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妻「離婚して」→夫「???」 なぜ「離婚」を言い渡されたのか分からない夫たち

オトナンサー 2024年6月30日 8時10分

「妻から離婚を言い渡されました。意味が分からない。青天の霹靂(へきれき)です」と、私が運営する夫婦仲相談所を訪れる夫たちがいます。話を聞くと、夫にとっては“青天の霹靂”でも、妻にとっては不満が長年積み重なり、“発酵”されて仕上がったという状況ではないかと推測されます。夫側から家庭での様子をヒアリングすると、「そりゃ離婚したくなりますよ」と妻側に共感してしまいます。

 妻が離婚を告げるとき、そこには長い年月、タマネギの薄皮のごとく重なっていったマイナス要因があるのです。

■司法統計による離婚理由の1位は

「司法統計年表」(2022年)によると、妻の離婚申し立て理由は次のようになっています。

1位:性格が合わない
2位:暴力を振るう
3位:生活費を渡さない
4位:精神的に虐待する
5位:異性関係

“PTA不倫”や“人妻マッチング”といった、ちまたで耳にする異性関係、つまり妻側の浮気が原因で離婚を申し立てる妻は、1位を取るほど多くはありません。

 2位と3位の要因の夫は、妻から離婚を切り出されて“青天の霹靂”とは思わないでしょう。「俺が殴ったからだ」「俺が生活費を渡さず、パチンコに使ったからだ」など、“当然”感があるでしょう。開き直る場合はあるでしょうが。

 1位と4位、特に「精神的」なものを起因とする離婚の場合、夫は自覚がなく、知らないうちに妻を苦しめ、追い詰めていた、というケースとなります。

 夫婦仲相談所に寄せられた実例を見ていきましょう。

■妊娠きっかけに一変した夫

「子どもができて、夫は性格が変わってしまった」と希江子さん(38歳、仮名)は言います。

 子どもができるまではお互いお酒が好きで、二人で居酒屋へ飲みに行っていたそうです。二人ともちょっとズボラなタイプで、きれい好きではなく部屋が散らかっていたり、宅配ピザやウーバーイーツを頼むことが頻繁にあったりしましたが、気にすることなく楽しく生活していました。

 ところが、希江子さんが妊娠してから夫の態度が変わります。ライフスタイル全般を、希江子さんに指図するようになったのです。

 エンジニアとしてハードな仕事をしていた希江子さんでしたが、「妊婦の体に負担が大きいし、ストレスで早産になったら大変だから」と転職を勧められます。しかし、妊娠中の転職など現実的ではありません。「産休育休制度のことを考えても、現在の職場がいい」と希江子さんが説得しても、夫は不満げ。

 そして、食事が何よりストレスになりました。妊婦なので当然お酒はNG。甘いものもストップ。二人ともバーガーやフライドチキンなどジャンクフードが好きでしたが、妊娠後は一切禁止。手作りで、いい油を使った食事しかダメという徹底ぶりです。それなら夫が作ってくれればいいのですが、そういうわけでもなく、夫自身はラーメンを食べるなど、自由にしていました。

 しかも、お酒とたばこを夫だけはやめません。副流煙を心配して、たばこだけはベランダで吸うようになったそうですが……。

 希江子さんは、最初、「指図は母体を心配しているからだ。出産までの辛抱だ」と受け入れていました。ところが、出産後も夫の指図は継続。「母乳で育てた方がよい」と、母乳にいい食事をするように強要し、「赤ちゃんがぜんそくになったら大変だ」と毎日小まめに部屋の掃除をするように指図します。

 男性も育休を取る時勢ですが、夫は特にそういった配慮はなく、希江子さんだけに負担を強い続けました。早く仕事に復帰したかった希江子さんは、0歳で保育園に預けようとしますが、夫は「3歳になるまでは、子どもは母親のそばにいた方がいい」と言い張り、自分の親を巻き込んで、保育園に入れることを許しませんでした。

 そして2年後、とうとう希江子さんの心が折れます。子どもと2人きりの生活を強いられ、1人で外出することも思うようにできず、家事負担が倍増してストレスは限界。このままでは子どもに当たってしまうかもしれない、と危機感を感じた希江子さん。「自分の思うように子育てをさせてほしい」と夫に訴えました。

 しかし夫は、「自分が考えて実行していることは、ネットや育児書に書かれていること、医師たちが推奨していることなのだから正しい。それを否定して自由に育てるなんて、育児放棄だ」と言い放ったのです。

 希江子さんはその場で、夫に「離婚してほしい」と告げました。夫はなぜ離婚を言い渡されたのか、理解できませんでした。結果的に二人は調停離婚し、親権は希江子さんのものとなりました。

■夫婦関係も「人間関係」

 自分の正しさばかりを主張し、寄り添わず、妻を理解しようともしない夫たちがいます。「社会の人間関係の中では、そんな態度を取ったらアウトでしょ」と頭で分かっているのに、なぜかそれが家庭内、夫婦の関係だと“俺さまマウント”を取ってしまう――。

 夫婦関係も「人間関係」です。社会で許されないことは、家庭内でも許されません。それに気が付かず、「妻が一方的に怒っている」と夫婦仲相談所を訪れる夫たちは今なお多く存在しています。

 今回のケースは30代夫婦の例ですが、これが60代夫婦の熟年離婚となると、夫側のダメージは相当厳しいものになります。シニアになってからの男性の1人暮らしは体調を崩しやすいといわれますが、メンタル面でもジワジワ来るでしょう。

 妻から突然「別れて」と言われたらどうする? そんな危機感を常に抱えて、妻の思いをくみ取る体制をつくっていってください。

「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美

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