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「ずっと無視される」「もう疲れた」…夫や妻の「不機嫌ハラスメント」で離婚できるの?【弁護士解説】

オトナンサー 2024年10月4日 7時10分

 自分が「不機嫌」であることを表情や口調、態度などに出し、周囲に気を使わせたり、不快感を与えたりする「不機嫌ハラスメント」、いわゆる「フキハラ」という言葉が徐々に知られるようになってきました。家庭内において、パートナーのフキハラに苦しんでいる人も少なくなく、ネット上などでは「夫が不機嫌になったら、いつもずっと無視されます」「妻のフキハラが最近エスカレートしてきて、もう疲れた」「離婚できるならしたい」といった深刻に悩む声も聞かれます。

 佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士は、フキハラでの離婚について「法的に可能」とするも、フキハラ“だけ”を理由に離婚するのは難しいケースもあると指摘します。パートナーのフキハラに悩む人が離婚するにはどうすればいいのか、詳しくご解説いただきました。

■相手が離婚に応じなければ…

 結論からいいますと、暴力などの直接的な行為ではない「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」で離婚をすることは、法的に可能です。夫婦の話し合いにより、お互いが納得して離婚する場合には、どんな理由であっても離婚できるからです(民法763条)。慰謝料の支払いを含め、離婚の条件についても、双方の話し合い次第になります。

 ただし、相手が離婚に応じない場合、「フキハラ」だけを理由に離婚するのは難しいと考えられます。

 離婚について、話し合いが成立しない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停では、夫婦双方が顔を合わせることなく、調停委員を介して話し合いを進めることができます。離婚調停が成立すれば、離婚条件などについて調書がまとめられ、離婚が成立します。

 調停が不成立となると、家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、判決によって離婚を認めてもらうことになります。裁判で離婚を認めてもらうためには、「法定離婚事由」が必要になります。法定離婚事由には次の5つがあり(民法770条1項)、いずれかが認められる必要があります。

(1)不貞行為
(2)悪意の遺棄
(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないこと
(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があること

 フキハラは(1)〜(4)には当てはまらないため、(5)に当たるか否かが問題になります。「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」とは、婚姻中の一切の事情を考慮しても、婚姻関係が破綻しており、修復の見込みがないことをいいます。そのため、「相手が突然不機嫌になる」「相手の不機嫌にしょっちゅう振り回される」といった事情があり、そのせいでけんかが絶えない状況があったとしても、それだけで直ちに「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」が認められるわけではありません。

 それに加え、例えば、別居期間が何年も続いていたり、夫婦としての会話や関係が一切なかったりなど、さまざまな状況を踏まえて、総合的に婚姻関係の破綻が認められるかどうか判断されます。

 一定の暴言などを伴う、ある程度深刻なフキハラだったとしても、それだけで裁判上の離婚は認められない可能性が高いといえるでしょう。

■“準備”を行うことで有利に?

 フキハラの場合の慰謝料請求については、事案によって裁判で認められるかどうかが異なります。

 例えば、不機嫌になった際、人格を否定するような暴言があり、それが継続したために大きな精神的苦痛を被っているようなケースでは、慰謝料請求が認められる可能性もあると思います。

 一方で、フキハラといっても「性格が気分屋なだけ」と評価されれば、慰謝料請求は認められないでしょう。

 では、「フキハラ」を理由に離婚したいと考える場合、どうすればいいのか――。実は、“準備”を行うことで有利になる可能性もあります。

 相手が離婚に応じてくれない場合、フキハラだけでは裁判で離婚が認められにくいので、夫婦間にあるさまざまな問題の証拠を残すようにしましょう。例えば、「不機嫌になったときに暴言を吐く」「不倫の疑いがある」「暴力を振るわれることがある」といったことです。

 不機嫌なときの言動の録音・録画、その日の出来事を書き留めた日記などは、有力な証拠になります。「別居を開始・継続する」といった具体的な行動を始めることも大切です。

オトナンサー編集部

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