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「新紙幣」発行で「倒産増えそう」? 飲食店にどんな影響? 専門家に聞く

オトナンサー 2024年7月3日 7時10分

 新紙幣の発行が7月3日から始まりました。飲食業界では、すでに新紙幣対応の券売機に切り替えた店もあれば、切り替えが進まない店もあり、SNS上では「新紙幣対応で新しい食券機にしなきゃいけないのは大変」「新紙幣倒産が増えそう」といった、飲食店の負担増加を懸念する声が上がっています。

 新紙幣の発行により、今後、飲食店の経営にどのような影響が出る可能性があるのでしょうか。メリットよりもデメリットの方が大きいのでしょうか。新紙幣発行を機に飲食店がキャッシュレス決済を導入する可能性などについて、飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

■事業計画外の設備費や人件費がかかる

Q.新紙幣の発行により、飲食店の経営にどのような影響が出る可能性があるのでしょうか。大手の飲食店と個人経営の飲食店、双方のケースで教えてください。

成田さん「大手の飲食店の場合、自動釣銭機や自動券売機などを導入している店舗が多く、これらを新紙幣対応機器に入れ替える必要があります。

個人経営の飲食店は、自動機器を導入していない店が多く、新紙幣対応機器への入れ替えは必要ありませんが、新紙幣と旧紙幣が入り混じる会計が増えるため、人為的ミスによる会計違いが発生する可能性のほか、会計の締めの業務に時間がかかる可能性などが想定されます。

このようなリスクを最小限に抑えるためには、機器システムの更新やスタッフ教育などを行う必要がありますが、これらには事業計画外の設備費や人件費がかかるため、飲食店の経営を悪化させる可能性があります」

Q.新紙幣の発行が始まったことで、今後、キャッシュレス決済に対応した飲食店が増える可能性はありますか。

成田さん「新紙幣の発行を機にキャッシュレス決済を導入する飲食店は、もちろんあると思います。しかし、新型コロナウイルスの影響や物価高などにより、飲食店経営が厳しい状況にある現在、キャッシュレス決済サービスの提供事業者に支払う手数料が飲食店にさらなる負担となるため、導入に慎重になる飲食店もあるでしょう。

新紙幣発行を機に、銀行のATMの減少や両替手数料の値上げなども想定されますが、その場合は現金決済の利便性が悪くなるため、今後、キャッシュレス決済に対応した飲食店が増える可能性の方が高いと私は考えます」

Q.コストや手間などを理由に飲食店が新紙幣への対応に遅れた場合、経営上、どのような結果を招く可能性があるのでしょうか。

成田さん「飲食店が行う新紙幣への対応としては、先述の自動釣銭機や自動券売機の更新のほか、新紙幣の特徴や見分け方に関するスタッフ教育が必須です。新紙幣への対応が遅れた場合、会計処理がスムーズにいかず、混雑や不満を引き起こす可能性があります。また、対応の遅れにより不便を感じた客が他の飲食店に移ってしまう可能性も考えられます」

Q.結局、新紙幣の発行は、飲食店にとってメリットの方が大きいのでしょうか。それとも、デメリットの方が大きいのでしょうか。飲食店コンサルタントとしての見解をお聞かせください。

成田さん「業態にもよりますが、今回の導入時期に関していえば、デメリットの方が大きいと私は考えます。なぜなら、新型コロナウイルスの流行による売り上げの落ち込みに始まり、急激な物価高や円安による仕入れ原価の高騰、光熱費の大幅値上げに続き、新紙幣に対応する設備費や人件費は、多くの飲食店にとって三重苦、四重苦となり、飲食店経営はますます厳しくなるからです。

それでも、飲食業界が前に進むためには新紙幣の発行を転換期と捉える事業者も登場するでしょう。そこで、人材不足をカバーしつつ、利便性の向上によって外国人観光客のほか、『Z世代』と呼ばれる若年層の顧客の獲得も期待できる『完全キャッシュレス決済』の飲食店なども増えてくると私は考えています」

オトナンサー編集部

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