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夏に「冷え性」なぜ? 甲状腺&血管に問題も 改善法8選を専門家が解説

オトナンサー 2024年8月28日 7時10分

 「冷え性」と聞くと、秋から冬にかけてなりやすい印象がありますが、中には、夏に冷え性に悩まされる人がいます。この場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。冷え性を改善するには、どういった取り組みが有効なのでしょうか。気温が高い時期に冷え性になる原因や改善法などについて、東洋医学にも詳しい、薬剤師の箕浦雅子さんに聞きました。

■自律神経が乱れると体温調節機能が低下

Q.気温が高い夏に冷え性に悩まされる人がいますが、どのような原因が考えられるのでしょうか。

箕浦さん「東洋医学に用いられる五行学説では、夏は『火』の季節であり、心臓と小腸の経絡が影響を受けやすいとされています。また、五行学説の観点から見ると、過度な熱が冷えと結びつくこともあります。

例えば、暑さに対応するために、体が過剰に冷やそうとしたり、逆に熱を持ち過ぎてエネルギーが消耗されたりすることで、結果として体の冷えが生じることもあります。一般的に夏に冷えが起きる原因として、次のようなことが挙げられます」

(1)冷房の影響
夏はエアコンや扇風機を使用することが多いですが、冷房の冷たい空気は下に落ちるため、特に足元が冷え過ぎることがあります。また、室内と屋外との温度差が大きいと、体温調節が難しくなり、体が冷えやすくなります。

(2)冷たい飲食物の摂取
暑い時期は、熱中症予防のために冷たい飲み物やアイスクリームなどを多く摂取しがちです。しかし、これらは体を内側から冷やし、血流を悪くすることがあり、結果的に冷えを引き起こすことがあります。

(3)汗による冷え
夏場にたくさん汗をかくと、その汗が蒸発する際に体温が下がり、体が冷えることがあります。特に汗をかいた後、エアコンの効いた場所に入ると、急激に体温が下がりやすいです。

(4)自律神経の乱れ
夏は気温や湿度の変化が激しく、自律神経が影響を受けやすい季節です。自律神経が乱れると、血液循環や体温調節がうまく機能しなくなり、体が冷えやすくなります。

Q.夏に冷え性になりやすい場合、何らかの病気の可能性はあるのでしょうか。

箕浦さん「冷えそのものが病気というわけではありませんが、体調のバランスが崩れているときに、体が冷えることがあります。また、冷えは万病のもとといわれているため、注意が必要です。

夏に冷え性になりやすい場合、『自律神経失調症』『甲状腺機能低下症』『貧血』などが関係している可能性があります。順番に説明します」

(1)自律神経失調症
自律神経失調症とは、自律神経がうまく働かない状態を指し、これにより体温調節機能が乱れやすくなります。すると、夏の気温変化に体が対応できず、冷えやすくなることがあります。自律神経失調症は、ストレスや生活リズムの乱れによっても引き起こされることがあります。

(2)甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンが不足すると代謝が低下し、体が冷えやすくなります。特に夏でも寒さを感じる場合、甲状腺の機能に問題がある可能性があります。

(3)貧血
血液中のヘモグロビンが不足すると、酸素を全身に十分に供給できなくなり、手足が冷えやすくなります。夏でも冷えを感じる場合、貧血が疑われることがあります。

(4)低血圧
血圧が低いと血液の循環が悪くなり、特に手足の末端部分が冷えやすくなります。夏場に冷房の効いた場所に長時間いると、さらに症状が悪化することがあります。

(5)糖尿病
糖尿病によって血管や神経が損傷すると、血流が悪くなるため、夏でも手足に冷えを感じやすくなります。

(6)循環器系に問題
心臓や血管に問題があると、全身に十分な血液が送られず、冷えを感じることがあります。これは特に高齢者や既往症のある人に見られることがあります。

