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友人に「モラハラ洗脳じゃない?」と指摘され…「私は無価値」「夫の付属品」と感じていた36歳女性の“夫に否定され続ける”日々

オトナンサー 2024年7月20日 9時10分

 近年、認知度が高まりつつある「モラルハラスメント(モラハラ)」。理由もなく無視する、人格や尊厳を傷つけるような暴言を吐く、考えを全否定する……こうした態度や言動によって相手を追い詰める精神的虐待を指す言葉です。夫婦間でのモラハラは、家庭内というクローズドな環境下で繰り返されるため、外からは見えづらいという特徴があります。外では優しく穏やかな振る舞いを見せる人が、家庭ではパートナーにモラハラ行為をする……そんな“裏の顔”をもつ人もいるのです。

 一方、「恋人・夫婦仲相談所」所長である三松真由美さんは、「モラハラ」を理由にパートナーとの離婚を考える場合、その見えづらさゆえに「気を付けなければならない」と話します。モラハラが原因で離婚を望む人たちに、たびたび弁護士を紹介してきたという専門家の“警告”とは――。

■「周囲がうらやむ幸せ家族」 しかし実際は…

 以前、卓球女子・元日本代表の福原愛さん元夫妻の話題がメディアをにぎわせていた時期がありました。当時、夫側の「モラハラ疑惑」と愛さんの「不倫疑惑」が取り沙汰されていたのです。このニュースが出てから、私の元には、「“モラハラ夫”って本当にそんなにいるものですか?」「うちの夫のケースもモラハラになりますか?」という問い合わせが多く寄せられました。

 モラハラ行為をする夫は家庭内でしか、その“顔”を見せていないケースが圧倒的多数です。表の顔を知っている人がその言動を知ると、「まさか、そんなことをあの人が?」と驚くことがよくあります。

 仲が良かった義理の両親に妻が「ある日、夫にこんなことを言われた」とモラハラ話をしたら、「あんなに優しい◯◯がそんなことを言うわけがないわ。もし本当なら、あなたが何かしたのでしょう」と言われ、一気に義父母と距離ができてしまったという話も聞きます。親やきょうだいもそんな姿を見たことがない、社会的には普通の人、しかし実態は…というケースです。

 2つの事例を見てみましょう。

 佳代さん(36歳、仮名)は30歳のとき、3つ年下の夫と結婚しました。共通の趣味であるサーフィンがきっかけで知り合い、順調な交際期間を経て、お互いの友達とも仲良くなります。家に友人を招いて、パーティーをすることもしばしば。

 2人の子宝に恵まれ、お互いの両親とも円満で、都内に家も購入。長い休みには家族旅行も欠かさない、いわゆる「周囲がうらやむ幸せ家族」に見えました。しかし実際は、夫にバカにされ続ける毎日でした。

 高学歴の夫は、専門学校卒の佳代さんを最初から見下していたようです。「佳代は本当にバカだな」「何でそんなことも知らないの?」「これ常識でしょ」という“上から目線”の言葉を、結婚前から言われていました。しかし、佳代さんは「彼は頭がいい。年下だけど頼りになる」と、逆に良い印象を持っていたのです。

 結婚後、夫の高飛車態度はますますエスカレート。特に、子どもが生まれてからは、佳代さんの意見は全て却下。子育てに関して、一切意見を言えない状態でした。

 例えば、「地元のお友達とのびのび遊ばせたいから、お受験をさせる必要はない」と思っていた佳代さん。しかし、受験させる派の夫は「佳代みたいな何も分かっていない大人になったら、結衣(3歳、仮名)が損する。おまえはたまたま俺と結婚できたからいいけど、普通は高学歴同士が結婚するものだし」と言い放ちます。佳代さんは全く反論できませんでした。

 モラハラ夫たちの共通点は、「パートナーの人格を否定している」という自覚が全くないことです。今どき、職場で言えば「パワハラだ」と訴えられるような威圧的なセリフを、日常的に家庭で口にします。全てにおいて否定され続けた佳代さんはいつしか、「自分は価値のない人間なんだ」と思うようになりました。

 ある日、佳代さんの友人が「旦那にね、『おまえバカじゃないの?』って言われて、めちゃくちゃ腹が立って、家出しようかと思った」と話しました。「えー、うちなんてしょっちゅうだよ」と話す佳代さんに、友人は「その状態はおかしい」と指摘したのです。

「あなた、腹は立たないの?」と問われ、「自分がバカだからしょうがないとのみ込んでいる」と告げると、友人は「それって、モラハラ洗脳じゃない? このままだと、うつ病になるよ」。佳代さんはその後、私の運営する恋人・夫婦仲相談所に来ました。

