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アンバサダー荒川静香さん 東日本大震災から14年…大阪・関西万博で復興の歩みを世界に発信

日刊スポーツ 2025年2月1日 7時39分

<情報最前線:ニュースの街から>

昨今、多くの地震が発生している日本。来月11日には、東日本大震災から14年の時を迎える。東北の被災地が現在、復興に向けてどう歩もうとしているのか、復興庁は大阪・関西万博(4月13日から)の場を活用して、世界に発信する試みを予定する。PRアンバサダーには、宮城県で育ったプロフィギュアスケーター荒川静香さん(43)が就任。震災の記憶を伝え続ける意義について、荒川さんが語った。【中山知子】

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★「風化を防ぐ」課題

昨年の元日に起きた石川・能登半島地震は、復旧・復興に向けた多くの人々による努力が今も続く。今年は1995年(平7)1月17日に発生し、6434人が命を落とした阪神・淡路大震災から30年の時が経過し、国民が追悼の思いを抱いた。震災から時間を経て生まれ変わった被災地の姿は、復旧、復興からの観点と同時に、時間の経過に伴う震災自体の「風化」をどう防ぐかという課題に、あらためて触れる機会にもなっている。

来月11日には、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生から14年となる。復興庁は1月22日、被災地が復興に向かって進む姿を世界に発信したいとして、4月13日に始まる大阪・関西万博で「つむぎ、つづける。」と題した展示を行うと発表した。5月19日から24日まで「未来のコミュニティとモビリティウィーク」と題されたテーマ期間中、被災地の未来社会に向けた復興の姿を打ち出す内容になるという。

被災地で少しずつでも進む復興の姿は、現地から離れているとなかなか伝わりにくい。これは、30年の間に新たな街づくりが進んだ阪神・淡路大震災でも、課題になったことだ。そこで、大阪・関西万博では「Build Back Better(ビルド・バック・ベター=よりよい復興)」をコンセプトに、震災被災地の復興の姿を映像やパネルで展示する。国内外からの来場者に、震災について知ってほしい思いを込めるという。

★伝承や次への備え

震災の実態を再確認する「震災伝承」や、次の災害に備えた新たな取り組みを知るための「災害対応」、被災地の「食・水産」の取り組みを発表したり試食を行うほか、「創造的復興の中核拠点」を目指す「F-REI(福島国際研究教育機構)」の研究内容にも触れる。

伊藤忠彦復興相は記者会見で「この機会を生かし、被災地が復興しつつある姿を世界に発信する。少しでも多くのみなさんに、被災地に足を運んでいただけるきっかけになるようにもしたい」と述べた。

この展示をより多くの人に知ってもらうためのPRアンバサダーを、06年トリノ五輪女子フィギュアスケート金メダリストでもある荒川さんが担当することになった。

★現状発信する活動

荒川さんは会見で「私自身、高校卒業まで宮城県で過ごしていた。微力ながらお手伝いさせていただければ」とした上で「万博会場の『大屋根リング』には、福島県の木材が使用されているとうかがった。復興に向けた取り組みや、震災後に新しく技術を進化させてきた歩みを、未来に向けた再生、復興の証しのあるものとして、震災の記憶や学びを未来につなげる取り組みとして力強くPRしたい」と抱負を述べた。

荒川さんは震災直後、宮城県を中心に救援物資を積み込んだ車で被災地を回り、その後も被災した人々の元を訪れ、どんな支援がサポートになったのかなどを聞きながら、その現状を発信する活動も続けたという。「大切なのは、多くの方が感じたことを被災地から遠くの地域の方にまで伝え、支援の心を持ち続けること。離れた地域でも、できる人ができることを続けていく取り組みを考えていく機会になれば」と語った。

一方で、時間の経過とともに震災の「風化」は必ず課題になる。荒川さんに問うと「震災、災害は今、日本各地で起きている。そこで起きたことや、そこからどのように進んでいけるものになるか考える機会は、東日本大震災のような未曽有の災害を通じては多くの方が持ってきたと思う。(その他の地震についても)目を向けて、関心を持つことが未来につながっていく。それが大事なのかなと思う」と語り、関心を持ち続けることの大切さに触れた。

万博期間中には、東日本大震災の津波に耐え復興への象徴となった岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」を映したデジタルモニュメントを会場に常設する。スマホなどでメッセージを投稿すると、一本松が明るくなる仕掛けだ。すでに2000通超の投稿が寄せられ、荒川さんは「最善を尽くしていく先に未来へとつながる道」と書いたメッセージを送った。

◆大阪・関西万博 大阪市此花区の人工島・夢洲(ゆめしま)を会場として4月13日から10月13日まで開催される。昨年8月には、賛否が相次いだ木造の巨大な屋根「リング」の輪が1つにつながり、先月19日には、会場に直結する大阪メトロ中央線の新駅「夢洲駅」が開業するなど、準備が進んでいる。イベントの目玉となる世界最大級の火星隕石(いんせき)である「火星の石」の日本館での展示も発表された。

一方で、会場建設費や運営費の増額、入場チケットの売れ行きへの懸念も頻発している。特に、2300万枚の販売を目指す入場チケットについては売れ行きが運営費にもかかわるだけに、主催者側は前売りで1400万枚をさばくことを目標とするが、先月8日時点で約751万枚にとどまっているとされ、今後の販売状況に不安の声が残る。

また建設工事の遅れも課題で、「万博の華」と呼ばれる海外パビリオンのお披露目は先月末に一部で始まったものの、開始までにすべて完成が間に合うかどうか、懸念も出ている。

■3県で復興庁展示100日前のイベント

大阪・関西万博での展示に先立ち、今月8日から東日本大震災の被災地3県で、復興庁展示100日前のイベントが行われる。8日に福島、9日に宮城、11日に岩手の順で、震災・災害対応や最新技術など、万博で展示が予定されている内容の紹介や、地元の有識者らが参加したトークセッションが予定されている。また、3県の「復興のストーリー」を持つ食品や水産品をテーマの食材として、学生たちが考案した食べ方のアイデアも紹介する。

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