「ボンカレー」で有名な大塚食品(大阪市中央区)が販売する無糖紅茶飲料「シンビーノ ジャワティストレート レッド」が、今年で発売35周年を迎えました。砂糖や香料などを一切使わず、インドネシア・ジャワ島産の茶葉だけで製造しているのが特徴で、SNS上では「甘くないのが好き」「濃くてうまい」などの声が上がっています。
そもそも、なぜ「ジャワティ」を開発したのでしょうか。開発経緯やロングセラーの要因などについて、同社製品部部長兼飲料チーム リーダーの小林一志さんに聞きました。
■米国のアイスティーに衝撃
「ジャワティ」のラインアップ(大塚食品のホームページより)
Q.無糖の紅茶飲料「シンビーノ ジャワティストレート レッド」を開発した経緯について、教えてください。商品名の「シンビーノ(sinvino)」は、どのような意味なのでしょうか。
小林さん「商品名の『シンビーノ(sinvino)』は、スペイン語の『~ない』を意味する『シン(sin)』という言葉と、同じくスペイン語で『ワイン』を意味する『ビーノ(vino)』という言葉を組み合わせた、当社の造語です。直訳するとワインじゃない、つまり『ノンアルコール飲料』を表します。
もともと、当社はお酒を飲めない人も楽しめるテーブルドリンクを作りたいという思いがあり、1982年に『シンビーノ アップル』という、甘みのあるノンアルコール飲料を発売しました。商品自体は好評でしたが、食事にも合う無糖のテーブルドリンクの需要を感じました。
その後、無糖の紅茶飲料であるジャワティの開発が始まるきっかけとなったのは、1988年に当時の大塚食品の社長が、アメリカのある企業の研究所の竣工(しゅんこう)式に招かれたことです。大塚が式の昼食会で提供されたアイスティーを飲んだところ、『ものすごく食事に合う』と衝撃を受け、ぜひ食事に合う紅茶飲料を日本で販売したいと考え、開発が始まりました。
その後、『食事に合うテーブルドリンクとしての味わい』『茶葉本来の穏やかな香り』『すっきりとした色合い』の3点の条件を満たす茶葉を求め、世界各地のさまざまな場所を探し回った結果、インドネシア・ジャワ島産の茶葉がこれらの条件に合致することが分かりました。
ジャワ島産の厳選した茶葉のみを使い、当社独自の製法により、無糖で鮮やかな琥珀(こはく)色の紅茶飲料を開発し、1989年にジャワティとして発売しました。商品名のジャワティは、ジャワ島の茶葉を原料に使用していることに由来します」
Q.「シンビーノ ジャワティストレート レッド」を1989年に発売後、評判や売れ行きはいかがでしたか。
小林さん「発売当時は、国内で無糖の紅茶飲料があまり販売されていなかったこともあり、大きな注目を集め、多くのお客さまにご購入いただきました。お客さまからは『濃い味わいが食事に合う』『他にはない紅茶商品』などと好評で、1990年代に売り上げが大きく伸びました。
その後、他社も無糖の紅茶飲料を発売するようになり、飲料業界では無糖の紅茶飲料がブームになりました。1990年代ほどではありませんが、現在も売り上げが堅調に推移しております」
Q.「ジャワティ」が食事によく合うのはなぜなのでしょうか。
小林さん「口の中をすっきりさせ、味の感覚をリセットする効果があるとされるポリフェノールを豊富に含んでいるからです。ジャワティストレート レッドには500ミリリットル当たり300ミリグラムのポリフェノールが含まれており、ワイン100ミリリットル当たりのポリフェノール量(280ミリグラム)を上回ります(ワインのポリフェノール量について:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構のホームページより)。
例えば、料理を食べているときにジャワティを飲むと、ポリフェノールの働きにより口の中がリセットされ、クリアな状態となります。その後、同じ料理や別の料理を食べたときに、前の食べ物の余韻がなく新鮮に味わえるため、料理の味がより引き立つのです」
