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「タンパク質不足で疲れやすくなる」は本当? 真偽&対策を医師に聞いてみた

オトナンサー 2024年7月17日 9時10分

 体にとって大切な栄養素の一つが「タンパク質」です。特に筋肉を作るのに欠かせない栄養素といわれており、日々運動をする人の中には肉類や魚介類、卵類などのほか、プロテインのような栄養補助食品でタンパク質を積極的に摂取するケースもあります。

 ところで、タンパク質が不足すると、体にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。ネット上では、「タンパク質が不足すると疲れやすくなる」という内容の情報がありますが、本当なのでしょうか。

 タンパク質が不足した場合の健康上のリスクのほか、効率的にタンパク質を摂取する方法について、なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック(京都市右京区)院長でスポーツ医学にも詳しい、整形外科医の樋口直彦さんに聞きました。

■タンパク質不足で「筋力」「免疫」低下のリスク増

Q.そもそも、タンパク質にはどのような働きがあるのでしょうか。

樋口さん「タンパク質は体内のほぼすべての生理的機能に関与しており、非常に重要な役割を果たしています。特に身体的な活動量が多い場合やストレスがかかった場合、タンパク質の需要が増します。主な働きは次の通りです」

(1)筋肉や皮膚などの構造を形成
タンパク質は細胞や組織の主要な構成要素です。例えば、筋肉や皮膚、髪の毛、爪などの構造を形成するのに必要です。

(2)酵素としての働き
酵素はタンパク質の一種で、化学反応を促進します。消化酵素や代謝酵素など、体内のあらゆる代謝プロセスをサポートしています。

(3)ホルモンとしての働き
ホルモンは体内の各種プロセスを調節するために重要な役割を果たします。例えば、血糖値を調節するのに必要な「インスリン」、成長と代謝の調節をするのに必要な「成長ホルモン」などがあります。

(4)免疫系の構成要素
抗体はタンパク質から作られ、体内の病原体と戦うために重要な役割を果たします。

(5)運搬と貯蔵
血液中のタンパク質は栄養素や酸素の運搬を助けるほか、肝臓などでは栄養素の貯蔵にも関与しています。

(6)エネルギー源としての利用
体にとっての主なエネルギー源は糖質や脂質ですが、必要に応じてタンパク質もエネルギーとして利用される場合があります。

Q.では、タンパク質が不足すると、体にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。

樋口さん「タンパク質が不足すると、『筋肉の減少』『免疫機能の低下』『皮膚の乾燥や炎症』など、健康上の問題が生じる可能性があります。順番に詳しく説明します」

■タンパク質が不足した場合に体に与える影響
(1)筋肉の減少
タンパク質は筋肉の主要な構成要素であり、不足すると筋肉量が減少し、筋力が低下する可能性があります。これにより体のパフォーマンスが低下することがあります。

(2)免疫機能の低下
先述のように、抗体や免疫細胞の一部はタンパク質から作られており、タンパク質が不足すると免疫系の機能が低下し、感染症への抵抗力が弱まる可能性があります。

(3)皮膚の乾燥や炎症が生じる
タンパク質は皮膚の構造を形成しており、不足すると皮膚の弾力性や修復力が低下し、皮膚の健康に影響を及ぼすことがあります。これにより、皮膚の乾燥や炎症が起きる可能性があります。

(4)貧血が生じる
ヘモグロビンの合成にはタンパク質が必要であり、タンパク質が不足すると赤血球の数が減少し、貧血のリスクが高まる可能性があります。

(5)代謝の低下
タンパク質は体内の代謝プロセスに重要な役割を果たしており、不足すると基礎代謝率が低下し、エネルギーの消費効率が悪化する可能性があります。

(6)骨の健康に影響
タンパク質はカルシウムの吸収を助けるため、不足すると骨の健康に影響を与える可能性があります。

(7)成長や発育に影響
特に子どもや若年層の人にとって、タンパク質は成長や発育に必要不可欠です。不足すると身長の伸びや体重の増加が遅れることがあります。

これらの症状や健康上の問題は、長期間にわたってタンパク質が不足することでより顕著になる可能性があります。バランスの取れた食事を心掛け、適切な量のタンパク質を摂取することが重要です。

