反論し、東京地検は16年7月に嫌疑不十分で不起訴とした。翌17年5月に同監督は不起訴不当を訴えたが、東京第6検察審査会も同9月、不起訴を覆すだけの理由がないとして不起訴相当と議決した。

伊藤監督は、同年9月に男性をを相手に民事裁判を起こし、19年の東京地裁での1審は勝訴。男性の控訴を受けた22年1月の控訴審でも勝訴した一方で、男性の反訴も一部、認容。双方が上告して迎えた22年7月の上告審で、最高裁は双方の上告を棄却。男性に約332万円の賠償を命じた一方、同監督の17年の著書「Black Box」などでデートレイプドラッグを使われた可能性があるとされ名誉を傷つけられたとして、1億3000万円の損害賠償を求めた男性の反訴について、真実性が認められず名誉毀損(きそん)に当たると判断し同監督にも55万円の支払いを命じた。

伊藤監督は、男性との裁判に加え、20年にはSNSによる誹謗(ひぼう)中傷の投稿をした2名、拡散した2名に名誉毀損(きそん)、賛同を意味する「いいね」ボタンを押した自民党の杉田水脈元衆議院議員には名誉感情侵害で、それぞれ損害賠償請求訴訟を起こした。1審で請求が棄却され、控訴審で逆転した杉田氏との裁判含め、いずれも同監督が勝訴した。

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