家庭や飲食店での食事の後に「食中毒」が発生することがあります。食中毒は夏だけでなく冬にも発生するため、食材を十分に加熱したり、食事前にしっかり手を洗ったりするなど、日頃から食中毒予防の取り組みを徹底する必要があります。
食中毒になると、腹痛や下痢などの症状が出るといわれていますが、その際に市販の胃腸薬や下痢止め薬などを服用しても問題はないのでしょうか。薬剤師の真部眞澄さんに教えていただきました。
■下痢止め薬の服用でかえって症状が悪化
Q.そもそも、食中毒になった場合、どのような症状が出ることが多いのでしょうか。
真部さん「一般的な食中毒の主な症状は、嘔吐(おうと)や下痢、腹痛、発熱、倦怠(けんたい)感、脱水症状です。食中毒は食べ物や飲み物に含まれる有害な細菌、ウイルス、毒素などが原因で発症します。症状は原因物質や感染源によって異なります。
サルモネラ菌やカンピロバクター菌などによって引き起こされる食中毒は、『細菌性食中毒』に分類されています。腹痛や下痢、発熱が主な症状です。潜伏期間は8時間から数日程度とされています。
ノロウイルスなどのウイルスによって引き起こされる食中毒は、『ウイルス性食中毒』に分類されています。嘔吐や下痢、軽度の発熱が特徴です。潜伏期間は1~2日で、症状が数日続くことがありますよ。
黄色ブドウ球菌などによって引き起こされる食中毒は、『毒素型食中毒』に該当します。激しい嘔吐や吐き気、場合によっては神経症状がみられます。潜伏期間が非常に短く、数時間以内に症状が出ることが多いとされています」
Q.嘔吐や下痢など、食中毒とみられる症状が出たときに市販の胃腸薬や下痢止め薬などを服用しても問題はないのでしょうか。
真部さん「先述の『細菌性食中毒』『ウイルス性食中毒』『毒素型食中毒』の場合、市販の下痢止め薬の使用は控えた方が良いですね。下痢や嘔吐は、体内に侵入した病原菌やウイルスを排出しようとする体の防御反応です。下痢を止めてしまうことで、体内に侵入した病原菌やウイルス、毒素を体内にとどめてしまい、症状を悪化させたり、回復が遅れたりする可能性があります。水分と電解質を摂取して安静にするとともに、消化に良い食べ物を取り、速やかに受診するようにしましょう。
胃腸薬に関しては、特に使用しても問題はなく、症状を和らげることもあります。しかし、菌やウイルス、毒素が原因の下痢や嘔吐が疑われる場合は、医師や薬剤師に相談をして、自己判断での使用は控えた方が良いでしょう」
Q.下痢止め薬以外の市販薬を服用しても症状が改善しない場合、医療機関を受診した方がよいのでしょうか。
真部さん「軽い食あたりは1~2日程度で改善されることが一般的なので、1~2日程度服用を続けても改善しない場合は、医療機関を受診するのをお勧めします。
また、38度を超える高熱が続く場合や口渇感、尿量の減少、めまい、脱水症状などがある場合、持続的な腹痛や嘔吐、血便、激しい腹痛がみられる場合のように、症状が悪化した場合には早めに受診した方が良いでしょう。
持病や基礎疾患がある場合も早めに受診した方が良いです。糖尿病や腎疾患、免疫力が低下している状態(ステロイドを服用中の場合など)では、症状が軽度であっても重篤化しやすいからです」
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食中毒になった場合は、嘔吐や下痢、腹痛、発熱、倦怠感、脱水症状といった症状が出るということです。特に嘔吐や下痢は、食中毒の原因となる病原菌やウイルスを体内から排出する防御反応なので、市販薬で無理に止めるのは避けた方がよいといいます。
症状が出てから1~2日がたっても改善がみられない場合は、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
オトナンサー編集部