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飲食店で「オンライン会議」 音声丸聞こえで“機密情報”漏洩 法的リスクは?

オトナンサー 2024年10月28日 7時10分

 カフェやファストフード店などの飲食店に行くと、パソコンでオンライン会議をしている人を見掛けることがあります。中には、周囲の人に聞こえるほどの音量で話す人もいて、SNS上では「店でオンライン会議をするのはやめてほしい」「音声ダダ漏れ」「個人情報、機密情報は大丈夫?」という内容の声が上がっています。

 飲食店でのオンライン会議がきっかけで、勤務先や取引先の機密情報が漏れてしまった場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

■懲戒処分の可能性も

Q.飲食店でオンライン会議や商談などをしたことが原因で、勤務先や取引先の機密情報が漏れてしまった場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「会社の機密情報は『営業秘密』として、不正競争防止法によって法的に保護されています。近年、転職先で営業秘密を不正開示した刑事事件がメディアで報じられることが多いですが、不正競争防止法により、刑事責任(懲役や罰金などの罰則)を社員に負わせるためには、『故意の開示』という条件が必要になります。

そのため、飲食店のように周囲の人に会話の内容が聞き取られる恐れのある場所にいて、大きな声で会話をするなど、周囲の客に対する注意が不十分だった結果、機密情報が漏えいした場合、不正競争防止法の罰則は適用されず、刑事責任は負いません。

しかし、周囲に注意を払うのが困難な環境で不注意に情報を漏えいし、会社に損害を与えた場合には、過失(不注意)があったとして、不正競争防止法4条に基づき、損害を被った企業に対し、損害賠償責任や差し止め責任を負う可能性があります。

また、会社の社員は、企業の機密情報に関して、会社と守秘義務契約を締結していたり、就業規則で第三者への不正開示が禁止されていたりします。守秘義務契約を締結している場合のほか、就業規則で過失(不注意)での機密漏えいを違反行為としている場合、社員は守秘義務契約や就業規則で、損害賠償請求されたり、懲戒処分を科されたりする可能性があります。

以上のことを踏まえ、機密情報を保有する会社の社員が、外部の飲食店で注意を一切払わずに、周囲の人に聞こえるほどの声で会社の機密情報を話したと仮定します。

その際、たまたま店にいた競合他社の社員がその機密情報を聞きつけて利用し、機密情報を保有する会社がそれによって損害を被ったことが証明される場合には、過失(不注意)があったとして、情報漏えいの原因となった社員は当該会社に対して、不正競争防止法4条に基づき、損害賠償責任や差し止め責任を負う可能性があります。

真偽は不明ですが、X社で栄えている地方都市で、客のほとんどがX社の社員という飲食店があり、競合他社の社員が情報入手を目的にその飲食店を訪れるという話を聞いたことがあります。こうしたケースはあり得ない話ではありません」

Q.もしも取引先が飲食店でオンライン会議を行ったことがきっかけで自社の機密情報が漏れた場合、賠償請求することは可能なのでしょうか。

牧野さん「飲食店の個室やオンライン会議専用のブースなど、周囲の人に会話の内容が聞こえない環境でオンライン会議を行った場合、情報が漏えいしても合理的な注意を払っていたと見なされ、通常は過失(不注意)が認められず、不正競争防止法4条に基づく損害賠償責任を負うことはないでしょう。

ただ、周囲の人に会話の内容が聞こえる場所でオンライン会議を行った場合、注意が不十分だったとして、不正競争防止法4条に基づき、取引先に損害賠償を請求できる可能性があるでしょう」

Q.このほか、飲食店の無料Wi-Fiを使ってパソコンで仕事をしている際に機密情報が漏えいしたとします。この場合、法的責任を問われる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「無料Wi-Fiのセキュリティーの状態にもよりますが、通常は無料Wi-Fiでも一定のセキュリティーが備えられていることが考えられるほか、無料Wi-Fiの利用によって情報の漏えい事件が起こっても、必ずしも『注意が不十分だった』とは判断されないケースも想定されます。そのため、不正競争防止法4条に基づき、損害賠償責任を負うことはないでしょう」

オトナンサー編集部

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