(7)更年期障害
特に女性の場合、更年期に入るとホルモンバランスが崩れ、体温調節が難しくなります。その結果、夏でも冷えを感じることがあります。

(8)栄養不足
栄養が偏った食事を続けると、エネルギー不足や代謝の低下が起こり、冷えやすくなることがあります。ビタミンやミネラルの不足は、エネルギー代謝に影響することがあります。

これらの症状がある場合は、自己判断せずに医師の診療を受けることをお勧めします。冷え性が続く場合のほか、疲労感やめまい、体重の変動など、他の症状とともに冷え性が現れる場合は、早めの診断と適切な治療が重要です。

■夏の冷え性を改善するには?

Q.夏の冷え性を改善するには、どのような対策が有効なのでしょうか。

箕浦さん「夏の冷え対策として、『冷房の使い方を見直す』『衣類で調整』などが効果的です。これらの対策を取り入れることで、体温調節を助け、冷えを防ぐことができます」

(1)冷房の使い方を見直す
冷房の設定温度は26~28度と高めにするとともに、冷たい空気が下にたまらないよう、サーキュレーターを使って循環させましょう。また、冷房のタイマー機能を使用し、部屋が冷え過ぎないように調整してください。エアコンや扇風機の風が直接、体に当たらないように風向きを調整することも大切です。

(2)衣服で調整
室内で過ごす際は、薄手のカーディガンやストールを持ち歩き、冷えを感じたときに羽織るようにします。特に手首や足首、首といった『三首』には太い血管が集まっているため、ここを温めると、全身の冷えを防ぐ効果があります。靴下やリストバンド、レッグウォーマー、ネックウォーマーなどを活用すると効果的です。

(3)温かい飲み物を摂取する
冷たい飲み物は体を冷やす原因になるため、常温か温かい飲み物を選ぶようにします。ショウガ湯やハーブティー、黒焼き玄米茶、温かいお茶などがお勧めです。カフェインを多く取ると冷えやすくなる可能性があるため、なるべくノンカフェインの飲み物を選ぶのをお勧めします。

(4)食生活の改善
夏でも温かい食事を心掛け、体を内側から温める食材を取り入れましょう。例えば、鶏肉やショウガ、ニンニク、ネギ、唐辛子(少量)など、体を温める効果がある食材を使って調理するのもよいでしょう。ニンジンや大根、ゴボウといった根菜類は体を冷やしにくく、スープなどに調理すると、消化にも優しいのでお勧めです。また、山芋(長芋)や海藻類なども体を温める効果があります。

(5)入浴で体を温める
夏でも入浴の際は、湯船につかりましょう。38~40度のぬるめのお湯にゆっくりとつかることで、リラックスしながら体の芯から温まることができます。

(6)適度な運動
運動によって血流が良くなり、冷えが改善されます。朝の時間に軽い運動をすることで代謝が上がり、一日中冷えにくくなるため、起床直後の軽いストレッチやヨガなどは効果的です。時間がない場合は、かかと上げ運動やふくらはぎストレッチなど、隙間時間を使った軽い運動でも良いでしょう。

(7)自律神経のバランスを整える
規則正しい生活リズムを心掛け、睡眠を十分に取ることで自律神経のバランスを整えることができます。就寝前にスマホを使わないことも、睡眠の質を上げます。また、ストレスをためないように、リラックスする時間や趣味の時間を持つことも大切です。

(8)ツボ押しやマッサージ
冷え性に効果があるツボを押すことで、血行が良くなり、冷えが和らぐことがあります。例えば、足の内くるぶしの頂点から指4本分上がったところで、骨と筋肉の境目にある『三陰交(さんいんこう)』のほか、親指と人さし指の間のくぼみにある『合谷(ごうこく)』などを押すのが効果的です。また、足湯やマッサージも血行促進に役立ちます。

これらの方法を組み合わせて行うと、冷えの改善につながっていくと思われます。

オトナンサー編集部

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