「体にいい」「栄養豊富」といわれている食材も、食べ過ぎてしまうと弊害を招きかねません。食べ過ぎることで、体への何らかの悪影響が懸念される食材について、管理栄養士の岸百合恵さんに注意点を教えていただきました。今回の食材は、朝食やおやつに重宝する果物「バナナ」です。
■バナナは高カロリーな果物
Q.そもそも、バナナとはどんな果物ですか。
岸さん「バナナは、日本で最も食べられている果物の一つです。日本のバナナ消費量の99.9%が輸入に依存しており、ほとんどはフィリピンからのものです。
バナナは100グラムあたり93キロカロリーで、非常に多くの栄養素が含まれており、特に糖質、カリウム、マグネシウム、ビタミンB6、ビタミンC、トリプトファン、食物繊維、ポリフェノールなどが豊富です。他の果物と比較するとビタミンCはやや少なめですが、総合的に見ると、かなりバランスよく栄養が取れる果物といえるでしょう。
また、完熟度により多少変化はあるようですが、食後血糖値の上昇度を示す指数『GI値』が、熟したもので『51』と果物の中でも低い値で、食物繊維の効果もあり、血糖値も急上昇しにくいです」
Q.バナナを食べ過ぎると、健康への影響や弊害があるのは事実でしょうか。
岸さん「事実といえます。バナナの栄養価は高いですが、バナナばかり食べてしまうと栄養価が偏り、必要な栄養素が不足してしまいます。特にタンパク質や脂質は微量しか含まれないので、タンパク質・脂質・炭水化物の摂取比率を指す『PFCバランス』が崩れます。
また、バナナは比較的高カロリーな果物です。そのため、食べ過ぎればカロリーオーバーにつながります。バナナにはブドウ糖、果糖、ショ糖などさまざまな糖質が含まれますが、果糖は取り過ぎると中性脂肪が上昇する可能性があります。
また、カリウムが多いのはバナナの特徴で、むくみや高血圧予防に最適ですが、カリウムの多さから利尿作用で放熱されるため、体を冷やしやすいのも注意です。腎臓に疾患があるなど、カリウム制限が必要な人は摂取量にも注意が必要です。
果物は1日に200グラム摂取することが推奨されています(農林水産省「食事バランスガイド」より)。バナナの場合、適量は1~2本程度でしょう。しかし大事なのはバナナの量ではなく、食事全体のバランスです。バナナに含まれるさまざまな栄養素は、現代の日本人において不足している場合の方が多いので、その不足分を補う意味でも、食生活にバナナを適量取り入れることは効果的といえます」
Q.朝食やおやつにも重宝するバナナですが、食べ過ぎないようにするためにできる工夫はありますか。
岸さん「バナナ単体だけだと、その食べやすさから、食べすぎにつながってしまいます。食事をバナナに置き換えたり、主食を丸ごと置き換えたりするのではなく、ご飯やパンなどの主食を少し減らして、バナナをプラスするようにするとよいでしょう。例えば、バナナとヨーグルトを混ぜてデザートにしたり、輪切りのバナナをパンに並べてトーストしたりすると、バナナ単体での食べ過ぎを予防でき、食事の栄養価も満足度も上がるのでおすすめです。
また、冷凍してもおいしく食べられる上、食べるスピードを抑えることができ、食べ過ぎ防止にもなるでしょう」
オトナンサー編集部