 佳代さんは美容師の資格を持っていましたが、現在は専業主婦。「自分は稼いでもいないし、社会の役にも立っていない。何の価値もない、夫の付属品のような存在だと感じていた」と言います。子育てに関しても、「夫に言われるがまま、子どもの世話をしている」という感覚。

 私は、「今はまだ耐えられているけど、爆発するときが近づいている」とアドバイスしました。子どもは、父親が母親を見下しているのを見て成長していきます。「『そんなもんか』と疑わずに成長したらどうしますか?」と。

 子どもが家を離れると、夫婦2人きりの張り詰めた日々を送ることになるので、いざというときのために自立の準備をしておくこと。そして夫に、「バカ」「何も知らない」と否定されて傷ついていると伝えるよう告げました。佳代さんはそれを実行し、夫に「バカと言わないでほしい」と伝えましたが、夫は全く相手にせず、態度は変わらないそうです。

■「このメス豚!」と怒る夫

 早百合さん(45歳、仮名)は50歳の夫、22歳、20歳の息子2人、18歳の娘の5人家族です。共働きのほぼワンオペで子どもたちを育ててきました。

 結婚前から、夫はあまりしゃべるタイプではなかったそうですが、子どもが生まれてからはそれが加速し、早百合さんが何を言っても、ほぼ無言。子どもに関わる重要な決定を求めたときでも、「いいんじゃない」とどうでもいいような態度。しつこく聞くと「うるさい!」と怒鳴る。「何を考えているのかいまだに分からない」と早百合さんは言います。

 そんな夫ですが性欲はあるそうで、2週間に1度、必ず金曜か土曜の夜に早百合さんを求めてきます。ムードも何もなく無言で腕を引っ張る、それが合図です。早百合さんも義務的に応じていましたが、最近はホルモンバランスも崩れつつある年頃なので、つらいときは断るようにしました。

 ある日の夜、腕を引っ張られたときに「体がだるいから無理」と断ると、夫は「このメス豚!」と怒ったというのです。あまりのショックに、早百合さんはしばらく涙が止まらず、「長い人生、そんなひどい言葉を言われたのは初めて」と立ち直れませんでした。

 現在、早百合さんは「子どもたちが巣立った後に離婚して自由になろう」と、節約と貯金に努めています。無料の離婚相談にも行ったそうです。無視、いきなりキレる、性処理の対象にする(愛のない営みを強要)、傷つく言葉を投げる――これらが日常的に続くのはモラハラの域です。

■モラハラ夫との離婚で「気を付けないといけないこと」

 モラハラ夫たちはなぜ、そのような態度を取るのか。

 多くの妻は「自分が◯◯だから」と自分自身に理由をつけ、自らを責めます。それが自分の精神を安定させて守るすべでもあるのですが、モラハラ夫の態度に、妻の心中は関係ありません。

 モラハラをする側は「そういう言動をしてもいい相手」とパートナーを見下し、そうした態度を取っています。下に見ていることにも気付いていません。どんな人もさげすまれたり、否定的な言動をされたり、無視されたりして平気なわけがありません。それがたとえ、結婚相手や恋人だったとしても嫌なものは嫌です。

 一般社会で、周囲にそのような言動をする人がいたらドン引きでしょう。それが「結婚相手やパートナーだからOK」ということは、決してありません。現在の2人の状態に苦しさを感じているのなら、関係を一度見直してください。自分の態度や相手へのアプローチの変化によって相手の態度が変わるのなら、改善傾向です。

 しかし、もし離婚を考えるなら、気を付けなければなりません。DVと違って、モラハラは目に見えにくいものです。離婚を申し立てたときにもめることも視野に入れ、言動を録音したり、記録を取ったりして、しっかりと証拠を残すようにしてください。

 私は、モラハラが原因で離婚を希望する人たちに弁護士を幾度となく紹介していますが、夫側から出てくるのは次のような言い訳です。

「あんなの、どこの夫婦でも言い合う言葉だ」

「安心して本音が言える相手だから、本音を言っているだけだ」

「10年以上一緒に暮らしているんだから、気軽に何を言ってもいいでしょう」

「ジョークで言っているのが分からないのか」

「私が悪いからしょうがない」と思っている妻の皆さん、愛情表現やジョークと、モラハラ発言の境目が分からない夫たちがいることに気付いてください。「嫌なものは嫌」と言える自分になるために何を始めればいいかを考え、思考停止状態から抜け出してください。全ての夫婦やカップルが、お互いに安心して暮らせることを願います。

「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美

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