将棋「第18回朝日杯オープン戦」決勝、井田明宏五段(28)対近藤誠也八段(28)戦が11日、東京・有楽町「朝日ホール」で行われた。先手井田得意の雁木(がんぎ)に対し、後手近藤が矢倉で対抗。井田のわずかな守備でのミスを冷静に突き、落ち着いて正解の攻めを出し続けた近藤が初優勝を飾った。2015年(平27)10月、プロになって10年、ようやく公式戦初Vを達成した。
近藤は慌てていなかった。「先手5八銀から桂の頭を攻める後手7六歩が打てて良くなったかなと思いました。そこから攻めが続いたのが良かった。冷静に指せれば勝ちが近づく」と公開対局の場で思っていた。昨年まで4年連続で王将戦の挑戦者決定リーグ戦に在籍していた。トップ棋士との対局を経験するうち、実力をつけていった。
表彰式を終え、「自分らしくのびのびと指せました。棋士になって10年、節目の年に初めて優勝できてうれしく思います。カップを持ってうれしさが込み上げてきた感じです」と喜びをかみしめた。
昨年の朝日杯、準々決勝で西田拓也五段に敗れて初の4強入りを逃した。それよりも有楽町まで勝ち進めなかったことが悔しくて、「今年こそはという思い」で臨んだ。
発奮材料もあった。今期の順位戦でB級1組から名人戦挑戦者を争うA級に初めて昇級でき、八段に昇段した。「昇級直後から朝日杯の優勝を目標にしていました。来年度はタイトルにも挑戦したいし、A級棋士に恥じない将棋を指したいです」。遅れてきた大器が初優勝を機に花開く予感がする。