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自宅で現金の保管「タンス預金」 必ず税務署にバレる? ペナルティーのリスクを税理士に聞く

オトナンサー 2024年8月1日 7時10分

 銀行に預けずに、自宅で現金を保管する行為は「タンス預金」と呼ばれています。好きなときにお金を使えるようにするため、現金をタンスの引き出しや金庫などに入れて保管している人は多いと思います。

 ところで、長年、自宅でためてきたお金を子どもや孫に譲り渡す人がいますが、この場合、贈与税が課される可能性はあるのでしょうか。タンス預金が課税の対象であるにもかかわらず、適切に申告せず、納税をしなかった場合、税務署にバレる可能性はあるのでしょうか。

 タンス預金に関するペナルティーのリスクについて、税理士法人小原会計(東京都渋谷区)パートナーで、公認会計士・税理士の小原崇史さんに聞きました。

■正しく申告しないとペナルティーの可能性

Q.そもそも、どのような行為が「タンス預金」に該当するのでしょうか。また、タンス預金にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

小原さん「『タンス預金』とは、銀行やその他の金融機関に預けず、自宅のタンスの引き出しや押し入れ、金庫など、手元で現金を保管する行為を指します。タンス預金が行われる理由はいくつかあります。

まず、銀行に預けることで生じる利息が低いことが一因です。特に、近年の低金利政策の影響で銀行預金の利息がほとんど期待できないため、手元に現金を置いておくケースが増えています。また、金融機関に対する信頼感の低下や、急な支出に備えて現金をすぐに利用できるようにするためにタンス預金が行われることもあります。

具体的な例を挙げると、毎月の給与の一部を現金で引き出して自宅の金庫に保管する場合のほか、ボーナスなどの一時金をそのまま現金で手元に置いておく場合などがあります。災害時の備えとして一定額の現金を保管しておく人も多くいます。これらはすべてタンス預金に該当します」

Q.タンス預金でたまった現金に対して、相続税や贈与税などが課される可能性はあるのでしょうか。

小原さん「タンス預金も他の財産と同様に、相続税や贈与税の対象となります。相続や贈与の際には、現金や預貯金、株式、不動産などの全財産が合計され、一定の基準に達した場合に税が課されます。

まず、相続においては、被相続人(亡くなった人)の全財産が対象となります。タンス預金もこれに含まれます。例えば、被相続人の自宅に保管されていた現金は、相続財産として申告しなければなりません。

また、相続税の基礎控除額は『3000万円+(600万円×法定相続人の数)』で計算します。相続時にこの基礎控除額を超える金額を受け取った場合は、相続税の申告が必要です。例えば、相続人が配偶者と子ども2人の計3人の場合、基礎控除額は『3000万円+(600万円×3人)』で、4800万円です。この場合、相続財産の合計金額から基礎控除4800万円を控除した後の金額が課税対象となります。

贈与に関しても同様です。年間110万円を超える贈与が行われた場合、その超過分について贈与税が課されます。例えば、親が子どもや孫に対して、毎年一定額の現金を贈与する場合、その金額が110万円を超えると贈与税の申告が必要になります。

よくある事例として、親が長年コツコツためた現金を子どもや孫に贈与する場合があります。この場合、適切な申告を行わないと、後に税務調査で発覚し、追加の税金が課されたり、ペナルティーが科されたりする可能性があります。特に、相続発生後に突然、自宅で大量の現金が見つかった場合、それが被相続人の財産であると判断され、相続税の対象となることが多いです」

Q.では、タンス預金が相続税や贈与税などの対象であるにもかかわらず、税務署に申告せず、税を納めなかった場合、どのようなペナルティーを科される可能性があるのでしょうか。

小原さん「タンス預金が相続税や贈与税の対象であるにもかかわらず、適切に申告せず税を納めなかった場合、税務当局から厳しいペナルティーが科される可能性があります。具体的には、次のようなペナルティーが考えられます」

(1)過少申告加算税
申告期限内に提出した相続税や贈与税の申告書に記載されていた財産額や税額が、本来申告すべき金額より少なかった場合に課される加算税です。申告漏れがあった場合に、修正申告をする際や税務署からの更正を受けたときに課されます。

税率は通常、追加納付税額に対して10%となります。追加納付税額が「50万円」または「期限内に申告した税額」のいずれか多い部分を超えた額に対しては、15%の税率が課されます。

例えば、本来申告すべき税額が250万円だったにもかかわらず、100万円しか申告していなかった場合、修正申告により150万円を追加で納付しなければなりません。このうち、50万円に対しては15%、100万円に対しては10%の税率がそれぞれ課されます。

(2)無申告加算税
期限後申告や税務署からの税額の決定を受けた際に課される加算税です。税率は納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円超の部分には20%の税率がそれぞれ適用されます。

(3)延滞税
相続税や贈与税の納付期限までに税金を納付しなかった場合、利息に相当するものとして自動的に課されます。延滞税は、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課されます。納付期限の翌日から2か月を経過する日までは、年7.3%と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合、納付期限翌日から2カ月を経過した日以降は、年14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合がそれぞれ課されます。

(4)重加算税
相続税の対象となる財産を意図的に隠したり、事実を仮装したりするなど悪質な場合に課されるものです。申告書を提出していた場合は35%、申告書を提出していない場合は40%の税率がそれぞれ課されます。

あまりにも悪質な脱税行為であれば、最悪の場合、刑事罰として懲役刑になる可能性もあります。

■タンス預金は税務署にバレる?

Q.税務署にタンス預金がバレる可能性はあるのでしょうか。

小原さん「タンス預金は見つけにくいと思われがちですが、実際には税務署の調査によって発覚する可能性があります。税務署は、国税総合管理システム(KSKシステム)で納税者の財産や過去の納税情報を管理しています。この情報を利用して、税務調査の対象を選定しており、提出された相続税の申告書と過去税務関連データや資産購入履歴などの個人情報を比較して、明らかに申告額が少ないと考えられる場合に申告漏れを疑い、税務調査を行います。

相続税の税務調査では、被相続人の財産状況を詳しく調査します。税務調査では、被相続人や家族の銀行口座についても、相続開始10年分までチェックします。銀行口座の現金の出入りが不自然な場合、税務署はそれを注視します。多額の現金の入出金が頻繁に行われている場合は、それがタンス預金である可能性を疑います。

また、相続発生後に突然大量の現金が見つかった場合、それが被相続人の財産として申告されていなければ、税務調査の対象となります。

こうした理由から、タンス預金は必ずしもバレにくいものではなく、適切な申告を行わないと後に大きな問題となる可能性があります。相続税や贈与税の申告については、バレるかバレないかではなく、全財産を正確に把握し、適切な申告を行うことが重要です」

オトナンサー編集部

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