Q.2011年に「シンビーノ ジャワティストレート ホワイト」(以下、ホワイト)を発売したのはなぜなのでしょうか。ジャワティストレート レッドとの違いも含めて、教えてください。
小林さん「時代とともに料理が多様化したことや、お酒を飲まない人が増加したことが主な理由です。当社は、『さまざまな食事によく合うテーブルドリンク』というコンセプトでジャワティを製造していますが、和食のような繊細な味わいの料理にも合う商品を作りたいと考えました。
そこで、2011年に瓶入りのレッドに加え、ホワイトを発売し、翌年にはペットボトルタイプのホワイトも発売しました。瓶入りの商品は主に飲食店向けに販売しているほか、一部の百貨店や通販サイトなどでも取り扱っており、より品質の高い茶葉を使用しているのが特長です。ペットボトルタイプの商品とは違った味わいが楽しめます。
レッドとホワイトの基本的な違いは、茶葉の発酵度合いです。茶葉を100%発酵させたものが紅茶と呼ばれており、レッドも茶葉を完全に発酵させて製造したものです。肉料理のようなこってりとした料理と特によく合います。
一方、ホワイトに使用している茶葉は、茶の枝の先端部分の芯芽(シルバーニードル)と一葉のみを微発酵させて製造した製品です。香りが良く、柔らかい味わいに仕上げており、刺し身や煮物などの和食とよく合います」
■ロングセラーの要因は?
「らぁ麺 飯田商店」の店主、飯田将太さん(大塚食品提供)
Q.「シンビーノ ジャワティストレート レッド」がロングセラー商品に成長したのはなぜなのでしょうか。考えられる要因について、教えてください。
小林さん「一番の大きな要因は、発売当初から『ノンアルコールで、食事によく合う無糖の紅茶飲料』というスタンスを継続してきたことだと思います。当社は一つのブランドを大事に育て上げていくという経営方針を掲げており、ジャワティもこうした方針のもと、販売を続けてきました。
時代に応じてパッケージのデザインをリニューアルしていますが、『無糖、無香料』であることに変わりありません。発売当初からの変わらない姿勢が多くのお客さまに支持をされているのだと捉えております」
Q.今後の課題について、教えてください。
小林さん「10代から30代までの若いお客さまの購入頻度を高めることが課題です。例えば、レッドの購入者の半数以上は、40代半ばから50代の男性で、発売当時から愛飲いただいているお客さまが多い状況です。ホワイトは女性が購入するケースも増えつつありますが、商品の認知度はそれほど高くないと感じています。
そこで、当社が考えたのが外部のイベントとの連携です。毎年、秋になると、全国的に評価が高いベーカリーやラーメン店などが集い、国内で収穫されたばかりの小麦である“新麦”を使ったパンやピザ、ラーメンなどを販売する『麦フェス』と呼ばれるイベントが行われます。当社はこのイベントに協賛という形で参加しており、来場するお客さまにジャワティを提供し、商品の認知度向上を図っています。
麦フェスに出店するベーカリーやラーメン店などの店主からは、『ジャワティが商品と良く合う』『商品と一緒に販売したい』などの評価をいただいており、うれしい限りです」
なお、毎年、麦フェスには、人気ラーメン店の「らぁ麺 飯田商店」も出店しており、ラーメンを食べる際にジャワティを飲むよう、勧めているということです。
店主の飯田将太さんは、ジャワティとの出合いについて、「コロナ禍の時期にラーメンの新商品を開発している際、たまたま『ジャワティ』を飲んだところ、口の中がリセットされ、味覚が研ぎ澄まされるような感覚を覚えました。その後、ラーメンを試食したところ、素材の味わいをより感じられるようになり、とても驚いたのをはっきりと覚えています」と教えてくれました。
その上で「ラーメンを作る際は、素材の味わいを確認するために、味覚をクリアな状態にしておく必要があります。ジャワティには味覚をリセットする効果があり、現在もラーメン作りの際によく飲んでいますね」と、ジャワティを高く評価しています。
オトナンサー編集部