炉から上がる真っ赤な炎。日本刀の原料「玉鋼」を作るたたら製鉄です。全国で唯一たたら製鉄を行っている島根県奥出雲町の「日刀保たたら」で1月22日、操業はじめの火入れ式が行われました。
式では関係者が玉串をささげ、操業の安全を祈願した後「初種(はつだね)」と呼ばれる最初の砂鉄を炎の中に流し込みました。
日刀保たたら 堀尾薫 村下
「『令和の玉鋼いいね』と言ってもらえるような玉鋼を生み出すというのが、第一の使命ではないかと思っております」
日刀保(にっとうほ)たたらは、玉鋼の製造方法と日本刀の文化を守ろうと、日本美術刀剣保存協会が島根県安来市の鉄鋼メーカー、プロテリアル(旧日立金属安来工場)の技術協力で1977年に復活させました。
たたら製鉄は、3日3晩にわたって13人の男たちが炉に砂鉄と木炭を入れ続け、玉鋼の元となる「けら」を作ります。このとき、砂鉄が均等に溶けるよう炉の温度を管理するのが責任者「村下(むらげ)」の役割です。
31年前からたたら製鉄に携わる堀尾薫さんは、今回の操業から村下を務めます。
日刀保たたら 堀尾薫 村下
「実際ここにはもう師匠はいませんので、わたくしが全責任をもってこの操業に臨むという覚悟で本日の火入れを迎えております」
先代の村下・木原明さんは、約40年にわたり村下として活躍。日本古来の鉄づくりの再現を最前線で支えてきました。木原さんが去年6月に亡くなったことを受け、弟子の堀尾さんが新たな村下に委嘱されました。
偉大な先人の跡を継ぎ、責任者という新たな立場での操業に臨む堀尾さん。自分なりの形で次世代を育成しようとしています。
日刀保たたら 堀尾薫 村下
「村下代行・村下養成員と13名でワンチームになってですね、臨んでいきますので、木原村下から受けた指導方法でいいのか、その辺りは自分で精査をしながら進めていきたいなと思っております」
復活から48年目で、新たな節目を迎えた日刀保たたら。今年は2月8日まで3回操業する予定です。
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