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激しい“せき”出る「マイコプラズマ肺炎」流行 “家庭内感染”のリスク&対処法 呼吸器専門医に聞く

オトナンサー 2024年9月17日 7時10分

 今年は、激しいせきの症状を引き起こす「マイコプラズマ肺炎」の患者数が、全国的に増加傾向にあります。マイコプラズマ肺炎は、子どもがかかりやすい病気といわれていますが、もし自分や家族が感染した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

 マイコプラズマ肺炎の感染経路や家庭内感染のリスクのほか、かかった場合の対処法などについて、草ヶ谷医院(静岡市清水区)・院長で、呼吸器専門医・指導医の草ヶ谷英樹さんに聞きました。

■接触感染で発症するケースが多い

Q.マイコプラズマ肺炎とはどのような病気でしょうか。発症の原因や主な症状、発症しやすい人の特徴などについて、教えてください。

草ヶ谷さん「マイコプラズマ肺炎とは、『肺炎マイコプラズマ』という細菌によって引き起こされる肺の感染症です。マイコプラズマは一般的な細菌と異なり、細胞壁を持たないため、一般的によく用いられる『βラクタム系』の抗生物質が効かないという特徴があります。

初期にせきや発熱など、風邪に似た症状が見られますが、その後はせきが激しくなります。特に乾いたせきが続くのが特徴です。子どもや若い成人が発症するケースが多いほか、基礎疾患がない健康な人でも感染します。

主に秋から冬にかけて流行する傾向にありますが、2024年の場合、7月から流行するようになり、過去5年間の平均を上回る感染者数が報告されています。流行の原因としては、ウイルスや細菌の流行周期や環境要因が影響していると考えられますが、詳細な原因は明らかになっていません」

Q.もし自分や家族がマイコプラズマ肺炎にかかった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

草ヶ谷さん「マイコプラズマ肺炎は、接触感染や飛沫(ひまつ)感染を通じて他の人にうつる病気で、特に学校や家庭など、閉鎖的な環境での濃厚接触による感染が多いとされています。

飛沫感染でもかかりますが、どちらかというと接触感染でかかるケースの方が多く、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスほど感染が容易に広がることはありません。

対処方法ですが、ご自身や家族が感染した場合、感染者本人と他の家族との接触をできるだけ避けることが重要です。感染者にせき症状がある場合はマスクを着用させ、せきによる飛沫が飛び散らないように配慮することが大切です。

また、家族は感染者本人と同じ部屋で過ごす頻度を減らし、手洗いを徹底することをお勧めします。感染者が使用した物品は適切に消毒し、換気を良くすることも感染拡大を防ぐ上で有効です。

手洗いのほか、せきの症状があればマスクを着用させ、密接な接触を避けることが基本的な予防策です。特に感染が強く疑われる場合は、家庭内でもこれらの対策を徹底することが大切です」

Q.通常の風邪とマイコプラズマ肺炎を見分ける方法はあるのでしょうか。医療機関を受診する目安も含めて、教えてください。

草ヶ谷さん「マイコプラズマ肺炎は、先述のように風邪のような初期症状が出るほか、『乾いたせきが続く』『夜間や早朝にせきが悪化する』といった特徴があります。画像検査では、特にCT検査でマイコプラズマ肺炎を疑う特徴的な所見がある場合がありますが、これらの症状や画像所見だけで確定診断することはできません。別の病気でも似たような経過や画像所見を取ることがあるからです。

培養検査や核酸同定検査(PCR法やLAMP法)など、あるいは血液検査でマイコプラズマに対する抗体の値が、感染初期と数週間後で一定以上、上昇していることなどが診断根拠になりますが、これらが判明する頃には治療が終了していることもあり、特に成人の場合、厳密に確定診断の検査まで実施しない(実施できない)こともあります。

マイコプラズマ肺炎に限りませんが、3週間以上せきが続く場合のほか、せきが激しくなってきた場合は、通常の風邪によるせきとして様子を見ることをせず、医療機関を受診することが推奨されます。特に呼吸器内科専門医が在籍する医療機関やせきの診療を得意とする医療機関を受診するのが良いでしょう」

Q.マイコプラズマ肺炎にかかった場合、どのような方法で治療するのでしょうか。また、症状は何日程度で治まる傾向にあるのでしょうか。

草ヶ谷さん「マイコプラズマ肺炎の治療には、『マクロライド系抗菌薬』が主に使用されます。しかし、この薬に対する耐性菌が増えているため、『テトラサイクリン系』『ニューキノロン系』の抗菌薬が用いられることもあります。

高熱や全身の倦怠(けんたい)感などの強い症状が出た場合、通常抗菌薬を使用してから3日程度で軽減し、1週間程度で改善することが多いですが、せきが長引くことがあります」

Q.マイコプラズマ肺炎にかかった場合、せきの症状がある程度、治まるまでは登校や出勤を控えた方がよいのでしょうか。

草ヶ谷さん「マイコプラズマ肺炎に関する公的な出勤停止期間は、特に定められていません。激しいせきが続き、発熱などの全身症状が続いている間は、他者に感染を広げるリスクが高いため、登校や出勤を控えるのが望ましいでしょう。

ただし、せきは長引くことも多いため、完全に治癒するのを待つと数週間かかってしまいます。解熱し、全身状態が改善した後は、感染を広げるリスクが低減しているため、登校や出勤は許容されると思いますが、せきの症状が残るときは飛沫の拡散を防ぐためにマスクを着用するなど、せきエチケットに配慮していただくのが大切です」

Q.ちなみに、マイコプラズマ肺炎と新型コロナに同時感染する可能性はあるのでしょうか。

草ヶ谷さん「理論的には、同時感染する可能性があります。実際に重症の新型コロナウイルス肺炎が問題となった2020~2021年には、臨床上鑑別を要し、詳しく検査をした結果、重複感染であったという報告もあります。

現在、新型コロナウイルス感染症は軽症の風邪症状で治癒するケースが多く、重症化を来した一部の症例を除き、マイコプラズマ肺炎との鑑別を積極的に実施する例は成人では減っていると思われます」

オトナンサー編集部

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