Q.ネット上では「タンパク質が不足すると疲れやすくなる」という内容の情報があります。実際にこうしたケースは存在するのでしょうか。

樋口さん「存在します。タンパク質が不足すると、エネルギーの代謝や筋肉の維持に影響が出て、『エネルギーの供給不足』『神経伝達物質やホルモンが作り出せなくなる』『貧血』『免疫機能の低下』といった状態が生じ、疲労感が増すことがあるからです。詳しく説明すると、次の通りです」

(1)エネルギーの供給不足
タンパク質は糖質や脂質と同様、エネルギー源として利用されます。特に運動や身体活動を行った際に、タンパク質が筋肉の修復や再構築に使われます。不足すると、筋肉の疲労回復が遅れたり、エネルギーの供給が不足したりするため、疲労感が増すことがあります。

(2)神経伝達物質やホルモンが作り出せなくなる
タンパク質は神経伝達物質やホルモンを作るのに必要な栄養素です。タンパク質不足で神経伝達物質やホルモンが作り出せなくなると、精神的な疲労感のほか、集中力の低下につながることがあります。

(3)貧血
タンパク質はヘモグロビンの合成にも関与しており、不足すると貧血になりやすくなります。貧血になると酸素が十分に運搬できなくなり、疲労感が増すことがあります。

(4)免疫機能の低下
タンパク質は免疫機能の維持にも必要です。タンパク質が不足して免疫系が弱まると、感染症にかかりやすくなり、それにより疲労感が生じることがあります。

■タンパク質を効率的に摂取するには?

Q.タンパク質を効率的に摂取するにはどうしたらよいのでしょうか。タンパク質の1日の摂取目安量のほか、タンパク質を多く含む食べ物も含めて、教えてください。

樋口さん「タンパク質を効率的に摂取するためには、次の点を意識しましょう」

(1)摂取目安量を意識する
成人の場合、1日のタンパク質の摂取目安量は、体重1キログラム当たり約0.8グラムから1.0グラムです。例えば、体重60キロの成人であれば、1日に約48グラムから60グラムのタンパク質の摂取が推奨されます。運動量や個々の健康状態によって異なる場合があり、必要に応じて調整が必要です。

(2)タンパク質を多く含む食品を摂取する
・肉類
牛肉、豚肉、鶏肉などは特に良質なタンパク質の源です。肉はアミノ酸のバランスが良く、消化吸収も効率的です。

・魚介類
特にサケやマグロ、タラなどの魚はタンパク質だけでなく、血液をサラサラにする「オメガ3脂肪酸」も豊富です。

・卵類
卵白には良質なタンパク質が含まれています。また、黄身にも栄養素が豊富です。

・豆類
大豆や豆腐、レンズ豆などには植物性タンパク質が豊富に含まれています。特に大豆製品には、完全なタンパク質が含まれています。

・乳製品
牛乳やチーズ、ヨーグルトなどは、カルシウムとともに良質なタンパク質が含まれています。

(3)食事のバランス
タンパク質を含む食品を食事の中でバランスよく摂取することが大切です。例えば、肉類や魚介類、豆類を組み合わせた料理のほか、乳製品と穀物を組み合わせた食事が推奨されます。

(4)1日の中で均等に摂取する
1日の食事で均等にタンパク質を摂取することが理想です。昼食や夕食にタンパク質が多く含まれる食品を摂取するようにすると良いでしょう。

(5)加工食品の選び方
肉や乳製品の場合、脂肪分の少ないものを選ぶと、タンパク質のみならず、摂取するカロリー量も効果的に管理できます。

これら5つのポイントを意識することで、タンパク質を効率的に摂取し、健康を維持することができます。また、個々の健康状態やライフスタイルに応じて、栄養バランスの取れた食事を心掛けることも重要です。

オトナンサー編集部

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